黒坂 光

KUROSAKA AKIRA
生命科学部 先端生命科学科 教授
学位
薬学博士
専門分野
生化学

研究テーマ

神経特異的な糖鎖の合成反応と、糖鎖の機能解析

高校生に向けた研究内容の紹介

タンパク質への糖鎖の付加は、主要な翻訳後修飾反応の一つであり、付加された糖鎖は細胞間の接着や認識などに重要な働きをします。糖鎖の構造は、糖とタンパク質の結合様式によっていくつかのタイプに分類されますが私たちはタンパク質中のセリン、トレオニン残基のヒドロキシル基との間に形成されるO-グリコシド型結合(GalNAcα1→Ser/Thr)に注目して、それらの主に脳における機能を解析しています。GalNAcα1→Ser/Thrの構造を有する糖鎖は、消化器官、呼吸器官等の上皮細胞が分泌する粘性タンパク質であるムチンに多く見られることから、ムチン型糖鎖とも呼ばれます。私たちの研究室では、O-グリコシド型糖鎖の脳における機能解析を研究の目的として、ムチン型糖鎖の生合成の開始反応は、UDP-GalNAc:polypeptide N-acetylgalactosaminyltransferase (以後GalNAc-T と略する) が触媒します。この酵素はタンパク質中のムチン型糖鎖の数と位置を決定する重要な酵素です。近年私たちは、神経特異的に発現するGalNAc-T9、およびGalNAc-T17を単離しました。GalNAc-T17は精神遅滞を伴う遺伝病であるWilliams-Beuren症候群(WBS)の欠失領域(WBS critical region)に含まれるWBSCR17遺伝子としても知られています。私たちは脳におけるムチン型糖鎖の働きを調べるために、これらの分子の生化学的な特徴、さらに脳の発生・分化における役割を、培養細胞やゼブラフィッシュを用いて解析しています。

ゼミナール/研究室のテーマ

神経発生に関わる 糖転移酵素の機能解析

タンパク質分子が機能を獲得するために大切な糖鎖の付 加反応。私たちは神経細胞にだけ起こるタンパク質への糖 付加反応を見いだし、さらにその反応を触媒する酵素がモ デル生物の胚発生において、脳、特に後脳ができる過程に 重要であることを明らかにしています。

ゼミ/卒業研究の紹介

3年生のゼミ/特別研究では、4年生の特別研究のための準備をします。学生が、興味を持つテーマに関して、主体的に文献調査などを行い、得られた成果を自分の言葉でプレゼンする能力を養います。また、十分単位を取得している学生は実験を開始します。特別研究は、横並びの授業ではありません。積極的に取り組む人は、より多くのことを吸収することができます。
4年生のゼミ/特別研究では、よりレベルの高い研究を行います。実験を中心とした研究を行い、得られた研究成果についてしっかりとした議論をします。また、いくつかの研究室合同のセミナーを開催しています。他の研究室の教授、学生と交流することができます。8月上旬、2月末には松の浦セミナーハウスにて、合宿形式で中間・卒業発表会をします。生命科学の面白さを十分に味わって卒業してください。

プロフィール

私は、大阪生まれ、大阪育ちの生粋の浪速っ子です。生まれは市内都島区、今のJR東西線大阪城北詰駅の近くです。家のすぐ裏には寝屋川があり、うす汚れた川面にはいつもガスの気泡が吹き出だしていました。そんな川に、魚が住んでいるわけはなく、魚釣りをしたことがありません。大阪市内には、田圃や畑のような田園風景はなく、子供時代に自然に触れる機会がなかったのは、未だに心残りです。
高校は、自由な校風の大阪府立市岡高校を卒業しました。大学進学の時は、実家が薬局を経営していたこともあり、京都大学で薬学を専攻しました。京都大学もまた自由な大学でした。体育、語学以外では、専門科目を含め一度たりとも出席をとられた覚えがなく、大学在籍中、勉強を強要されることはありませんでした。そのような環境の中で、みんな学生生活を楽しみ、それぞれが自分の能力を伸ばしていきました。
特別研究、大学院では生命現象を化学で解明する生化学を専攻しました。大学4年生、修士1、2年の頃に勉強した内容は、いまでも良く頭に残っており、その知識が今でも様々な問題を解決するための良き手助けとなっています。大学でしっかり勉強しなさいと学生に口うるさく言うのは、その自分自身の経験に基づいています。
関西では、商売の町、大阪で生まれ育って経済観念を身につけ、学問の町、京都で勉強し、最も洗練された街、神戸に住むのが理想だそうです。大阪で生まれた私は、京都で学んだあとで、少し方向を間違えて京都近辺の街に住んでいます。大阪市内(それも環状線の内側)で生まれ育った私にとって、子供の頃味わえなかった自然に囲まれています。最近は、庭の片隅に小さな畑をこしらえて、家庭菜園を楽しみにしています。植物は人を裏切りません。手間暇かけた野菜がそれにこたえて、成長していく様を楽しみにしています。土をいじり自然と触れることは、仕事で疲れた心と身を癒してくれます。

高校生へのメッセージ

社会に出ると、私たちはさまざまな問題に直面し、それを解決することが求められます。そのとき、どのようにものを考え、どのような行動をするかが、大切です。その時に求められる能力は、高校や大学で学んだことにしっかりと根ざしています。今、目の前の課題に真摯に取り組むことが、将来の皆さんの力となり、自信へと繋がります。誠実に努力し続けることが、成長と未来の成功につながります。
また、自分が本当に興味を持つこと、心が引かれることを見つけ、それに真剣に向き合ってみてください。新しいことに挑戦することで、必ず新たな発見や気づきがあります。それらの発見は、皆さんの世界を広げ、将来どんな道に進んでも、大きな力になります。興味があることを深く掘り下げていくことで、自分自身の強みや個性を見つけることができるはずです。そして、それが皆さんを輝かせる原動力となります。
現代は、情報がスマホやパソコンを通じて簡単に手に入る時代です。便利で有益なツールですが、だからこそ注意が必要です。画面の中で情報を追い続けるだけでは、真の理解や共感は得られません。時にはその便利な端末を手放し、周りの現実世界をしっかりと自分の目で見つめ、五感を使って感じ取ることが大切です。現実の世界には、あなたの感性を刺激するような美しい景色や、心に残る人との出会いがたくさんあります。そうした「リアルな体験」を大切にすることで、あなたの感性は磨かれ、視野は広がっていきます。
どんな時でも、自分の心を大切にし、素直に感じることを大事にしてほしいと思います。高校生の皆さんには無限の可能性が広がっていることを信じて、これからの人生を楽しみながら、成長していってください。