【文化学部】「京の町家で文化学」開催!ファシズムとはなにか?高校生とともに考える

2023.07.10

7月1日(土)14時より、文化学部主催「京の町家で文化学」を、「町家学びテラス・西陣」で開催しました。本講座は、高校生を対象とし、京町家の落ち着いた空間で大学における学びへの扉を開くことを目的に企画されたものです。
町家での講座の様子
今回は、国際文化学科倉科 岳志 教授が、「戦争とファシズムを考えよう—1923年から31年におけるK・E・ズッケルトの思想を中心に—」をテーマとする講義を行いました。まず高等学校教科書におけるファシズムに関する記述内容を確認したうえで、第一次世界大戦からローマ進軍までの歴史について概説し、「中間層」や「第三の道」など高等学校の歴史教育で除かれた要素について説明しました。とくに、イタリアの作家、ジャーナリストであるK・E・ズッケルト(1898-1957)の前半生にスポットを当て、その著作を読み解き、かれがファシズムを積極的に支持したという問題性をはらみながらも、従軍兵士たちの生々しい声を代弁することで、近代戦争のパラドックスを描写し、北ヨーロッパ中心の文明史や北イタリアの南イタリアへの偏見に対する異議申し立てをおこなったことについて正当に評価すべきと説きました。また、ズッケルトが自由民主主義体制を支える近代原理を批判し、「国民的サンディカリズム」という代替案を提示していることにも、注目すべきとの付言がありました。
倉科教授
「100年前までタイムスリップし、ズッケルトと同じ立場に置かれたら、ファシズムを支持するか」との問いに、 参加者からは「基本的には賛同できない」が、「それは不自由のない生活環境に育ち、戦争もあまりない」現代 だからこそであり、「大戦や争いの多い世界で幼い頃より過ごしていれば、もしかしたらファシズムを支持してしまうかもしれない」との応答がありました。さらには「難しかったがとても興味深い」との印象のほか、「これまで無条件に悪しき思想と教えられてきたファシズムの見方が変わった」といった感想が寄せられました。
次回は、2023年12月9日(土)14時から、京都文化学科 笹部 昌利准教授 による、「幕末日本と新選組について考えよう」をテーマとした楽しい講座を、高校生に向けておこなう予定です。ぜひご参加ください!