【法学部】現場の声から交通事故の現状と対策を知る

2023.11.27

法学部の専門教育科目「社会安全政策Ⅱ(各論)」(担当:田村 正博教授)は、個別の犯罪類型ごとに現状と対策を学ぶ授業であり、京都府警察本部で対策にあたっている方をゲストスピーカーとして招き講義を受け、現実に即した問題意識を持つことを目的としています。今回はゲストスピーカーとして、京都府警察本部 交通企画課交通戦略室長兼交通安全教育センター所長の関本 将司警視を招き、交通事故の現状や現場で実施している対策まで幅広くお話していただきました。

(学生ライター 文化学部4年次 松田 こころ)

ゲストスピーカーの京都府警察本部 関本 将司警視

はじめに、関本氏が交通警察を目指すようになったきっかけを教えてくださいました。関本氏が警察官になってまだ間もない時に、管轄内で中学生が車にはねられる交通事故が発生しました。怪我をした中学生の病院へ付き添ったものの何もすることができず、自身の無力さを痛感したそうです。この出来事がきっかけとなり、交通警察の職種を志すようになったと話されました。

次に、交通事故の発生状況について説明がありました。発生している交通事故の形態としては出会い頭の事故が最も多く、通勤・通学の時間帯に発生件数が多いこと、また、20~24歳が当事者となった事故が多く発生していることも紹介されました。関本氏はこれらの原因として、運転経験が未熟な人が多いことを挙げていらっしゃいました。関本氏は「20歳以上で車を運転する人に対して、前日にお酒を飲みすぎて二日酔いの場合は、体内にお酒が残っているため、飲酒運転となる可能性があります。安易な考えで運転しないように注意してほしいです」と、事故を防ぐために心がけてほしいことについて語られました。

続いて、交通事故の対策について学びました。現在、京都府警察本部では、交通事故対策のためにGIS(Geographic Information System:地理的情報システム)を使用しています。GISとは、交通事故が多発している地域を可視化するシステムのことで、これを活用して交通事故の発生場所と取り締まりの場所のずれをなくしているのだそうです。

クイズに取り組む受講生ら

授業の途中で、画面に表示されているキャラクターの数を数えるクイズが出題されました。その後に「キャラクターの背景には何が映っていたか?」という質問が投げかけられ、学生たちは積極的にクイズに参加していましたが、回答に自信が持てない様子でした。関本氏はこのクイズをとおして、交通安全の盲点として「人は見ようとしているものしか見えておらず、運転中の『ながらスマホ』などは危険」ということを伝えたかったと、クイズの意図を話されました。

関本氏の講義について振り返りを行う受講生

「ひまわりの絆プロジェクト」について紹介がありました。同プロジェクトは、京都府内において交通事故で亡くなった男の子が生前育てていたひまわりの種を引き継ぎ、その種を育てて花を開花させることで、命の大切さや交通安全のシンボルとして交通事故防止を呼び掛けています。現在では、京都府内だけでなく、各地の警察署をとおして全国各地に輪が広がり、事故防止を推進する活動となっているそうです。関本氏は「交通事故はいつまでも遺族の人の心に残ります。個人が安全についてしっかりと考えることが大切です」と、交通安全について考える重要性を学生に語られました。


交通事故はどこか他人事のように感じていましたが、いつ誰が起こしてもおかしくないものであると改めて気付きました。「短い距離だから、慣れた道だから…」というような油断が事故へとつながってしまうことも、関本氏のお話を聞き学ぶことができました。車であっても自転車であっても、運転をする時は気を抜かず、視野を広く持って運転するように心がけたいです。