公益社団法人日本女医会は1902年に前田園子が設立し、吉岡彌生を初代会長とする世界で最も長い124年の歴史をもつ女性医師の会です。調査研究、医療の普及、女性医師相互の連携などを旨として活動を続けています。軽井沢セミナーは女性医師の研修と親睦をかねて毎年開催され、今年は10月17日、軽井沢プリンスホテルにて16回目が開催されました。
講師は、東あかね教授(感染症分子研究センター研究員、保健管理センター長、共通教育推進機構教授)で、テーマは「平安時代の絵巻「病草紙」と平安時代の医書「医心方」を現代医学で読み解く」です。参加者は全国各地から参集した日本女医会の会員19名でした。
医学教育において図譜は大きな役割をもっています。平安時代の絵巻「病草紙」には、肥満、奇形などの目に見える病気や不眠症など目に見えない病気に苦しむ人々が、その周囲の人々とともに生き生きと描かれています。後の鳥獣戯画にも通じるユーモアも感じられます。後白河法皇(1127-1192年)の命により、多くの絵師が描いたとされています。絵巻は分断され、現在は京都国立博物館などに所蔵されています。
その典拠は、同じ平安時代に編纂された医学書「医心方」であるといわれています。「医心方」は、中国の医学書『黄帝内経』などをもとに、鍼博士丹波康頼(911-994年)が編纂し984年に朝廷に献上したもので、国宝に指定され、京都の御室仁和寺と東京国立博物館に伝存しています。天皇家以外の人々には容易に読めない工夫が施されていたため、長い間その内容は知られていませんでした。
そこには、さまざまな病気の治療法や予防法が漢文で記されており、現代にも通じる知見が少なくありません。未病の段階において、個々人にもっとも適切な予防対策を講じる東洋医学の考え方は、これからの先制(プレシジョン)医療に通じるものがあります。
なお、日本医師会は2027年、「医心方」のユネスコ「世界の記憶」への登録を目指して活動を進めています。
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最後にこれからの医療は、東洋医学と西洋医学、それぞれの利点を生かすこと、個人の養生から自然・社会環境の健康づくりをめざすことと、締めくくられました。
参加者からは、全く知らない話であった、平安時代の医書が現存することに驚いたなどの感想が寄せられました。
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