【文化学部】古典文学ゆかりの地、鞍馬を歩く
2025.05.30
文化学部京都文化学科の専門教育科目「京都文化基礎演習A」(担当:雲岡 梓准教授)で、鞍馬寺から奥の院参道を通り、貴船神社まで歩くフィールドワークが行われました。このフィールドワークの目的は、有名な古典作品の舞台になった場所を実際に訪れて現在の様子を観察し、作品をより深く理解することです。

平安時代中期に清少納言が執筆した随筆『枕草子』には、「近うて遠きもの」の一つとして、「鞍馬のつづら折り」が挙げられています。「つづら折り」とは、くねくねと幾重にも折れ曲がって続いている山道のこと。鞍馬寺の九十九(つづら)折(おり)参道は、山頂を見上げればすぐそこに見える本殿に着くまで、何度も大きく曲がりながら徐々に山道を登って行かなければなりません。学生たちはすっかり息が上がった様子で、「近くて遠きもの」という表現を嚙み締めました。
また、参道の途中に位置する由岐神社の近くに『源氏物語』ゆかりの場所、涙の滝があります。光源氏は18歳の春、病気療養のために訪れた「北山のなにがし寺」で可憐な少女、若紫と出会って心惹かれます。この寺のモデルとなったのが鞍馬寺であると言われています。光源氏は寺に滞在中、明け方に読経の声とともに滝の音が風に乗って響いてくるのを聞いて、「吹き迷う 深山おろしに 夢さめて 涙もよほす 滝の音かな」と和歌を詠みました。
その滝のモデルになったと推定される滝は、和歌にちなんで「涙の滝」と呼ばれています。2メートルにも満たない小さな滝で、学生たちは「もっと大きな滝を想像していた」と驚いていました。


このように古典文学ゆかりの場所を調査しながら鞍馬寺本殿を抜け、奥の院参道に入り、幼少期の源義経が天狗と出会って兵法を授かったという伝承の残る僧正ケ谷を通って山を下り、貴船神社に参詣してフィールドワークを終えました。

参加学生は、以下のような感想を述べていました。
- 『源氏物語』の舞台となった場所を見ることで、光源氏や物語の世界を身近に感じることができた。
- 参道の祠の前で熱心にお経を唱えている人や滝の前で力を浴びるような動作をしている人を見かけ、鞍馬が平安時代から現代に至るまで変わらない信仰の地であることを知って感慨深かった。
- 奥の院参道は暗くて静かで、天狗が住んでいると言われても信じられるような雰囲気があった。