2025(令和7)年度 過去の研究会詳細

2025年(令和7)年度 第1回研究会

日時 2025年5月28日(水)
14:00〜16:00
場所 4号館2階 総合学術研究所

発表者及びテーマ

梶 茂樹(ことばの科学研究センター研究員・現代社会学部元客員教授)
Kiga語の動詞活用

アフリカのバンツー系の言語は一般に動詞活用が複雑である。現在私がウガンダで調査しているKiga語ではtense/aspect/moodによる変化が50以上もある。しかも、1つの時制において、基本形(主節形)、主語関係節形、目的語関係節形、when従属節形、if従属節形、分詞形などがあり、それぞれ形が異なるのでいちいち確認していかなければならない。特に変化に声調が絡むので、いくつかの条件を考慮して調べていく必要がある。Kiga語の調査はいまだ道半ばであるが、得られた活用形を打ち出すとA4紙で500ページを超える。今回は、6月に調査に出かけるので、中間報告として、このKiga語の動詞活用の全体像が見えるように整理して報告したい。

吉田 和彦(ことばの科学研究センター研究員・外国語学部客員教授)
ソシュール理論と印欧語比較文法

印欧祖語の母音交替の不規則性を内的再建法によって統一的に説明しようとしたソシュールの試みは、個別的な対応の解釈の寄せ集めではなく、構造体としての祖語の再建であった。ソシュールの見方によれば、印欧祖語にはソナントのように機能する自律的な音素(coefficient sonantique)が存在した。この音素は分派諸言語において完全に消失したと考えられていたが、ソシュールが亡くなってから2年後の1915年に解読されたヒッタイト語に部分的に保存されていることが明らかになった。こうしてソシュール理論の正しさは立証され、喉音理論(laryngeal theory)として確立した。その後今日に至るまで、喉音理論は印欧諸言語にみられるさまざまな不可解な音韻的および形態的な問題の解明に向けて、重要な役割を果たすようになっている。