2026.03.30

ソフト粒子系のせん断流における粒子の拡散とジャミング転移に関する学術論文を出版しました

理学部 物理科学科の齊藤 国靖 教授は大阪大学の研究者と共同研究を行い、せん断による粒子の拡散とジャミング転移の関係を明らかにしました。この研究成果は学術誌Physical Review Researchの論文として掲載されました。

掲載論文

著者: Kuniyasu Saitoh and Takeshi Kawasaki
題目: Relaxation dynamics and long-time tails explain shear-induced diffusion of soft athermal particles near jamming
掲載誌: Phys. Rev. Research 8, L012069 (2026)

DOI: 10.1103/bf83-xrjp
URL: https://doi.org/10.1103/bf83-xrjp 

研究概要

巨視的な大きさの粒子の集まりであるソフト粒子系は非平衡物理学の重要な研究対象であり、粉体、泡、エマルジョンなど、身近に存在する物質の典型的な物理モデルでもあります。これまで、ソフト粒子系にせん断変形を加えたときの圧力やせん断応力の変化については詳しく調べられてきましたが、せん断によって粒子自身が拡散する現象については系統的な解析が成されていませんでした。そこで、本研究では分子動力学シミュレーションによってソフト粒子系のせん断流を再現し、せん断による粒子の拡散現象と拡散係数を調べました(図)。拡散係数に影響を与える重要なパラメーターは粒子の密度、せん断率、粒子数(システムサイズ)ですが、シミュレーションではこれらを系統的に変化させ、拡散係数のパラメーター依存性を明らかにしました。特に、ジャミング転移点近傍において圧力やせん断応力(または粘性率)の臨界スケーリングが成立することは知られていましたが、拡散係数についても同様の臨界スケーリングが成立することを示しました。また、グリーン・久保公式を用いてソフト粒子系の拡散係数を粒子速度の時間相関関数と結び付け、速度の2乗平均と相関関数の緩和時間についても臨界スケーリングが成り立つことを示しました。これらの臨界スケーリングで導入した臨界指数はグリーン・久保公式によって関係づけられ、粒子数(システムサイズ)を変化させても関係は変わらないことを確認しました。また、粒子の密度が高く、せん断率が小さなパラメーター領域において時間相関関数が冪減衰することを発見し、液体などで知られていたロングタイムテールがソフト粒子系のせん断流においても存在することが解りました。これにより、ジャミング転移した2次元の粒子系の拡散係数が熱力学極限で発散することを説明しました。

ソフト粒子系の分子動力学シミュレーション(左)と粒子の平均2乗変位(右)

参考