講演会「文化財を守り伝える~重要文化財 賀茂別雷神社文書の修理を中心に~」を開催しました
2025年11月22日(土)むすびわざ館ホールにて、特別展の関連イベントとして講演会「文化財を守り伝える~重要文化財 賀茂別雷神社文書の修理を中心に~」を開催しました。
株式会社光影堂 代表取締役の大菅直(おおすが ただし)先生と同技師の上村辰(うえむら たつ)先生を迎え、賀茂別雷神社文書保存修理事業、古文書修理の基本となる考え方や方法、賀茂別雷神社文書の修理の実例について詳しくお話しいただきました。また、修理方法の一つである裏打ちの実演もしていただきました。

賀茂別雷神社文書の修理は、基本的には、補強のための紙である「裏打ち」の除去、虫損箇所の補修、新しい裏打ちの接着、元の装丁への仕立てといったオーソドックスな方法で行われているそうで、写真を見ながら作業の様子をご紹介いただきました。薄く細かい和紙を剝がしたり貼ったりする非常に緻密な作業は、手が震える思いがしました。
「大手鑑」に分類される古文書の修理は、上記のような修理とは少し違っていたそうで、詳しくお話しをしていただきました。
「大手鑑」は重厚な手鑑の台紙に貼り付けられた古文書群で、中には裏表や複数ページにまたがって貼り付けられているものがあり、保存状態は決して良好とはいえませんでした。文化財修理は元の姿を維持することが基本とされますが、このままでは本紙の傷みが進行するため、所有者・修理技術者・文化庁等の間で修理方法が検討され、台紙から本紙をはがして修理・保存する形が採用されたそうです。古文書の歴史的経緯を知ることができる旧来の姿は、記録をとって残されました。
文化財の何をどのように残して修理をするかは非常に難しい問題で、ジレンマを抱えつつ、日々新しい技術の採用も検討しつつ、関係者のみなさまが考え抜かれて仕事をされていることがわかりました。
参加者の方からは「私がもっと若ければ、この世界に入りたいと思いました」、「修理保存の意義や修復で見える発見、裏打ち実演、後継者問題まで学べた内容の濃いセミナーでした」、「文化財を守る技の貴重さを実感しました」などの感想が寄せられ、実演を見られてよかったとのご意見が多数ありました。緊張感のある作業を見せていただき、修理に対する理解や関心を深める貴重なご講演となりました。