文化学部の中野 宏幸教授は、7月6日から10日までの間、トゥールーズ・キャピトル大学で開催された第17回世界交通学会(WCTR2026)に参加しました。同学会は3年に1度開催される、交通分野における世界最大規模の国際会議であり、世界各国の研究者が一堂に会するものです。会場となった同大学は、1229年創設の歴史ある大学であり、世界的な経済学の研究拠点として知られるトゥールーズ経済学院(Toulouse School of Economics:TSE)を構成機関の一つとしています。
今回の会議は、持続可能なモビリティや都市交通、デジタル化、気候変動対応などの課題をテーマとして行われ、航空宇宙産業の拠点であるトゥールーズの特性を生かしつつ、産業・研究・政策の連携や実践的な議論、国際的ネットワークの強化を図るものとなりました。
中野教授は、地域の観光ガバナンスと交通機能のあり方に関する研究発表を行うとともに、国土交通省在籍時にケンブリッジ大学およびオックスフォード大学交通研究所(Transport Studies Unit)に留学した際に指導をいただいた同研究所の当時所長であり、本学会では基調講演を行ったサザンプトン大学教授ジョン・プレストン氏らと学術交流を深めました。
WCTR2026参加者の国際学術交流のひととき(中野教授撮影)
1960年代以降、トゥールーズの都市圏は、航空宇宙産業をはじめとする先端産業の集積と、歴史的に培われてきた文化的伝統とが結びつくことで、急速な成長を遂げてきました。同地域は広大な農村空間や自然環境を有しており、多様な地域資源を生かしつつ、持続可能で調和のとれた都市づくりへの視点から、都市と農村環境の関係、産業間のバランス、さらに欧州全体の中での位置づけを総合的に捉えることが求められています。
トラム、メトロ、バス、フランス国鉄(SNCF)の地域圏列車TER(Transport Express Régional)が接続する交通結節点であり、
パーク・アンド・ライド機能を備えたアレーヌ(Arènes)駅(中野教授撮影)
トゥールーズでは、大規模な交通インフラの再編が進められています。既存の2路線に加え、第3の地下鉄路線(Ligne C)の建設が進められており、エアバスをはじめとする航空宇宙産業の集積地や研究開発拠点、主要鉄道駅を結ぶ新たな都市軸の形成が期待されています。また、空港アクセスの強化、TERとの接続改善、バスネットワークの再編、パーク・アンド・ライド施設の拡充などにより、地下鉄・鉄道・トラム・バスが一体的に機能する公共交通ネットワークの構築が進められています。
こうした取組は、交通政策・都市開発・産業振興を一体的に進めるものであり、世界有数の航空宇宙都市であるトゥールーズの発展を支える重要な基盤となっています。今回のWCTR2026への参加を通じて、交通を軸とした国際的な議論や研究動向に触れ、世界各地の課題と取組を共有する重要性をあらためて認識しました。
トゥールーズ・ブラニャック空港に立地する
エアバスの航空産業拠点(中野教授撮影)
トゥールーズ・ブラニャック空港と空港接続トラムの工事
(右側はトラム延伸工事の現場、中央は工事期間中の代替バスの乗降場、後方は空港ターミナル)(中野教授撮影)
世界各地では、交通や都市づくりをめぐる多様な取組が進められています。国内外の地域の動きや戦略に関心をもち、その知見をもとに、人々の交流を支える交通インフラや持続可能な地域社会のあり方について考えてみませんか?
文化学部 中野教授のフランス・トゥールーズ出張報告(1):観光地域づくり機関との意見交換と観光戦略の多面的展開