【国際関係学部】中東ビジネスの可能性を学ぶ~JETRO駐在経験者による講演~

2022.12.21

12月13日(火)に国際関係学部の専門教育科目である「国際ビジネス論Ⅱ」(担当:植原行洋教授)において講演会が開催されました。独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)の庄秀輝京都貿易情報センター所長(前サウジアラビア王国リヤド事務所長)を外部講師としてお招きし、「中東ビジネス」について現在の世界情勢をふまえてお話しいただきました。

(学生ライター国際関係学部3年次 越智 慎之助)

庄秀輝氏の講演の様子

はじめに、「国際ビジネス論Ⅱ」の担当教員である植原行洋教授より、庄所長のご紹介がありました。庄所長は、マレーシアや米国シカゴ駐在後、サウジアラビアのリヤド事務所にて8年間の駐在を経験されました。現在は、京都貿易情報センターの所長としてご活躍されています。

講演では、①中東・北アフリカ(MENA)地域の概要、②サウジアラビアの特徴、③日本企業の中東でのビジネス、④中東で盛り上がる起業・イノベーション、の4つをテーマに詳しくお話いただきました。

中東・北アフリカ(MENA)地域については、地域独自の宗教対立や大国に翻弄される地域情勢についての説明がありました。人口(特に若年層)増加の観点から長期間にわたって強い消費が見込まれています。一方で、欧州や米国、中露といった大国の覇権争いが同地域内で展開されており、中東各国は独自の外交路線を掲げています。また、FIFAワールドカップの開催地であるカタールやヒト・カネ・モノ・知識のハブを目指すアラブ首長国連邦(UAE)についての解説もありました。

次に、サウジアラビアについての説明がありました。G20のメンバーであるサウジアラビアは、湾岸協力会議(GCC:Gulf Cooperation Council)での中心的役割を果たしており、石油や天然ガスを中心とする天然資源に強みを持っています。しかし、近年の全世界的な脱炭素化の流れから、天然資源に依存しない経済構造の構築を目指しており、経済・政治・社会の改革を目指した「VISION2030」をムハンマド・ビン・サルマン皇太子のイニシアティブで進めています。

最後に、中東地域に進出している日本企業の実態についての説明がありました。例えば、食品関連や医療機器関連の産業に加えて、日本の高い技術を活用したエネルギー分野・グリーンテック分野も中東地域でのビジネスを行っています。天然資源からの脱却を目指すサウジアラビアなどでは、水素やアンモニアといった新領域にもビジネスチャンスがあり、また、中東各国では「VISION」と呼ばれる長期的な国家改革を推進しており、知識社会、デジタル経済、Eコマース、スマートシティーも注目されています。スタートアップ分野では食品・飲料、フィンテック、Eコマースが多くの投資額を得て成長を牽引しています。

講演会の終盤には、質疑応答がありました。
「日本の原子力産業は中東地域で勝機はあるのか?」「イスラエルの選挙やユダヤ人・イスラムの対立の中で、日本企業のビジネスに影響はあるか?」などといった質問が出ました。サウジアラビアで日本企業のビジネスを長年支援してきた所長だからこそ頂けるような貴重な回答に学生は熱心にメモを取っていました。

講演会を通じて、中東地域の市場としての可能性を感じることができました。政治体制や宗教観が異なり日本とは差異がある一方で、脱炭素やデジタル経済が進行する現代社会において、中東地域は日本企業にとっても有力な市場になるのではないかと考えます。今後も中東地域に注視していきます。

国際関係学部の授業では、外交、ビジネス、国際協力の現場で活躍する実務家を招き、世界の最前線の知識や実情を学びます。
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