2025.07.25

宇宙物理・気象学科 談話会を開催しました!

宇宙物理・気象学科では、6月25日に主に学部生・大学院生を対象とした談話会を開催しました。

今回の講師は、本学科の卒業生であり、現在は、京都大学大学院 理学研究科 地球惑星科学専攻 博士後期課程に在籍している野村 鈴音さんです。気象学分野での研究成果について、最新の知見を交えてご講演いただきました。

新入生歓迎パーティー

談話会に先立ち、学部1年次生の歓迎を兼ねたピザパーティーも開催されました。教員や上級生、大学院生も加わり、学年や立場の垣根を越えた交流の場となりました。昼休みの時間を利用して行われたこのイベントには、60人を超える学生が参加しました。和気あいあいとした雰囲気の中で、さまざまな話題が飛び交い、大いに盛り上がりました。

ピザパーティーの様子

1年次生にとって、授業やレポート課題への取り組みにも慣れ始め、大学生活の輪郭が見えてくる時期です。そんな中で、先輩や教員、そして気象研究の最前線で活躍する卒業生と直接言葉を交わせたことは、今後の進路や将来像を考える良いきっかけになったことでしょう。これからも、定員40名という少人数制の本学科ならではのアットホームな雰囲気を活かし、有用な助言を得られる先輩とのつながりを大切に育んでいってほしいと思います。

講演会「ジェット気流の変動からみた寒波の予測可能性」

午後に開催された談話会では、「ジェット気流の変動からみた寒波の予測可能性」と題して、野村さんが大学院修士課程から取り組んでこられた研究についてお話しいただきました。

私たちが日々体感する天気は、上空を吹く偏西風によって、西から東へと移り変わっていきます。この偏西風のうち、冬季に100m/sにも達する上空10,000m前後の西風の部分が「ジェット気流」として知られています。ジェット気流は、気圧配置の変化や、寒気・暖気の動きと密接に関係しており、気象現象の理解や予測において重要な役割を担っています。

今回の講演では、野村さんが注目された「ジェット気流の蛇行」が、日本に寒波をもたらす要因になり得るという興味深い視点が提示されました。なかでも特徴的なのは、日本の天気に影響を与えるのが、日本の西側ではなく、むしろ東側に位置するベーリング海付近のジェット気流だという点です。講演では、この「下流側」のジェット気流の構造と、日本への寒波の関係について、丁寧な解説がなされました。

講演する野村さん

具体的には、2020年から2021年にかけて日本を襲った寒波の気象データをもとに、野村さんはこうした仮説を検証しました。日本で気温が急激に低下した数週間前にさかのぼって調査すると、ベーリング海付近でジェット気流が大きく蛇行していたことが判明します。その蛇行はやがて高気圧性の渦として切り離され、北極圏を西へと移動し、ヨーロッパ北部のバレンツ海周辺に達します。そこで「上流側」のジェット気流と合流することで、日本に寒波をもたらす要因とされる「EUパターン」(ヨーロッパから日本にかけた低・高・低の気圧偏差の構造)が形成・強化されるというシナリオが描かれました。

「日本の天気を予測したいのであれば、西だけでなく東も見なさい」という、一見すると直感に反するような提案ですが、野村さんは詳細な観測データと解析に基づいて、その根拠をわかりやすく示されました。聞き手の多くにとって、新鮮で説得力のある内容だったに違いありません。

談話会では、メインとなる話題に加えて、野村さんが所属する 京都大学 防災研究所 災害気候研究分野 の多様な研究活動や、ご自身が取り組まれている新たな数値計算手法の開発についても紹介がありました。講演の随所には、気象データを可視化したグラフが数多く用いられており、天気予報などで日常的に目にする情報とも親和性が高く、専門外の聴衆にとっても視覚的に理解しやすい内容となっていました。これらのグラフの多くは、本学科で1年次生から学ぶPythonで開発されたソフトウェアを用いて作成されたものであり、学生にも身近なツールで高度な研究が可能であることが示されました。気象分野を志す学生にとって、普段の講義を通して、計算機スキルやデータ科学の理解を一層深めていくよいきっかけとなったのではないでしょうか。

積極的に質問する1年生

講演後に学生の質問に答える野村さん

講演後の質疑応答では、研究の専門的な内容にとどまらず、使用されていたソフトウェアや数値手法、さらには進路選択に関する質問まで、次々と手が挙がり、時間内では収まり切らないほどの盛況ぶりでした。終了後も、野村さんの周りには学生の輪が絶えず、学年を問わず活発な意見交換が続けられていました。

理学部では、学内教員や研究実績のある研究者、繋がりのある実務分野で活躍する人物を招聘し、定期的に談話会(講演会)を行っています。これにより、理学の最先端の研究内容に触れ、社会とのつながりや広がりを知る機会を提供しています。この談話会は、学生の学習意欲の向上、教員の研究意欲や質の向上にも寄与しています。参加対象は学生、教員、だけではなく、一般の方々も含まれます。