【外国語学部】ヨーロッパ言語学科ドイツ語専攻の山取 圭澄助教が第63回ドイツ語学文学振興会奨励賞を受賞

2023.06.28

第63回ドイツ語学文学振興会奨励賞が、ヨーロッパ言語学科ドイツ語専攻助教の山取 圭澄先生に授与されました。同賞は、1960年以来毎年、若い研究者の優れた業績に対して贈られる伝統ある賞です。授賞式は、2023年6月3日、東京の明治大学で行われました。

受賞の対象となった論文は、日本独文学会の会報誌に発表された“Experiment zu einer ästhetischen Umwertung der Rhetorik — Eine Untersuchung über Winckelmanns Beschreibung des Torso im Belvedere zu Rom“ (邦題:レトリックの美学的価値転換の試み—ヴィンケルマン『ローマのベルベデーレにあるトルソーの記述』に関する研究)です。

ヴィンケルマンは、18世紀ドイツの美術研究者です。古代ギリシャの芸術を賛美し、近代ドイツの文学や思想(特にゲーテやシラーの文学、ヘルダーの歴史哲学や感覚論)に影響を与えた人物として知られてきました。

しかし、今回の受賞論文では、ヴィンケルマンが単なる古代美術の研究者ではなく、言葉の力を探求した文筆家として捉え直されています。『トルソーの記述』では、古代レトリックに倣った表現方法を駆使して、自らの彫刻鑑賞を読み手に追体験させようとしているからです。当時の読者の反応を分析すると、ヴィンケルマンによる彫刻の記述は、新たなドイツ語の文芸批評が生まれる大きなきっかけになったといえます。受賞論文の選考では、こうした広い視野を持った論考が高く評価されたとのことです。