川上 雅弘

KAWAKAMI MASAHIRO
生命科学部 産業生命科学科 准教授
学位
博士(農学)
専門分野
科学コミュニケーション、科学教育、生命倫理、動物発生工学

研究テーマ

生命科学と社会をむすぶサイエンスコミュニケーション

高校生に向けた研究内容の紹介

再生医療、iPS細胞、クローン技術、遺伝子検査、ゲノム編集など、生命科学に関わるニュースが日々溢れています。本研究室では、実験研究の経験・知識を強みに生命科学の社会的・文化的側面に着目し、科学コミュニケーション、科学教育、研究ガバナンスの研究を進めています。生命科学リテラシーの向上は、先進的な医療技術や食品の普及に欠かせない要素ですし、生命科学から生まれる新技術や科学政策に一般の人の意見を取り込むことでより良い科学研究が生まれます。

生命科学の先端技術を社会の視点から研究し 世の中に分かりやすく伝える

科学コミュニケーションとは、科学のおもしろさや科学技術をめぐる課題を人々へ伝え、ともに考えることを目指した活動です。私は生命科学、特に幹細胞やゲノム編集技術などをテーマに科学コミュニケーションについて研究しています。
ゲノム編集技術を用いると、受精卵のDNAを書き換えて遺伝子の働きを意図的に変えることができます。ゲノム編集の理論や遺伝子組換え技術との相違点といった知識を専門家以外の人々も理解し、「病気治療のためにゲノム編集をヒト受精卵に実施して良いか」といった問題を社会全体で考えることは大切です。一方で、生命倫理や個人の価値観が関わる問題について話し合うことは簡単ではありません。そこで私は、生命科学についての議論を促すカードや先端技術を学べるすごろくゲームなどを制作し、それらをワークショップなどで活用して、いろいろな人が議論できる場を創造しています。
また、生命科学の技術を医療や食品などさまざまな分野に応用・活用していく際には、倫理的・法的・社会的課題が生まれます。ELSIと呼ばれるそれらの課題について、研究者へのインタビューや各種審議会の議事録をもとに研究を進めています。
これらの研究の面白さは、多彩な人と関わりつつ最先端技術を学べる点です。学部で修得できる生命科学の知識と研究室で学ぶ科学コミュニケーションの取り組みは、今後、多彩なフィールドでますます求められるでしょう。学生の皆さんには身に付けた力を生かし、ライフサイエンスに関わる産業の担い手や科学ジャーナリストとして活躍してほしいと願っています。

※エルシー。倫理的・法的・社会的課題(Ethical, Legal and Social Issues)の頭文字

ゼミナール/研究室のテーマ


生命科学と社会をむすぶ サイエンスコミュニケーションの研究

iPS細胞やゲノム編集といった生命科学の革新技術は、生 命現象の理解を進めると同時に、ヒトの生殖細胞作出や受 精卵の遺伝子操作への懸念といった社会的課題もうみだ します。発展する生命科学の社会的・文化的側面に着目し、 社会との情報共有や議論の在り方を検討します。

ゼミ/卒業研究の紹介

生命科学の営みは、生命現象の理解に留まらず医療技術や食物生産など社会・産業に繋がっています。また新たな生命観や社会的課題をうみだすこともあります。ゼミでは「サイエンスコミュニケーション」「研究ガバナンス」「科学教育」をキーワードに生命科学を社会の視点から研究します。生命科学と社会学の境界が研究フィールドになり、文理複合的な学びや視点を得ることで、社会の奥行や面白さを感じる日々を過ごせるようになるでしょう。

プロフィール

奈良で育ち今も奈良から通っています。学生の頃はバスケやテニスなど運動部で汗を流しました。生き物が好きだったので農学部に進み、大学院では体細胞クローン動物の作出研究を行いました。このとき実験研究の面白さと同時に、生命倫理や科学技術の進展から生まれる社会課題を研究する重要性を感じ、大学院修了後に文科系に転じました。生命科学から生まれる新しい技術や概念を社会と共有し、そのあり方を考えていきたいと思っています。最近は燻製作りにもハマっています。

高校生へのメッセージ

30年前、私は受験生でした。その頃、大学で仕事をする人になろうと考えたことは無く、大学に進むときも志望した学部学科に入れず、すべり止めの学科に進学しました。理系学部の学生だったので大学院に進学することは何となく決めていたものの、研究の面白さがよく分からず、でも研究室に入ったら研究は楽しかった。30年前に希望した進路にはなっていないけど、受験生に戻ってやり直したいと思ったことはありません。人生ってこんなもの?!