2026.02.10

卵成熟と卵活性化における Src キナーゼの機能を解明 — 国際学術誌 Cells に論文掲載決定 —

このたび、生命科学部・産業生命科学科の佐藤 賢一教授らによる研究成果が、国際学術誌 Cells(MDPI, スイス・バーゼル/インパクトファクター5.2)に2026年2月6日付で掲載されました。

本研究論文『Functional Roles of Src Kinase Activity in Oocyte Maturation and Artificial Egg Activation in Xenopus laevis』は、Cells 誌の専門セクション Reproductive Cells and Development に採録されています。

研究の概要

動物の生殖において、卵母細胞が成熟し、受精可能な卵へと変化する過程(卵成熟)や、受精後に卵が発生を開始する過程(卵活性化)は、生命の連続性を支える極めて重要な現象です。本研究では、これらの過程を制御する分子機構の一端を明らかにすることを目的として、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)卵母細胞をモデルに解析を行いました。研究チームは、Src ファミリー・チロシンキナーゼと呼ばれるシグナル伝達分子に注目し、その活性の違いが卵成熟および卵活性化にどのような影響を及ぼすかを検証しました。具体的には、Src タンパク質について「野生型」「恒常的活性化型」「キナーゼ不活性型」の3種類を人工的に発現させ、それぞれの生理的役割を比較解析しました。

主な研究成果

Src キナーゼ活性は、ホルモン(プロゲステロン)によって誘導される卵成熟反応を促進する正の調節因子として働くことが明らかになりました。一方で、卵活性化においては、細胞内カルシウム濃度の直接的上昇による活性化には Src 活性は必須ではありませんが、細胞膜を介したシグナルによる活性化には Src キナーゼ活性が不可欠であることが示されました。これらの結果から、Src は卵成熟と卵活性化の両過程において、状況依存的に機能する重要なシグナル調節因子であることが明確になりました。

研究の意義

本研究は、卵成熟から卵活性化への移行を制御する分子基盤を、シグナル伝達の観点から体系的に理解するための新たな知見を提供するものです。生殖細胞の制御機構に関する基礎研究として重要であるだけでなく、将来的には生殖医療や発生工学分野への応用的展開も期待されます。

掲載誌および論文に関する情報
ジャーナル名 Cells
出版社 MDPI(Multidisciplinary Digital Publishing Institute:スイス、バーゼル)
論文セクション Reproductive Cells and Development
論文情報 Cells 2026, 15(3), 305
論文タイトル Functional Roles of Src Kinase Activity in Oocyte Maturation and Artificial Egg Activation in Xenopus laevis
論文著者 佐藤 賢一(筆頭・責任著者)、トクマコフ アレクサンデル(近畿大学)

本研究成果は、国際的にも評価の高いオープンアクセスジャーナルにおいて発信され、今後、広く生命科学・生殖生物学分野の研究者に共有される予定です。

図:本研究の実験デザインと主要な知見の概要
アフリカツメガエル(Xenopus laevis)の未成熟卵母細胞に、野生型(WT)、恒常的活性化型(KA)、またはキナーゼ不活性型(KN)のSrc(xSrc)mRNAを注入し、5時間後にプロゲステロン処理によって卵成熟を誘導した。成熟卵に対して、カルシウムイオノフォア(A23187)、過酸化水素(H₂O₂)、またはカテプシンBによる人為的卵活性化刺激を行い、表層収縮およびMAPKの脱リン酸化を指標として卵活性化の成否を評価した。その結果、Srcキナーゼ活性は卵成熟を促進するとともに、膜依存的な卵活性化経路(H₂O₂およびカテプシンB)に必須である一方、細胞内カルシウム上昇による活性化(A23187)には必須ではないことが明らかとなった。

サマリー

Srcの活性状態を操作した卵母細胞を用いて、卵成熟と人為的卵活性化を解析した結果、Srcキナーゼ活性はプロゲステロンによる卵成熟を促進し、膜シグナル依存的な卵活性化には必須である一方、カルシウム直接刺激による活性化には必須でないことが示された。