
皆さんは「むすびわざ館」をご存じでしょうか?本学壬生校地内(附属中学・高等学校横)にあるむすびわざ館には、大学の所蔵品の展示のほか、企画展を開催する「京都産業大学ギャラリー」があります。今年第29回を迎える企画展「などころとめいしょ-和歌から洛外図まで-」の担当をされている、学芸員の三木 沙友理(みき・さゆり)さんにお話を伺いました。
京都産業大学ギャラリーについて教えてください!
京都産業大学ギャラリーは2012年5月にオープンしました。「産業」を「むすびわざ」と捉え、「新しい業(わざ)をむすび、新しい価値を結び生み出す」精神のもと、壬生校地に京都産業大学ギャラリーは開設されました。当ギャラリーでは、京都下嵯峨にて薪炭商を営んでいた小山家から寄贈された商売道具や古文書などに加えて、京都産業大学の開学期に、他大学に先駆けて導入した大型コンピュータであり、本学のコンピュータ教育を象徴する「TOSBAC-3400」といった資料も保存し、公開しています。
『などころとめいしょ-和歌から洛外図まで』を企画した理由は何ですか?
日本には、昔から多くの人に親しまれてきた美しい風景や、歴史を感じることのできる場所がたくさんあります。そうした場所は「名所(などころ)」や「名所(めいしょ)」と呼ばれ、日本の文化の中に深く息づいています。その一つに、「歌枕」※として和歌に詠まれた場所があります。
本学のキャンパスがある神山も、そうした名所の一つです。賀茂社にゆかりのあるこの地は、歌人・藤原俊成が「神山にひき残さるる葵草 時にあはでも過ごしつるかな」と歌に詠むように、古くから歌の中にも登場してきました。今回の企画展は、そんな神山の魅力に改めて目を向けたことが、企画のきっかけになっています。また、来年度には文化学部のリニューアルも予定されています。この機会に、企画展を通して京都の文化の魅力にふれていただけたらうれしいです。
※和歌に詠まれる地名のこと。元々は地名だけでなく和歌の表現方法やそれをまとめた本を指していた。
どのような資料を展示していますか?
本展では、本学図書館の所蔵資料を中心に、宇治市歴史資料館様、京都府立京都学・歴彩館様からお借りした、和歌や絵画、名所案内記、洛外図などを通じて、さまざまな角度から京都の名所を紹介する資料を展示しています。
たとえば、最古の歌集『万葉集』の歌を抜粋した『万葉集撰要佳詞』や、『新古今和歌集』といった和歌に関するもののほか、全国各地を旅したことで知られる「漂泊の歌人」西行の生涯を虚実織り交ぜて描いた『西行法師絵物語』なども含まれます。また、江戸時代に庶民のあいだで旅の文化が広がるきっかけとなった『京童』や『都名所図会』といった名所案内記、さらに浮世絵など、前期・後期併せて、合計18点をご覧いただけます。
『西行法師絵物語(巻三第六段)』
本学図書館所蔵『西行法師絵物語』のデジタル画像
(今回展示しているのは巻一および巻三です。)
特に注目すべき資料は何ですか?
特にご注目いただきたいのが『洛外図屏風』です。江戸時代後期に制作されたこの屏風は、8枚の画面がつながった屏風が左右一対で構成されている「八曲一双」と呼ばれる形式です。
『洛外図屏風』には、洛外にある寺社や名所が数多く描かれており、それぞれの寺社や村落などを示す付箋が添えられています。制作当時の風景と現在との違いを見つけたりしながら、お楽しみいただければと思います。

今後のイベント情報を教えてください。
【講演会】言葉からひもとく歴史と文化
日時:6月28日(土) 13:30~15:00(開場13:00)
場所:むすびわざ館ホール
定員:200名(事前申込制・先着順)
講師:玉村 禎郎 教授(京都産業大学外国語学部)
今回取材した企画展「などころとめいしょ-和歌から洛外図まで-」は、2025年7月5日(土)まで開催されています。今後のイベント情報にもご注目いただき、ぜひ足を運んでみてください!
開館時間:月・火・木~土曜日 10:00~16:30(入館受付は16:00まで)水曜日 13:00~16:30(入館受付は16:00まで)
展示期間:2025年7月5日(土)まで
場 所:京都産業大学ギャラリー(京都市下京区中堂寺命婦町1-10 京都産業大学壬 生校地むすびわざ館2F)
数多くの名所が存在する京都に位置し、私たちが学ぶ京都産業大学。本学ギャラリーの企画展を通じて、京都の名所とのつながりを感じる、和歌や絵画など貴重な資料に触れることができました。今回の企画展をきっかけに、壬生校地・むすびわざ館にも注目です。今後のイベント情報を含め、ぜひ足を運んでいただきたいです。