加藤 啓子

KATO KEIKO
生命科学部 先端生命科学科 教授
学位
医学博士
専門分野
神経科学、糖鎖生物学、実験動物学、獣医学

研究テーマ

情動記憶と代謝変化の分子メカニズム解明:神経回路発達からバイオマーカー探索まで

高校生に向けた研究内容の紹介

一夜漬けの勉強はすぐ忘れるけれど、心に響く経験は忘れないし、その記憶はその後の行動に強く影響を与えます。経験に伴う感情や記憶がどのように形成され、将来の意思決定や行動に反映されるのか、モデルマウスを使った分子レベルの研究を進めています。脳の神経回路に注目し、シアル酸修飾や代謝変化の関与を調べ、最近では、高齢者うつ・不安症やサルコペニアに特異的な尿中の匂い物質(代謝産物)を使った尿検査の開発も進めています。

ゼミナール/研究室のテーマ

心と体をつなぐ情動系神経回路のしくみ

糖タンパク質にシアル酸を付加するシアル酸転移酵素は、難治てんかんに移行しやすい「側頭葉てんかん」を発症する原因分子です。この酵素遺伝子を欠損したマウスは、うつ・不安障害を発症します。発症原因を明らかにし、臨床応用に結びつけることを目指して研究を進めています。

ゼミ/卒業研究の紹介

情動記憶や空間学習記憶に問題のあるモデルマウスの神経回路の発達の変化が何故生じるのか、原因を調べています。アデノ随伴ウイルスベクターを用いることで、原因となるシアル酸化糖タンパク質を探索したり、特別な神経回路を蛍光で可視化することで、どのように神経回路が変化していくのかを明らかにしようとしています。また、高齢者の尿で見つかった匂い物質が、体内でどのように作られるのかも解明しようとしています。

プロフィール

子供の頃「野生の王国」に心惹かれ、獣医になろうと決心し獣医の免許は取得したものの、大学院で出会った分子生物学に夢中になりました。カリフォルニア工科大学に留学し神経発生に関わる遺伝子発現機構を研究。帰国後、情動記憶に関わる神経回路について研究を始めるきっかけを得ました。大阪府立大学(現大阪公立大学)を経て京都産業大学に赴任。その間、ノースカロライナ州立大学獣医学部で基礎研究の臨床応用への手がかりを得ました。

高校生へのメッセージ

科学の世界は広大で魅力的です。様々な分野に興味を持ち、基礎知識を幅広く身につけることから始めましょう。大学では、その知識が土台になります。目の前の課題に取り組む時、新しい発見を心から楽しむ気持ちを忘れないでください。時には「失敗した」と感じる結果の中に、大きな発見のヒントが隠れています。そんな結果こそ、友達や先生と議論する価値があります。科学の醍醐味は、未知のことを解明していく過程にあります。