2026.01.21

講演会「岐路に立つ文化財の保存と修理~選定保存技術と用具・原材料~」を開催しました

2025年11月8日(土)むすびわざ館ホールにて、特別展の関連イベントとして講演会「岐路に立つ文化財の保存と修理~選定保存技術と用具・原材料~」を開催しました。

文化庁の岡村一幸(おかむら かずゆき)先生を迎え、文化財保護制度の歴史、保存と修理にあたっての基本的な考え方、文化財修理をとりまく技術や用具・原材料について詳しくお話しいただきました。

講師の岡村一幸先生
講師の岡村一幸先生
文化財修理をとりまく環境についてのお話
文化財修理をとりまく環境についてのお話

江戸時代には既に、歴史や文化に関するものを保護しようという風潮があったそうで、近代に法の整備が始まり、文化財の中でも古文書の制度が整備されたのは遅い方だとご紹介いただきました。古文書は系統的、一括性のあるものが指定や保護の対象として重視されており、賀茂別雷神社文書の13,639通も、その流れの中で重要文化財に指定されました。

修理は現状維持を原則とし、再修理の余地を残すのが基本的な考え方ではあるものの、ものによって状態が異なるため、所有者・修理技術者らの関係者と修理方針を相談・共有し、どういう考えに基づいて修理したかをしっかりと記録に残すことが大事とのことです。そして、修理後も短期的・長期的視点に立って取り扱いを考え、保存環境を整備していくことが大切だと教えていただきました。

また、社会の変化に伴い、文化財修理をとりまく技術の継承や用具・原材料の生産が危機的状況にあること、これらを保護するためのプロジェクトがあることを教えていただきました。

文化財、特に古文書を通じて、修理や技術、用具の現場に携われている先生から、お仕事への責任感や熱い思いが伝わってくるご講演でした。

参加者の方からも「文化を継承していくことの難しさをあらためて痛感いたしました」、「修理後の史料を見る際は、修理の方針(何を維持して、何を修理するのか)を考えてみようと思います」、「保護制度成立の背景や文化財保護法以降の制度について、初めて知り、勉強になりました」といった感想が寄せられました。文化財を後世に伝えていくのは容易ではなく、様々な課題があることを考える貴重なご講演となりました。