2020.11.27

特集

障害学生教育支援センターとは? 職員・学生ともに「楽しんでサポートする」 その活動の「やりがい」を聞いた!

障害学生教育支援センターの職員の皆さん。前列中央が今回取材を受けてくださった脇坂紗帆さん

京都産業大学では2019年度、全学生の0.59%の割合で障害をもつ学生が在籍しています。そのような学生が不自由なく安心して勉強できる環境をつくるため、学内に障害学生教育支援センターが設置されています。また、職員だけでなく、障害学生支援サポーター(以下、学生サポーター)として学生が支援に参加できる体制もあります。
今回は、障害学生教育支援センターの職員である脇坂紗帆(わきさか さほ)さんと、学生サポーターの山下智也(やました ともや)さん、伊神紗帆(いがみ さほ)さんにお話を伺いました。

——障害学生教育支援センターはどのような活動を行っているのですか?
【脇坂さん】その名の通り、障害のある学生へのサポートする活動を行なっています。障害には、聴覚や視覚など身体に障害をもつ「身体障害」と、うつ病などの「精神障害」、ADHDなどの「発達障害」があり、本学ではどちらに対しても支援を行っています。例えば、現在、本学には聴覚障害で支援を必要とする学生が3名いますが、この学生たちが不自由なく勉強できる環境をつくること、つまり『どんな障害があっても、みんなと同じスタートラインに立てるようにすること』が、私たちが活動を行う目的です。

——具体的に、どのようなサポートを行なっているのでしょうか?
【脇坂さん】先ほどの聴覚障害を例にすると、学生サポーターが障害のある学生と一緒に授業を受け、講義の内容をリアルタイムでパソコンにタイピングしていく、『パソコンテイク』という支援があります。学生サポーターの2人で連携を取り、専用のシステムを使用して、先生の話を文節で切りながら文字を入力しています。障害のある学生はパソコン画面に表示された文章を見て授業内容を把握します。

——リアルタイムで入力するとは、難しそうですね……。
【脇坂さん】そうですね。ある程度のタイピングスキルと学生サポーター同士の阿吽(あうん)の呼吸が必要になります。そのため、本格的にデビューするにはトレーニングを4~5回受けてもらうようにしています。
2人の連携が重要となるパソコンテイク。専用のウェブアプリケーションcaptiOnlineで入力していく
——他にはどのようなサポート方法がありますか?
【脇坂さん】はい。他には『ノートテイク』というサポート方法もあります。数式や図などパソコンでは入力や表現が難しい内容を手書きで伝える方法です。これはパソコンテイクと併用して使用することが多いため、サポートを受ける側の学生と相談してから決めています。

——なるほど。今まで聞いてきたサポート方法は対面授業が前提だったと思います。今年度のオンライン授業ではどのように対応しているのですか?
【脇坂さん】パソコンテイクでは新しいシステムcaptiOnlineを導入し、オンライン授業に対応しています。遠隔でも学生サポーター同士が連携し、講義内容を入力できるシステムです。
そして、オンライン授業が導入されたことで新たな対応も増えました。『字幕修正』というものです。オンデマンド形式の授業で使用するMicrosoft Streamでは自動翻訳機能が付いているのですが、誤変換が多いため、動画を見ながら正しい日本語に直す作業が必要になります。それを学生サポーターが行っています。
数式が出てくる授業では、パソコンテイクで対応ができないため、ノートテイクのサポートが必要となる
字幕修正の画面。動画とテキストを並べて、ひとつひとつ字幕をつけていく
——脇坂さんご自身について教えてください。なぜ脇坂さんは障害学生教育支援センターで働こうと思ったのですか。
【脇坂さん】以前は障害をもつ方と企業をマッチングさせる会社で働いていました。そこで直面したのは、就職活動が難しいという現実です。この課題を解決するには、就職する前の段階である大学の間に支援する必要があるのではないかと考えたのがきっかけです。
実際、障害をもつ大学生は、担任の先生がいる高校と違って孤立しやすい環境にあります。大学4年間に誰とも話さず卒業してしまう学生もいると聞きました。
このような状況の背景にあるのは、日本では障害をもつ学生が大学に進学するのが難しく、大学生全体の約1%しかいない状況があります。海外に目を向けると、アメリカの大学では障害をもつ学生が10%を超えています。国が違うので厳密な比較はできませんが、日本とアメリカに同比率の障害のある学生がいると仮定します。日本では学力があるのにも関わらず障害がある由に、大学に進学してもサポートを受けられないから、進学を諦めている可能性があります。この数字は、大学で障害をもつ学生がサポートを必要としている状態を示しているのかもしれません。

——脇坂さんには明確な問題意識があり、それを解決するために本学に来られたんですね。そのように考えている職員さんがおられると、障害をもつ学生にとって安心につながるのではないかと思います。

実際に活動している学生は「隣接分野が勉強できて、新しい世界に出会えるのが楽しい。」

 続いて、学生サポーターとして活動している学生に話を聞きました。
取材に協力してくれたのは、パソコンテイクを担当している伊神紗帆さん(コンピューター理工学部 インテリジェントシステム学科 4年次生)と、山下智也さん(経済学部 経済学科 4年次生)。2人ともタイピングが得意だったこともあり、POSTで学生サポーターの募集を見て活動を始めました。
2人に共通しているのは、障害をもつ学生のための活動が、自分のためにもなっているからがんばれるという点です。
学生サポーターとして活動している伊神紗帆さん
——活動で楽しいことはどんなことですか?
【伊神さん】私が所属しているコンピューター理工学部は、2018年に学部が再編され情報理工学部になりました。この活動を通じて、新しくなった学部の授業を聞くことができたのが面白かったです。同じような内容でも先生が違うと、考え方も違うので楽しいですね。
【山下さん】伊神さんの話、とても共感できます。経済学部の専門領域だけでなく、他の文系授業に入れることが楽しいですね。特に面白かったのは、宗教や哲学の授業。普段であれば自ら選ばないような授業ですが、活動で授業を聞くことから興味を持つようになりました。その後、共通教育科目でもこのような分野を履修するようになり、世界が広がった気がします。

——自分の専門領域以外の話を聞くのは面白そうですね!でも、難しくないですか?
【山下さん】そうですね。専門用語が多いと、漢字が読めなくてすぐに変換できないことがあります。事前に配られているプリントなどを読んで、準備するのが大事ですね。
【伊神さん】私も専門領域と同じ理系の授業を担当することが多いのですが、分野が違うとそもそもの用語がわからん!ってなりますね。例えば、私は理系の中でもWebページを作成するコードなどに興味があり勉強しているのですが、機械学習や脳科学の勉強はしたことがないので、難しいと感じました。

——障害をもつ学生との深い関わりを経験して、どのように感じましたか?
【山下さん】この活動を始めるまで、障害をもつ方とコミュニケーションを取ることはありませんでしたが、活動を通じて『伝えることの難しさ』を感じました。街中で聴覚障害をもつ方が困っていたら、どのような配慮が良いのかと考えるようになりました。
【伊神さん】私もこの活動を通じて、耳が聞こえないことは本当に大変だと思いました。私の学部は女子学生が1割未満と少なかったので、大学に通い始めた際は同性の友人が少なくて一人で授業を受けることも多かったんです。その時は周りの会話から、授業の連絡事項などのヒントを得ていました。それを考えると、聞こえないのは本当に大変だと思います。そうした経験から、内容を先読みしてパソコンテイクをするようになりましたね。

——なるほど。この活動を通じて得られる気づきも多いんですね。では、この活動はどのような学生に向いていると思いますか?
【山下さん】そうですね。黙々と作業できる人は割と好きになれるかもしれません。90分間の授業中はもちろん集中して入力し続けなければいけません。そういう作業が苦ではない人ですかね。
【伊神さん】加えて、人の話を聞き流すのではなく、きちんと意味も考えて聞ける人ですね。この活動をしていると、本当に人の話を聞けるようになります。人の話を聞くと、新しい世界を知ることに繋がるので自分にとってプラスになると思います。

——おふたりの話を聞いていると、新しい世界を知ることを楽しむ好奇心旺盛なところが共通していると感じました。そういう学生にも向いているかもしれませんね!本日はありがとうございました!
書いてすぐ消せる、電子メモパッドは筆談に便利だ
今回は、障害学生教育支援センターと障害学生支援サポーターについて紹介しました。一見、他者に役立つことだけが目的の活動だなと思うかもしれません。しかし、活動をしている職員さんや学生たちは障害をもつ学生のためだけでなく、自分のためにも活動をしていることがわかりました。自分の興味や知見を広げることのできる活動を楽しんでいる姿が印象的でした。
学生サポーターは各学期の初め、4~5月・9~10月頃にPOSTやポスターなどで募集しています。「今年度は、オンライン授業が導入されたなどの影響で募集ができなかったので、ぜひ来年の春に興味があれば、障害学生教育支援センターに来室していただきたい」とのこと。興味をもった学生さんは、ぜひ参加してみてください。

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