前回の「法学部 服部ゼミが研究者、実務家を招聘し『公開ゼミ授業』を開催!(その1)」に続き、登壇者との座談会の様子をお伝えします。
(法学部 服部ゼミ4年次 山本 実夢)

3名の登壇者による発表の後(その1 参照)、本学の草鹿 晋一 教授を迎え、草鹿教授と岡田 行雄 教授をコーディネーターとして安西 敦 弁護士、野田 詠氏 理事長、服部 達也 教授との座談会が行われました。会場参加者との質疑応答も交えながら、社会復帰支援の現状と課題について活発な議論が展開されました。
座談会では主に、
〇 発達障害を抱える少年への支援・処遇
〇 児童福祉機関の役割と必要性
〇 非行少年の保護者に対する支援
の3つのテーマについて議論されました。
発達障害を抱える少年への支援
「発達障害を抱える少年への処遇についてどう考えるか」という問いに対し、服部教授は「他機関との連携に尽きる」と述べました。少年たちが抱える課題は一人ひとり異なり、少年院だけで対応することには限界があります。そのため、福祉・医療・教育などの関係機関と連携しながら、個々の状況に応じた支援体制を構築していくことが不可欠であると説明しました。また、少年院が主体となって他機関との関係づくりを進め、継続的な支援につなげていく必要性があると強調しました。
児童福祉機関の役割と課題
児童福祉機関の必要性について、安西弁護士は「非行少年を取り巻くさまざまな課題を乗り越えるためには、関係機関の連携が不可欠である」と指摘しました。
一方で、児童福祉機関では慢性的な人材不足が続いていること、さらに家庭裁判所や児童相談所では定期的な人事異動により担当者が変わるため、継続的な支援が難しい現状も紹介されました。その結果、非行少年への関与が十分に行われていないケースもあるといいます。こうした課題への対応として、受け入れ可能な施設や支援機関を増やすことに加え、人事制度を含めた支援体制の見直しが必要ではないかという意見が示されました。また、現行制度の中でも各機関が工夫しながら連携を図ることで、より充実した支援につなげられるのではないかとの見解が共有されました。
保護者支援の重要性
議論の中で岡田教授は、非行少年本人への支援だけでなく、「保護者への支援の重要性」にも言及しました。岡田教授は、「非行事件を減らすためには、保護者への支援も欠かせない」と述べ、非行少年のいる家庭では、さまざまな機関から批判や指導を受ける一方で、悩みを相談できる場所が多くないことを指摘しました。
虐待などの深刻な問題が発生する前の段階から、子育てに関する悩みに寄り添い、必要な支援を届ける公的な仕組みが求められています。しかし、そのためには十分な予算や支援制度の整備が必要であり、現状では制度面の課題も残されているとの見解が示されました。
民間による支援の可能性
これに対し草鹿教授からは、「社会的意義のある活動であれば、多くの人が支え合う寄付文化を育てていくことも重要ではないか」との意見が出されました。また、野田理事長と服部教授は、「国の支援だけに頼るのではなく、民間団体ならではの柔軟な発想や機動力を生かした支援も重要である」と述べ、公的支援と民間支援の両輪で取り組む必要性を指摘しました。
さらに、協力雇用主として社会復帰支援に携わる参加者からは、「社会復帰支援をやって本当に良かった。さまざまな人と出会い、多くを学ぶことができた。こうした取り組みが社会の当たり前になってほしい」という声が寄せられました。
また、自身の家族が罪を犯した経験を持つ参加者からは、学生たちに向け「家庭環境に困難を抱える子どもを見ても、『あの子とは関わらない方がいい』と言う大人にはならないでほしい。自分の常識にとらわれず、既存の価値観を見直すことができる人になってほしい」とのメッセージが送られました。
座談会のまとめ
座談会の最後に、岡田教授は次のように語りました。
「非行少年たちは、社会の中で健全な人間関係を築く機会に恵まれないことが多い。だからこそ、信頼できる大人との出会いを増やし、成功体験を積み重ねられる環境を整えること、そして安心して相談できる場所をつくることが大切である。」
その後、京都産業大学 社会安全・警察学研究所長の岡部教授による総括と講評が行われ、公開ゼミは盛況のうちに閉幕しました。
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重大事件が発生するたびに、非行少年に対する厳罰化を求める声が高まります。しかし、今回の公開ゼミを通して浮かび上がったのは、非行の背景には虐待や貧困、孤立、発達上の困難など、さまざまな生きづらさが存在しているという現実でした。
皆さんは、「非行少年や罪を犯した人は『人』なのだろうか」「人は痛みだけで変わるのだろうか」という問いに、どのような答えを持つでしょうか。もちろん犯罪行為は許されるものではありません。しかし、厳罰や断罪だけで再犯を防ぎ、社会をより良くすることができるのでしょうか。また、自分自身や大切な人が被害に遭った時、適切な支援を受けられない社会であったなら、私たちは安心して暮らすことができるでしょうか。
私たちは誰もが過ちを犯す可能性を持つ一方で、ある日突然被害者になる可能性も持っています。だからこそ、加害者支援と被害者支援の双方について考え、誰もが安心して生きられる社会とは何かを問い続けることが重要です。
本公開ゼミが、皆さんにとって「私たちにとってより良い社会とは何か」を考えるきっかけとなれば幸いです。