人々のウェルビーイングを支援する感性AIの試み

報告者 荻野 晃大(所員・情報理工学部 教授)
開催場所 京都産業大学 12号館12402教室+オンライン(Teams)
開催日時 2026年7月1日(水)13:00~14:30

研究会概要

世界問題研究所では、令和8年7月1日(水)に本年度第3回の定例研究会を開催した。講師として本学情報理工学部教授の荻野晃大先生をお迎えし、「人々のウェルビーイングを支援する感性AIの試み」と題して、ご講演をいただいた。

本研究会は、京都産業大学の全ての構成員に開かれた対話の機会として設けられ、多様な専門をもつ教職員のみならず、学生の方にもご参加をいただいた。

荻野先生は、情報工学をご専門とするが、「人々のウェルビーイング」に着目し、人間の生活における幸福の質をより高めるために科学技術を活用することを目的として研究を実施しておられる。

例えば、私たちは街歩きをするさい、ナビアプリで最短ルートを勧められたり、口コミサイトで高評価の場所を推薦されたりすることがある。しかし、疲れている時には、最短ルートよりも、遠くても休憩できる道の方を選びたくなることもある。人間は、いつも効率性だけを求めているわけではなく、そのため、人間の生活を支援するシステムも、「便利さ」だけを追求するのでは限界がある。この限界を超えるために、人に寄り添う感性AIを効果的に活用することができるのではないか、というのが荻野先生のご提案である。

感性AIを実現するための仕組みとして、荻野先生によれば、2つの要素が重要な役割を果たす。第一は生成AIを用いた「感性のデジタルツイン」である。これはその人の好みや過去の体験を記録し、「どんな時に疲れやすいか」「何に納得しやすいか」といった、その人らしい感じ方を表すモデルである。第二は人の脳の仕組みをモデル化した「能動的推論」である。これは、心拍や発話量、移動距離などから見えない「心の状態」を推定する仕組みである。これにより、現在の心の状態に適した休憩の提案や経路変更などの支援方法を選ぶことができる。実際に京都駅から東寺までの約2kmを歩く実証実験も行われ、その成果も披露された。その一方で、デジタルツインの仕組み上、どうしても利用者本人の好みに近似した提案が多くなり、新しい発見の支援という観点においては感性AIには課題もあるとのことであった。

本研究は、AIが万人共通の正解を押しつけるのではなく、一人ひとりの感じ方の違いに寄り添いながら支援する、新しいAIのあり方を模索する試みである。ご講演後には、多数の質問が出され、活発な質疑応答がなされた。荻野先生にはどの質問にも丁寧にお答えいただき、身近な観点からAIの発展を理解することのできる非常に有益かつ貴重な時間となった。ご講演いただいた荻野先生には心から感謝申し上げたい。

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報告中の荻野教授

質疑応答の様子