「学生にとって本は宝」蔵書数115万冊を誇る京都産業大学図書館、 行かなくても利用できる2つの方法とは?

京都産業大学図書館 課長の天笠洋一さん(写真右)と課長補佐の今井美裕子さん(写真左)。質問に対して丁寧に答えてくださいました。

京都産業大学図書館には約115万冊の本が収蔵されています。実は図書館まで足を運ばなくても、勉学や卒論、就活などで必要な本を読めたり、借りることができることは意外に知られていません。また、「行かなくても図書館を使える」という情報だけ知っていても、実行した人はそんなに多くないようです。
大学への入構制限にともない注目を集める、自宅から図書館を活用できる「電子書籍サービス」と「郵送サービス」。これら2つの利用方法をはじめ、図書館の魅力についてレポートしました。
※この取材は8月上旬にリモートで行いました。

自宅から利用できる図書館 では「電子書籍サービス」と「郵送サービス」について紹介しています。

自宅からでも利用できる便利な電子書籍サービス

——自宅から図書館を活用できる方法に電子書籍サービスがあるとお聞きしました。自宅から利用できるのはとても便利ですね。このサービスはコロナ対策によるキャンパス内への入構制限を受けて、始まったのですか?

【天笠さん】いいえ、違います。始めたのは5年前、2015年に教員の要望で開始しました。そのプラットフォーム(基盤)を5月から学生さん向けに拡充しました。去年までは1200~1300タイトル程度でしたが、今年になり日本語の電子書籍を1700タイトル追加しました。

——合計で約3000タイトルですか。倍以上に増えるとは、かなりの充実ですね。

【天笠さん】そうなんです。だから、学生のみなさんにはぜひ利用してほしいです。利用できるプラットフォームは「Maruzen eBook Library」と「EBSCO eBooks」の2つがあります。

——その2つはどう使い分けたらよいのでしょうか?

【天笠さん】「Maruzen eBook Library」は学術機関で採用されている電子書籍のプラットフォームです。自宅からはログイン画面でPOSTと同じIDとパスワードを入力すれば使えます。人文科学、社会科学、自然科学…さまざまな学問分野別の電子書籍を閲覧することができます。「EBSCO eBooks」はタイトル数は少ないですが、どちらも蔵書検索KSU-Catで検索できます。
なお、「EBSCO eBooks」を学外から利用するには、「SSL-VPN」という図書館のデータベース(一種の検索ツール)に接続できるサービスの利用が必要です。これを使うと、「EBSCO eBooks」の電子書籍だけでなくその他のデータベースに収録の新聞記事や百科事典の検索も可能ですが、専用アプリをダウンロードしてもらう必要があります。

——「Maruzen eBook Library」のログインはPOSTへログインする時と同じパスワードなのですね!「SSL-VPN」もぜひ試してみたいと思います。

※取材後に「SSL-VPN」の設定をやってみましたが、かなり複雑でした。先に以下URLから利用方法を確認することをおすすめします。
大学ホームページの図書館webサイト 自宅から利用できる図書館 の「初めて利用される方へ」

電子書籍サービスで人気のジャンルは「語学」と「就活」

——どのようなジャンルが多く読まれていますか?

【天笠さん】語学系や就活に関する本の利用が多いですね。特に語学は7月に外国語学部で多読のテキストとして推奨されたこともあり、数としては伸びています。

——なるほど。確かに、電子書籍は、その場で簡単に閲覧できて、必要な部分をダウンロードしやすいですし、別の本もすぐに閲覧できるので、多読に向いていますね。

【天笠さん】6月は約4000タイトル、7月は約6000タイトルが読まれました。上位20位のうちの半数以上に多読のテキストが入っています。では、推奨されていた多読のテキストを除く日本語タイトルのランキングはどうなっているのか、上位10位をご紹介しましょう。

1 中国ビジネス通訳裏話 だから、漢語はおもしろい! 東方書店
2 就職四季報総合版 2021年版 東洋経済新報社
3 環境ガバナンスの政治学: 脱原発とエネルギー転換 法律文化社
4 会社四季報業界地図 2020年版 東洋経済新報社
5 現代行政法入門 第4版 有斐閣
6 でるとこだけのSPI 2021年度版 マイナビ出版
7 就職四季報優良・中堅企業版 2021 東洋経済新報社
8 就活BOOK2021 内定獲得のメソッド SPI 解法の極意 マイナビ出版
9 刑事訴訟法 第2版 有斐閣
10 入門者のLinux 素朴な疑問を解消しながら学ぶ 講談社

——確かに、就活向けの書籍が目立ちます。あと、法律関係の本もありますね。素朴な疑問をお聞きしたいのですが、電子書籍って2人が同時に借りることってできるのですか?

【天笠さん】できません。ただ「閲覧」のときに必要な部分だけダウンロード(ページ数に上限あり)して「閲覧終了」を押せば、短時間で次の人が読めるようになります。

——なるほど、それなら次の人を長時間待たせなくていいですね。また、返却が楽なのも、電子書籍の利点ですね。

必要な本が自宅に届く。図書館資料貸出郵送サービスが便利!

図書館資料貸出郵送サービスの資料をピックアップしている職員さんたち。

——自宅から図書館を活用できる方法に、もうひとつ、「図書館資料貸出郵送サービス」があるとお聞きしました。

【今井さん】はい、図書館資料貸出郵送サービスはコロナ対策における臨時休館により始まりました。図書館の本を検索する KSU-Cat の「マイライブラリー」から申し込むことができます。
一度に借りることができる上限は1~3年次生は10冊、4年次生は20冊となっており、図書館から自宅までの送料は大学が負担します(返送料は自己負担)。

——このサービスは、学校への入構ができるようになっても続ける予定ですか?

【今井さん】コロナの状況次第でどうなるかはわかりませんが、秋学期も対象者を限定※ して続けます。
※図書館資料貸出郵送サービスの対象者:
(1)秋学期の受講科目がすべてオンライン授業で行われるなど、大学へ来る必要のない方
(2)通学が困難である等の理由により、対面で行う授業に出席できない方

——依頼が入ったとき、本の梱包などは誰がされているのですか?

【今井さん】図書館の職員でやっています。

——すごく大変じゃないですか? 私は本屋でアルバイトをしているので梱包の大変さがよくわかります。

【今井さん】確かに、これまでの通常業務とは違いますね。でも、こういった未曾有の状況下で図書館を利用してもらえる意義を理解しながら、職員は取り組んでいます。実際の手順としては、依頼が入ると、館内から資料をピックアップしていきます。その後、ピックアップしたものと送り先に間違いがないか、ダブルチェックした上で、貸出処理をします。

図書館の職員さんたちが、確認をしながら梱包をしていく。

——どれくらいの申し込み数がありましたか?

【今井さん】6月から8月末まで学生さん約480人の方から申し込みがありました。総冊数としては、1,680冊ほど借りられていますね。こちらも英語の多読の本が多いです。

——それはすごい数字ですね!

【今井さん】いえいえ、私たちとしては、昨年の開館している際の貸し出し冊数から計算して、1日100人ぐらいに発送する準備をしていました。私たちの体制は整っていましたから、もっと多くの人に申し込んでほしかったですね。

いずれ足を運びたい!場所としての図書館の魅力

——私たち学生広報スタッフがツイッターを利用してアンケートを取ったところ、「学内で好きな場所」の上位に図書館が挙げられました。

【今井さん】それはうれしいですね。これまで図書館の施設としては、ナレッジコモンズやグループ学習室を、ゼミ仲間や友達同士で利用されていることが多い印象です。ナレッジコモンズは図書館ホールでもあるので課題活動の発表会としても使っていただけるような場所です。
9月3日から、図書館は開館しました。コロナ対策のため、まだナレッジコモンズ等の施設はご利用いただけませんが、3密を避けて状況に応じて、施設利用も順次再開する予定です。利用できるようになった時にはぜひ活用してほしいです。

【天笠さん】図書館にはDVDも1万タイトルあります。図書館内での視聴が可能になったら、ぜひDVDも利用してほしいです。

——リモートで利用できるのはもちろんありがたいですが、やっぱり私たちは図書館という空間が好きなのだと思います。そういえば、図書館の建物には意味があるとお聞きしました。

【天笠さん】図書館は、校倉(あぜくら)造りを模したデザインを取り入れています。校倉造りは、奈良の正倉院に代表されるように、宝物や経典をおさめる倉庫に用いられたことで知られます。「学生にとって本は宝」という意味を込めて、校倉造りにしたそうですよ。

——「学生にとって本は宝」とは、いい言葉ですね。他にも足を運ばないとわからないものはありますか?

【天笠さん】入り口のところにある石のオブジェは、「考える」というタイトルの芸術作品です。

「考える」とは、図書館の入り口にあるのにふさわしいタイトルだ。

【今井さん】あと、石といえば、ギリシア文字が刻まれた石が、図書館の周辺にあるのをご存じですか?
開館当初は、図書館を取り囲むように、9個の石が“サギタリウス”のかたちに設置されていたそうです。「中央図書館周辺を歩いていると所々に庭石が置かれている」「これらの石は本学の学章である星座サギタリウスをあらわしている」「石に刻まれている文字は、それぞれの星につけられているギリシア文字」「石延花苑のほぼ中央にラムダ星※ に相当する石があり、他の石は図書館を取り囲むような配置」と、1988年に発行された図書館報『Lib.』(Vol.14 No.4)に記録されています。
※ラムダ星とは、ギリシア文字の「λ」(ラムダ)が振られた、星座サギタリウスの星のこと。

ギリシア文字の「ε」(イプシロン)が刻まれた石は見つかっている(写真上)。 写真下左は京都産業大学の学章、写真下右は星座サギタリウスの形(『Lib.』Vol.14 No.4より)。

【今井さん】しかし、その後図書館の拡張工事が行われて、9個の石は移設されてしまいました。今はキャンパス内各所に配置されています。ぜひ探してみてください。ヒントは大きな石です。

——そんな石があるとは知りませんでした。今度行ったら、もっと注目してみようと思います。

自分の興味の外に目を向けるきっかけとして

——最後に、学生へのメッセージをお願いします。

【天笠さん】図書館は安全を確保しながら開館します。大学が始まったらぜひ図書館に足を運んで、本を手に取ってもらいたいですね。

【今井さん】大学の4年間は、成長の時間です。図書館で偶然手にとった本が新たな世界への出合いにつながる可能性もあるので、ぜひ本を通じて新たな「なにか」と出合ってください。
私たちは展示や書評大賞、対話イベントといった企画を通じて「自分の興味の外に目を向ける」きっかけづくりを目指してきました。図書館に足を運んで実際に棚を見ているとき、その隣に置いてある「思いもよらない本」を借りた経験はありませんか? 検索して一冊の本を指定する「図書館資料貸出・郵送サービス」だと、そういった出合いがなかなか作れないのが残念です。でも、図書館が開館すれば、また本との「偶然の出合い」があるように、いろんな企画を立てて行きます。

——今回の取材で、職員のみなさんの努力と熱い思いが、しっかり伝わってきました。

【今井さん】図書館が休館している中で、「どういったサービスがあるのか?」「どこからアクセスしたらかわからない」といった声もあるかと思います。図書館のwebサイト に「自宅から利用できる図書館」というバナーを設置していますので、ぜひ参考にしてください。

——本日はありがとうございました!

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