2025.06.24

理学部・理学研究科の学生らが「すばる望遠鏡」を用いて紫金山-アトラス彗星を観測

本学理学部生および理学研究科大学院生が、国立天文台すばる望遠鏡(米国ハワイ・マウナケア山頂)の共同利用観測に共同研究者として参加しました。2025年6月17日(日本時間)に行われたこの観測は、東京都三鷹市にある国立天文台三鷹キャンパスのリモート観測室で実施され、学生たちは研究チームの一員として、観測計画の策定やリアルタイムのデータ解析作業など、観測の一連のプロセスに実践的に関わりました。得られたデータは、参加学生自身の特別研究(卒業研究)や修士課程の研究テーマにも活用されます。

今回の観測は、新中善晴 専門員(研究機構・神山宇宙科学研究所)が主導し、太陽から遠方における彗星の物質放出の特性を解明することを目的としています。得られた成果は、2029年打ち上げ予定の彗星探査計画「コメット・インターセプター」*1のターゲット選定手法の確立にも資するものです。

本研究プロジェクトには、彗星科学や惑星科学の第一線で活躍する理学部 河北秀世 教授(神山宇宙科学研究所長)や神山宇宙科学研究所客員研究員である小林仁美 博士(株式会社フォトクロス)をはじめとし、国内外の研究者が参画しています。本観測に参加した学生たちは、こうした専門家との議論を重ねながら、最先端のサイエンスに主体的に取り組んでいます。神山宇宙科学研究所と神山天文台は、理学部・理学研究科と密接に連携し、国内外の最先端機器を駆使した研究テーマを通じて、学生に実践的な学生教育と研究支援を提供しています。

すばる望遠鏡での観測の様子。望遠鏡や観測装置に関する情報だけでなく、気象条件や観測対象となる天体の情報など、さまざまなデータを参照しながら観測を行います。

取得したデータをリアルタイムで解析する辻本さん

中央の赤い四角内に見えるのが、観測中の紫金山–アトラス彗星です。非常に遠方にいるため、淡く写っています。

■コメント

辻本倖さん(理学研究科 物理学専攻 博士前期課程1年次生)

学部4年生の頃から、すばる望遠鏡のリモート観測に継続して参加し、得られたデータを用いて研究に取り組んできました。今回の観測では簡易的なデータ解析を担当し、自分の手で観測に貢献できたことが大きな喜びとなりました。世界最先端の観測装置を用いた現場に立ち会い、実際の天文学研究の一端に関わることができた経験は非常に刺激的で、研究への意欲が一層高まりました。今後もすばる望遠鏡のデータを用いて、引き続き研究に励んでいきたいと思います。

鈴木優子さん(理学部 宇宙物理気象学科 4年次生)
この度、すばる望遠鏡のリモート観測という貴重な機会をいただきました。実際に観測データ取得の現場に立ち会い、天文学者の方々と共に観測に関わらせていただいたことで、学部生という立場や大学の講義だけでは得られない、実践的な側面を学ぶことができました。また、彗星研究の最前線がどのように行われているかを知る大きな機会となり、非常に有意義で感慨深い経験となりました。この貴重な機会を通じて得た学びを、今後の卒業研究やその先の進路選択にも活かし、天文学の理解をより一層深めていけるよう努力していきたいと思います。

新中善晴さん(研究機構 専門員)

今回の観測に向けて、辻本さんや鈴木さんをはじめとする研究協力者の皆さんと一緒に準備を進めてきました。観測当日は、国立天文台ハワイ観測所のスタッフの皆さんのご尽力と好天に恵まれ、予定していたデータを取得することができ、一安心しています。私自身、京都産業大学理学部・理学研究科在学期間中に得た多様な実践経験が、今の自分の土台になっていると感じています。今回のすばる望遠鏡を使った研究プロジェクトをはじめ、神山天文台や神山宇宙科学研究所が取り組む最先端の活動を通して、参加した学生が天文学への興味や知識を深めるだけでなく、新しい関心や挑戦へとつながるきっかけになってくれたら嬉しいです。

用語説明

*1 彗星探査計画コメットインターセプター

欧州宇宙機関(ESA)および宇宙航空研究開発機構(JAXA)共同で進める彗星探査ミッション。2029年に打ち上げ予定で、現時点で探査天体を未定とする革新的な手法を採用しています。探査機を宇宙空間で待機させ、探査天体が地球軌道に接近した際に3つの探査機で同時にフライバイ観測を実施するという非常に野心的な計画です。
河北教授は本計画におけるJAXAサイエンスリードを務めており、樋口有理可 准教授(理学部)や新中専門員も本計画に参画しています。

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