【国際関係学部】「国際キャリア開発リサーチ」事前授業でパラオ現地と繋いだセッションを行いました!

2023.07.31

7月5日(水) 「国際キャリア開発リサーチ(CDR)」で、8月からパラオで行われるプログラム(三田貴教授担当)に先立ちパラオの受け入れ支援団体(NGO)による事前学習が開催されました。
国際キャリア開発リサーチ(CDR)とは、海外で民間企業や公的機関と連携し、約2~3週間のインターンシップや課題解決型研究に取り組む科目です。

(学生ライター 国際関係学部4年次 渡辺 美琴)

パラオを訪問する学生は、パラオの中で3つの受け入れ機関(大統領府、政府観光局、コロール州リサイクルセンター)に分かれてインターンシップを行います。現地活動を1カ月後に控えた学生たちは、パラオの状況や受け入れ機関の活動内容を事前に調査し、現地での活動計画案を、パラオで学生の受け入れを担当するPalau Resource Institute(現地NGO、以下PRI)に報告しました。
発表するリサイクルセンターグループの学生

はじめに、コロール州リサイクルセンターで活動する学生たちは、パラオが取り組む環境に配慮した観光について報告しました。背景には、パラオの住民たちのライフスタイルの変化や、観光業が盛んになったことなどによりプラスチックゴミの排出が増加した問題、日焼け止めの使用などによるサンゴを含む環境への影響についてパラオが取り組んでいることを調べた結果が報告されました。
学生たちは、環境と文化の関わり合いがとても深いパラオで、現地の文化やゴミ問題の現状、自然保護活動を学ぶことや、廃棄物管理所が実施するリサイクルの仕組みを学ぶことを通じて、

  • ユニークな文化と自然豊かなパラオを後世に残すためにはどうすればよいか?
  • 気候変動などグローバル社会の中でパラオはどのような役割を果たすのか?

などの課題解決に取り組む意欲を表明しました。

パラオ共和国首都庁舎

次に大統領府で活動するグループから、パラオの外交面や、世界の中のパラオ政治について報告がされました。
日本とパラオの関係が始まったのは1820年頃からで、その後、第一次世界大戦の時期から日本はパラオを植民地として統治もしました。現在では、政府開発援助(ODA)などを通してパラオと日本には協力関係があることも知られています。
さらに、パラオはアメリカ合衆国の植民地であった歴史を持ち、現在はアメリカの自由連合国として経済や安全保障の点で深い関わりを持っているため、アメリカとの関係に関する背景や知識を理解することはパラオを知る上でとても重要なポイントと言えます。

また、国際社会との関係は、例えば食品の輸出入などで貿易上の関わりも強いです。パラオからは日本や他のアジア地域へ海産物が輸出され、パラオはアメリカや中国、日本などから様々な製品を輸入しています。
学生たちは滞在中に、日本とパラオの2国間関係などを調査し、特に青年層からの視点を持ちながら理解を進めるため、パラオ住民にインタビューを実施し、

  • 日本とパラオの関係についてどう感じているのか?
  • 日本の魅力はどこか?
  • どのような点で今後協働の可能性があるか?

などについて、パラオ国民の視点を学ぶ活動を行いたいとの表明がありました。また、両国共通の課題として「食糧自給の向上」を挙げており、パラオの現状を理解し比較することで問題の分析を進めたいとしています。

将来の目標についてPRIからの質問に回答する学生

最後は、パラオ政府観光局で活動をするグループからの報告でした。このグループは、地元でのイベントや伝統的な儀礼の運営や、持続可能な観光産業の実現に向けた取り組みに関して調べたことを報告しました。
新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延に伴って観光客が減少し、パラオ経済は停滞してしまいました。観光業を振興させたい一方で、パラオに多くの観光客が訪れることによる環境破壊や環境汚染、現地住民の生活に及ぼす影響も潜在的な課題となっています。これらの課題を考慮し、経済発展と環境・住民の暮らしの保護のバランスがとれた観光業の発展の在り方を探求したいと考えています。
パラオ訪問時には、5年間の環境政策のフレームワークを模擬的に検討すること、ソーシャルメディアを活用したサステナブルなパラオ観光を発信する可能性を探ること、現地のナイトマーケットの運営に挑戦したいという提案が述べられました。

PRIからは、各グループの発表の度に、コメントとフィードバックが寄せられ、学生たちの報告と意欲に感激されている様子でした。途中、学生たちの将来の目標を質問する場面があり、学生それぞれから、今回のインターンシップの経験を活かした活動を将来的に実施したいと考えていることが語られました。また、学生が事前に調査した情報が、パラオからみた現実と異なる点に関しては、最新情報を提供してくださり、大変有意義な事前学習の時間となりました。

インターンシップ先の一つとなる大統領府ならびに受け入れ支援団体(PRI)関係者と三田教授(中央)

今回のセッションでは、受講学生が現地でどのようなことを学びたいのかパラオの受け入れ協力団体に伝えることができ、学生たちがパラオの何に関心を持っているのか相互に理解することができる機会となりました。

筆者も、コロナ禍にこの科目のマレーシア・オンライン実習を受講し、現地の学生との交流や、現地の先生による文化や多文化共生のレクチャーを受け、その難しさや楽しさを感じながら世界へ視野を広げるよい経験を得ました。今回パラオに渡航する学生たちは、このような主体的な事前学習を進めてきたことからも、きっと素晴らしい成果を得られると確信できる学習会でした。