予算問題から見る国連の危機

2026.06.11

はじめに

日本の2026年度予算は、122.3兆円で、これは、日本政府が1年間に使うお金の目安となります ※1。では、国連の予算規模はどうでしょうか。国連の2026年通常予算は、34.5億ドル※2、日本円で約5532億円となっており、この予算は、世界中で働く13万人近いスタッフにかかる人件費、ニューヨークやジュネーブ、ウィーンなどに点在する国連の施設で発生する光熱費や維持費といった用途で使われています。

この記事では、国連の予算がどこから来ているのか、また現在世間を賑わせている国連の財政危機がどのような経緯で発生し、どういった影響があるのかを解説します。

国連の予算はどこから来ているのか。

国連は、国家ではないので、人々から税金を集めることはできません。では、どこから国連が使うお金は来ているのかといえば、国連憲章に基づき、国連加盟国が分担して支払うことになります※3。そして、国連総会は、どの加盟国がどれほどの分担金を支払うかを、国の国民総所得などの要素に基づき3年に1度決めます。2026年の分担率は、1位がアメリカの22%、2位が中国の約20%、3位が日本の約6.9%となっており、日本は約2.2億ドル、約367億円ものお金を国連の分担金として支払っています。

この分担率の決定で興味深い点がいくつかあります※4。まず、国連の予算が大国の分担金の支払いに依存しないように、最大でも22%としており、これが現在適用されているのはアメリカだけです。反対に、どんなに経済規模が小さくとも支払うべき最低限の割合は0.001%に定められています。また、後発開発途上国には負担とならないよう、最大でも0.01%となるように決められています。

国連の財政危機

現在、国連の財政危機、英語ではliquidity crisisと呼ばれる事態が発生しています※5。つまり、国連で発生する経費があるにもかかわらず、国連でその経費に充てるお金が足りなくなってしまったのです。では、その原因は何かといえば、アメリカと中国という分担率1位・2位の国々が分担金を支払っていないことにあります。この2か国が分担金を支払わないだけで、約42%の国連の通常予算が足りなくなることになり、この危機の深刻さが一目でわかります。

そして、この危機は、国連の活動にすでに影響を与えています。私は、2026年3月にウィーンで開催された国連のとある会議に参加したのですが(冒頭の写真はその時に撮影したもの)、その会議は通常であれば、月曜日から金曜日にかけて、国連公用語であるアラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語の同時通訳を入れて行われるはずでした。しかし、通訳者の方に支払うお金を節約するためか、実際には、月曜日だけ同時通訳なしで会議が行われました。そして、国連の正式な会議では、国連公用語がすべて提供されなければならないため、月曜日の会合は非公式会合となってしまい、正式に何かを議決することができませんでした。

おわりに

このような話をすると、「分担金を支払わない国々に何か制裁はないのですか?」という疑問が浮かぶことでしょう。確かに、国連憲章19条には、丸2年以上分担金を支払わなかった加盟国は、国連総会での投票権を失うとあり、ペナルティがないわけではありません。しかし、アメリカは、「丸2年」の未払いにならないように、2026年2月に1.6億ドルを支払うことで、19条上のペナルティを回避しました※6。また、アメリカを含む安全保障理事会の常任理事国の場合は特に、総会での投票権を失っても、安保理での投票権を失わない限り、痛手ではないのかもしれません。

アメリカは、国連が分担金、つまりアメリカ国民の支払った税金を無駄遣いしていることを理由に分担金を滞納しています※7。もちろん、国連はニューヨークやジュネーブ、ウィーンといった物価の高い都市に本部や重要な拠点が設置されているなど、国連に無駄遣いが全くないわけではありません。しかし、政治的には、アメリカや中国の「自国ファースト」な姿勢が、国際社会が協力する枠組みを揺るがしていることは明らかで、これまで国連の活動が大国の分担金にいかに依存してきたかを改めて考え直す必要があるかもしれません。


  1. 財務省、「これからの日本のために財政を考える」
  2. 外務省、「日本の分担金・拠出金」
  3. 国際連合広報センター、「国連憲章テキスト」
  4. 詳しくは、国連総会決議79/249を参照。
  5. 日本経済新聞、「国連が財政危機、米国の未払いが原因 運営費7月に枯渇の恐れ」(2026年1月31日)
  6. TBS NEWS DIG、「アメリカが国連分担金支払い 未払い分の一部にあたる約250億円 第2次トランプ政権発足後初の支払いか」
  7. BBC、「国連が「差し迫った財政破綻」の危機と事務総長 分担金未納で打撃」

吉田 曉永 助教
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