【経済学部】イケダゼミ 亀岡でフィールドワークを実施~京都方式の養蚕を学ぶ~
2022.09.30
2022年8月21日(日)にゼミのフィールドワーク調査で、350年以上の歴史を持つ「織道楽・塩野屋」実施の「シルク・ラボ・セミナー」に再度参加し、絹織物業からの養蚕に対する視点、未来について学びました。
5月に絹織物業から視た養蚕の歴史をお聞きし、実際の養蚕の様子を体験させていただきました。今回は「織道楽・塩野屋」の養蚕業に対する考え・意識を掘り下げてお聞きし、養蚕業の未来についても伺いました。「織道楽・塩野屋」では商品に「人間と自然をバランスの取れた生き方に導く生活費需品」としての役割があると考え、無化学・無肥料を基本とした自然栽培を「京都方式自然栽培」と呼び推進されています。現状、養蚕業で使用する桑の木の栽培にはデリケートな蚕のために農薬は使用しません。一方で今日の通常の飼育では化学肥料の使用が一般化し、かつての自然由来の栽培方法とは程遠い効率重視なものになり、養蚕も共同稚蚕飼育上で1齢から2齢もしくは3齢までの10日間程、人工飼料によって無菌室で大切に育てられます。ある程度成長させてから桑の葉を与えるという自然由来とは程遠い形で生産されています。「織道楽・塩野屋」ではこの方法に異を唱え、前記の「京都方式自然栽培」で自然本来のモノをつくることを目標にされています。また、お話を聞く中で「織道楽・塩野屋」で大事にされている考えの中にトレーサビリティがあります。これは英語の「Trace(追跡)」と「Ability(能力)」の2つを組み合わせた言葉で、原材料や部品の調達・加工・組立・流通・販売までの工程について製造者・仕入先・販売元を記録して履歴を残すことにより、生産者は問題が起こった時にその発生源を突き止めることが容易になり、また消費者は製品により一層の安心感を持つことができるというものです。
店主の服部芳和氏は、「純国産の絹を守っていくには有名ブランドがそうしてきたように、作り手と使い手が一緒になっての顔の見えるモノ創りをすることが大事である」と国産繭の品質の良さを語りながら、そうすることでしか日本の養蚕は守れないとおっしゃいました。養蚕の現状や絹織物業の視点をお聞きする中で、養蚕業の未来、または現状の行政の支援やこれからやりたいことなども教えていただきました。服部氏によると、やはり日本で蚕を生産しても利益が出づらい現状があるとのことです。これからのトレンドは、養蚕業で出た糞や桑の葉の食べ残し、サナギなどの廃棄物に付加価値を与え製品化することや副産物ゼロエミッションが主流となるとのことでした。養蚕はただ繭を取るだけでなく、様々な製品を生み出せる可能性に満ちた産業であると教えていただきました。また、現在行政からの支援は受けておらず、京都養蚕復活研究会を発足し、自分たちの力で京都方式自然栽培による養蚕を広められるそうです。そしてこれからやりたいこととして、現在、家庭養蚕用の養蚕キットを販売しているが、さらに養蚕業に触れる入り口として養蚕業の体験場所を作りたいとおっしゃいました。
今回、貴重なお話をお聞きする中で改めて、日本で伝統産業である養蚕業を継続して行うのは労働が対価に見合わないために厳しいと感じました。しかし、純国産の繭は品質が良く需要があるので、伝統は文化として残しつつ、トレーサビリティのように新たな取り組みを行い、少しずつでも養蚕に価値を与えることが今後の課題になると実感しました。
- 5月の活動内容記事
【経済学部】イケダゼミ 伝統の養蚕を学びました
(文責:経済学部 3年次 山崎 晃笙)

