設立にあたって

ことばの科学研究センターは、2020年(令和2)年4月1日に総合学術研究所に設置されました。

本研究センターの目的は、ことばに関わる問題に取り組んでいる本学の研究者を結集し、また学外の研究者の協力を得て、日本語を含む世界のことばに関する諸問題を研究し、多元的な研究を展開しながら、ことばの科学の新たな可能性を追求することにあります。

世界には文字を持つ言語と文字を持たない言語があります。言語に文字があれば、通常その言語で書かれた文献記録があり、他方、文字のない言語には文献記録がありません。(ただ他言語話者がその文字で何らかを書き留めることはあります)。
言語の通時的研究は、過去の文献を持つ言語では行いやすいが、文字がなく文献のない言語でも実行可能です。それは、現時点での共時的記述を行い、記述対象言語と同系統に属する諸言語との比較研究によって言語の歴史を再構成することができるからです。
世界には文字のない言語が多く、むしろこのようなやり方を取らざるをえない場合が多くあります。通時的研究としては、文献のある印欧比較言語学や漢語の歴史的研究などが進んでいるが、文字がなく文献のない言語の通時的研究との共通性と相違点を認識し、両者の協同による総合的研究が期待されます。このような立場からの体系的な研究はまだ行われていません。

同時に、言語の共時的記述が研究の基盤であるため、個別言語の語彙、文法、テキストの地道で緻密な研究が必要となります。さらに、研究において重要な役割を果たすテキスト理解のために、文学、歴史学などとの協同も必要です。
また、人間の言語産出と理解、およびこれらの獲得に関するメカニズムの理解を目指す研究を進めることも、本研究センターの大きな特徴のひとつです。

世界には、印欧語族、シナ・チベット語族、オーストロネシア語族、ニジェール・コンゴ語族など幾つもの語族が存在し、それらに含まれる諸言語は同族としての一般的な共通性を保ちつつも、類型論的構造や歴史が異なっています。したがって、共同研究においては、それぞれの研究者が取り組んでいる言語の構造的特徴を明らかにしたうえで、その研究法を提示することからはじめます。そして、それが他言語の研究にどういう意味を持つかを考察し、その研究法の新たな発展の可能性を探ります。さらに、系統の異なる、あるいは同系統であっても構造の異なるさまざまな言語の研究において、その共時的研究のみならず通時的研究においても、研究方法がどの点で共通し、どの点で異なるかを明らかにします。さらに、研究に不可欠なさまざまなテキストの価値、有効性なども明らかにします。

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