
学部の授業以外にも活躍の場を求めて積極的に取り組む学生を紹介する本企画。
今回は、「フィリピンにおけるサステナブルな養殖と地域コミュニティの関わり ― 食品ロス削減の観点から ―」をテーマにフィリピンを訪問し研究を続けている、国際関係学部3年次の細川のどかさんにお話を聞きました。
1.「国際関係」に興味を持ったきっかけを教えてください。
もともと海外の文化や、日本とは異なる環境で暮らす人々の生活に興味があり、海外のニュースや国際的な社会問題について調べることがありました。その中で、環境問題や食品ロス、貧困など、一つの国だけでは解決することが難しい問題が多く存在することを知り、国同士がどのように協力し、また時には対立しながら問題を解決しているのかに興味を持つようになりました。
特に、同じ問題であっても、国によって考え方や政策、文化、経済状況が異なることで、解決方法も変わることに面白さを感じました。そこから、国と国との関係だけでなく、環境や経済、社会問題などさまざまな分野が国際的につながっていることを学びたいと思い、「国際関係」に興味を持つようになりました。


2.今、注力している取り組みは何ですか?
私は現在、食品ロスや持続可能な食料生産といった環境問題に関心を持ち、今回一枝会「行ってみ!チャレンジ」の支援金を得て、フィリピンでの現地調査に力を入れました。
私はもともと食品ロス問題に興味があり、日本と海外では食品ロスに対する考え方や取り組みにどのような違いがあるのか、また、海外で行われている取り組みから日本が学べることはないのかという疑問を持っていました。そこで今回、フィリピンのネグロス島でサステナブルな養殖を行っているKiko氏のもとを訪れ、実際のファームを見学しながら、養殖の仕組みや日本の養殖との違いについて調査しました。Kiko氏の養殖は、単に魚を生産するだけではなく、自然の生態系を活かしながら環境を再生し、地域の食料供給につなげていくことを目指したものであり、日本での養殖のあり方を考える上でも多くの学びがありました。また、養殖だけでなく、現地の「リアル」を知るために、ローカルなマーケットにも足を運びました。魚や肉、野菜、果物などがどのような環境で販売・保管されているのかを実際に観察し、現地の人々へのインタビューも行いました。日本では魚を氷や冷蔵設備を使って販売することが当たり前ですが、フィリピンでは30℃を超える環境でも氷を使わず、水をかけながら販売しているなど、大きな違いがありました。
最初は日本の基準から「衛生面に問題があるのではないか」と考えていました。しかし、実際に市場を訪れると、そこには多くの人が日常的に買い物に訪れ、店の人と会話を交わす、地域に根付いたコミュニティがありました。Kiko氏からも、保管環境には課題がある一方で、その市場は地域の中で新鮮で良質な食品を購入できる場所であり、そこでの販売方法も文化の一部であると聞きました。この経験から、日本の「当たり前」を基準に現地の問題を判断するのではなく、その地域の文化や価値観、そこで暮らす人々の視点から考えることの大切さを学びました。
さらに、Kiko氏が主催するイベントの運営を手伝いながら、サステナブルな養殖について話を聞いたり、スローフードに関わる方々と現在の国際問題について議論したりするなど、現地のさまざまな人と積極的に交流しました。
今回の渡航では、単に海外の現状を知るだけではなく、自分で問いを立て、現地に足を運び、人と関わりながら自分なりの答えを探すことに挑戦しました。食品ロスや持続可能な養殖という関心から出発し、実際の現場を見ることで、日本の視点だけでは分からなかった課題や価値観に気づくことができたことが、今回の大きな学びです。




3.その取り組みに参加(応募)したきっかけ・動機を教えてください。
1,2年次の時から存在は知っていて、何度か発表会も見に行っていたのですが、当時は研究目的や自分の興味のあることがはっきりしておらず挑戦できませんでした。しかし、3年次になりゼミ活動が始まって自分が何に興味があるのかを改めて知る機会ができ、様々な外部の活動にも個人的に参加するようになりました。その中の1つである京都でのNPO主催の交流イベントにおいて、Kiko氏が育てた魚を実際に味わいながら話を伺う機会があり、幼い頃から海と密接に関わる生活を送ってきたからこそ捉えることのできる海洋環境の変化や、それに向き合いながら事業として持続可能な養殖を実践している姿勢に強い関心を抱いたことがきっかけでした。実際に現地に足を運び、どのような環境下で、どのような規模やルールのもと、誰がどのような活動を行っているのかを調査したいと考えるようになり、一枝会「行ってみ!チャレンジ」への応募を決めました。



4.参加して、ご自身にとってプラス(成長)につながったこと、気づきは?
今回の取り組みは、すべて自分で予約・計画・行動・実践しないといけなかったので、今まで経験してきた海外での学びとは違い、自主性において、とても成長したものになったと感じています。計画はもちろん、向こうで誰かと話すのも、アクションを起こすのも自分しかいない状況で、何もしなければ何も得ることのできないものでした。私は今回、フィリピンのネグロス島のバコロド市というところを訪れたのですが、英語を話せる人があまり多くなくてコミュニケーションをとることにとても苦戦しました。しかし、何かしてみないと何も起きないと自分を鼓舞し、口頭で質問するんじゃなくて紙に書いてゆっくり読んで理解してもらいやすくしてみようとか、英語を話せる人を見つけて協力してもらおうなど工夫をしてインタビューをしました。言語が違うとしても対人間なんだと思い、話してみることがとても重要だと気づきました。自分でアクションを起こしてみたことによってとてもいい出会いもあり、素晴らしい経験ができた取り組みでした。


5.国際問題を考えるうえで、普段から心がけていることはなんですか?
私は、日本の視点だけで物事を考えることを絶対にしないよう心がけています。これは、三田先生の「国際協力実務論」という授業を通して学んだことです。今回、一枝会でフィリピンの現地市場を訪問し、実際の現場を見ることで、この考え方の重要性を改めて実感しました。市場を訪れる前の私は、「フィリピンの市場は衛生面が大丈夫なのだろうか」「きっとお腹を壊すし、現地の人もあまり買いたくないのではないか」と考えていました。実際に訪れてみると、想像していた以上に日本とは異なる環境で、正直なところ「この環境で売られているものは自分なら買えない」と感じました。そして、それは地域が解決すべき問題なのではないかと考えていました。日本では、魚を販売する際には氷を置いたり、冷蔵したりすることが当たり前です。しかし、フィリピンの市場では、気温30℃を超えるほぼ屋外のような環境で、魚に水を定期的にかけながら販売しており、氷は置かれていませんでした。魚だけでなく、肉や野菜、果物も同じような環境で販売されていました。ところが、そのような環境でも朝から晩まで多くの市民が買い物に訪れ、市場には非常に親密なコミュニティが形成されていました。今回お世話になったKiko氏もその市場をよく利用しており、店の人たちとコミュニケーションを取りながら買い物をしていました。Kiko氏は、「この保管環境は問題だと思うが、ここは地域の中では新鮮で良質な食品が売られていて、とても良いコミュニティになっている。この売り方も私たちの文化だから、無理に変えようとは思わない」と話していました。私自身、市場で売られている食品は衛生面に不安があるという先入観から、食べることを避けていました。しかし、Kiko氏に勧められ、市場で売られていたカットパインを食べてみました。少し温かい状態ではありましたが、実際に食べてみるととても甘く、美味しかったことが印象に残っています。今回、現地の市場を訪れ、実際の人々の暮らしやコミュニティ、そして現地の人たちの考えを知ったことで、私が「問題」だと捉えていたことが、現地の人々にとっては必ずしも問題ではないということに気づきました。日本の「当たり前」を基準に考えるのではなく、その地域の文化や生活、需要と供給の関係まで含めて考える必要があると学びました。今回の経験は、少し忘れかけていた「一つの視点だけで物事を判断せず、多角的な視点から考える」という姿勢を、改めて自分自身に問い直すきっかけとなりました。国際関係を学ぶ上でも、異なる文化や価値観を自分の基準だけで判断せず、まずは相手の立場に立って考えることを大切にしていきたいです。


6.今の活動をとおして、今後の抱負、また将来に繋がること・繋げたいことは?
今回の活動を通して、海外で学ぶことは、ただ現地の文化や社会について知識を得るだけではなく、自分自身で考え、行動することで初めて得られる学びがあるのだと実感しました。特に、言語や文化の違いがある中でも、自分から一歩踏み出して行動することで、人との出会いや新しい気づきにつながることを学びました。また、現地の市場を訪れた経験から、日本の「当たり前」を基準に物事を判断するのではなく、その地域の文化や価値観、そこに暮らす人々の視点から物事を見ることの大切さも改めて実感しました。今後は、今回身につけた自主性と多角的な視点を、大学での学びやこれからの活動にもつなげていきたいです。特に、環境問題や食品ロスなど、国や地域を越えて関わる課題について、現地の人々の声を聞きながら、自分なりに課題を考え、行動できるようになりたいです。
将来は、今回の経験を一度きりの海外経験で終わらせるのではなく、異なる文化や価値観を持つ人々と関わりながら、自分から課題を見つけ、行動に移せる人になりたいと考えています。


7.国際関係を学ぶ学生(興味を持っている高校生)のみなさんへ一言
国際関係は、非常に学びの幅が広く、学びのスケールが大きい分野です。そのため、多くの情報を集めることや、様々な視点から考えられる力が必要になります。私が、特に国際関係を学んでいて面白いなと思うことは、一つの問題への見方・捉え方が地域によって全く異なり、それぞれの文化や伝統に合わせた解決方法があるということです。様々なグローバルイシューが存在する中で、今までは日本ではこれが当たり前・この対処法が最善だから他国でもそれが通用すると思っていましたが、日本からの視点にとらわれず、他国のリアルな状況・環境・文化などを知り、それぞれに合った解決策・支援方法などを見つけることがとても重要であると同時にとても難しいということを学びました。国際関係学部を考えている学生さんには、三田先生の国際協力実務論という授業と、井口先生のグローバルガバナンス論と国際環境論という授業をお勧めします。

