2026.10.23

「もう一度会いたい。」フィリピンで過ごした70日間の挑戦

学部の授業以外にも活躍の場を求めて積極的に取り組む学生を紹介する本企画。

今回は、「フィリピンの貧困と児童支援ーオロンガポ市近郊の孤児院の取り組みを中心に」をテーマにフィリピンを訪問し研究を続けている、国際関係学部3年次の大西 優菜さんにお話を聞きました。

1.「国際関係」に興味を持ったきっかけを教えてください。

実は、私が国際関係という分野に興味を持ち始めたのは、大学に入ってからです。ほかの学生のように、昔から国際問題に関心があったわけではありません。
高校生のときは、幼児教育の学部に進もうと考えていました。しかし、自分の性格上、高校生の時点で将来の夢を一つに決めてしまうことに不安がありました。そこで、将来の選択肢を広く持てること、そしてグローバル化が進む社会で必要となる語学力を身につけられることに魅力を感じ、国際関係学部への進学を決めました。
大学で学び始めてから、国際関係といっても政治や経済、安全保障、貧困、教育など、さまざまな分野があることを知り、その中で自分が特に関心を持つテーマも少しずつ見えてきました。今回のフィリピンでの経験も、大学で学んできたことと実際の社会を結びつけ、自分がこれから何を学びたいのかを考える大きなきっかけになりました。

フィリピンで初めて虹を見られました🌈

2.今、注力している取り組みは何ですか?  

今回、私が挑戦したことは、自分の中に生まれた「もう一度子どもたちに会いたい」という気持ちを、実際の行動に移したことです。
2026年2月に参加したボランティアツアーで、私は初めてフィリピンの児童養護施設で暮らす子どもたちと出会いました。帰国後も、子どもたちと過ごした時間や、彼らがこれまで経験してきたことが頭から離れず、もう一度会いたい、もっと子どもたちのことを知りたいという気持ちが強くなっていきました。
しかし、当時の私は、国際問題について明確な研究テーマを持っていたわけでも、将来やりたいことが決まっていたわけでもありませんでした。そんな中、ゼミの須藤先生に相談したことをきっかけに、一枝会への応募と、ボランティアツアーを主催するNPOへの長期滞在の交渉を決意しました。受け入れていただけるか分からない不安もありましたが、自分の気持ちを伝え、必要な手続きを一つずつ進めた結果、70日間の現地調査を実現することができました。
私は、2026年7月19日から9月26日までの70日間、児童養護施設に住み込み、子どもたちと生活を共にしながら、貧困が子どもたちの生活や心理面にどのような影響を与えているのかについて調査しました。滞在中に開催されたボランティアツアーでは、運営の補助や参加者の案内を担当しました。前回の活動で得た経験や学びを生かし、今回は参加者を支えるインストラクター的な役割も担うことで、自身の学びをさらに深めるとともに、これまでの経験を他者に還元することを目指しました。
今回の挑戦は、単に海外で長期間活動したことだけではありません。自分の気持ちを出発点に、実現するための方法を自分で考え、周囲の方々に相談しながら、一歩ずつ形にしていったことです。
私はもともと、将来の選択肢を一つに決めてしまうことに不安を感じる性格でした。しかし今回、最初から明確な答えがなくても、興味を持ったことに飛び込んでみることで、新たな学びや関心に出会えることを実感しました。子どもたちにもう一度会いたいという気持ちから始まった行動が、自分の学びを深め、これからの生き方を考えるきっかけになったことは、私にとって大きな経験です。

19歳の子と二人だけで料理を完成させた記念写真

3.その取り組みに参加(応募)したきっかけ・動機を教えてください。

きっかけは、ゼミの担当教員である須藤先生に提案していただいたことです。
2月のボランティアツアーから帰国した直後、私は興奮が冷めやらないまま、須藤先生に現地での経験を聞いていただきました。児童養護施設の子どもたちが経験してきたことを知って、自分でも驚くほど感情が動いたこと、そして、自分の人生の中で忘れられない2週間になったことを、うまく整理できないまま話しました。
先生は、そんな私の話を一つひとつ受け止めてくださいました。そして、私の「もう一度子どもたちに会いたい」という気持ちを聞き、休学して現地に行く方法と、一枝会に応募する方法の二つを提案してくださいました。
一枝会の存在は、大学1年生のときに先輩方の経験を聞く機会があり、知っていました。しかし、当時は自分が実際に参加するとは考えていませんでした。先生の提案を受けて初めて、もう一度現地に行くための具体的な選択肢として、一枝会への応募を考えるようになりました。
その後、ボランティアツアーを主催していたNPOに、長期のボランティアとして受け入れていただけないか自分から交渉すると同時に、一枝会に提出する志望理由書の作成にも取り組みました。どちらも結果が出るまで不安でしたが、無事に両方の受け入れが決まり、今回の現地調査を実現することができました。
振り返ると、最初から明確な研究テーマや将来の目標があったわけではありません。子どもたちにもう一度会いたいという気持ちが出発点でした。しかし、その気持ちを行動に移し、実際に70日間現地で生活したことで、子どもたちとの関わりを通して何を学びたいのか、そして自分に何ができるのかを、少しずつ具体的に考えられるようになりました。

毎日学校に行く子どもたちのためにお弁当を用意します

4.参加して、ご自身にとってプラス(成長)につながったこと、気づきは?

今回の現地調査を通して、国際問題を統計やニュースだけで捉えるのではなく、現地で暮らす人々の生活や価値観に目を向けて考えることの重要性を学びました。
貧困地域を訪れ、児童養護施設で子どもたちと生活する中で、貧困は経済的な問題だけではなく、教育機会や心理的な安定、人との関係性にも影響を及ぼしていることを実感しました。ニュースや授業で知識として理解していた貧困が、実際にそこで暮らす一人ひとりの生活や経験と結びつき、自分にとってより身近な問題になりました。
また、支援とは、物資や資金を提供することだけではないと気づきました。もちろん、生活や教育を支えるための物質的・経済的な支援は必要です。一方で、相手がどのような背景を持ち、何を感じているのかを理解し、一人ひとりと向き合うことも大切だと感じました。
70日間、子どもたちやスタッフと生活を共にしたからこそ、短い交流だけでは見えにくい日常の姿や、人と人との関係が少しずつ築かれていく過程を知ることができました。その中で、相手を自分の価値観だけで判断するのではなく、相手の背景を知ろうとし、時間をかけて理解していく姿勢が身についたと感じています。
そして、今回の経験を通して、支援する側と支援される側という関係だけでは捉えきれない、人と人とのつながりの大切さも学びました。私は子どもたちのために何かをしたいと思って現地に向かいましたが、実際には、子どもたちとの生活から私自身も多くのことを教えてもらいました。支援することは一方的に何かを与えることではなく、相手と向き合う中で、自分自身も学び、考え続けることなのだと思います。

コンビーフと卵の炒め物の朝ごはん
パンケーキは合計で70枚ほど焼きます

5.国際問題を考えるうえで、普段から心がけていることはなんですか?

国際問題について考える際には、ニュースで報じられる出来事だけで判断せず、その背景にある歴史や政治、経済、文化などにも目を向けるようにしています。また、一つの国や立場からの見方だけでなく、異なる立場にいる人々がどのように考えているのかを意識することも大切にしています。
今回のフィリピンでの経験を通して、同じ国の中でも、一人ひとりの生活環境や考え方は異なり、外から見ただけではわからない現実があることを学びました。例えば、貧困という言葉から生活の厳しさを想像することはできますが、その中で暮らす人々が何を大切にし、どのような思いを抱えて生活しているのかは、言葉や数字だけでは十分に理解できません。
だからこそ、目の前の情報だけでわかったつもりにならず、その情報がどのような背景から生まれたのか、誰の立場から伝えられているのかを考えるようにしています。そして、現地で暮らす人々の声や実際の状況にも目を向けながら、できるだけ多角的に物事を捉えることを心がけています。

1人でフィッシュボールを30人前揚げました
子どもたちが分担して料理のお手伝いをしている様子

6.今の活動をとおして、今後の抱負、また将来に繋がること・繋げたいことは?

今回の経験を通して、私は、関心を持ったことを実際に行動に移し、自分の目で確かめることの大切さを学びました。大学に入る前は、将来何をしたいのか明確に決まっていませんでしたが、今回の経験は、自分が何に心を動かされ、どのようなことに時間を使いたいのかを考えるきっかけになりました。
今後は、大学での学びを深めながら、自分が現地で見たことや感じたことを周囲に伝えていきたいです。また、今回の経験を通して生まれた関心を、将来どのような仕事に就くとしても大切にしていきたいと考えています。
そして、フィリピンで出会った子どもたちとのつながりも、これから先も大切にしていきたいです。離れていても相手を気にかけ、自分にできることを考え続ける。今回の70日間を特別な思い出だけで終わらせず、自分の選択や行動のあり方につなげていきたいです。

学校の制服を自分で洗濯しているところ

7.国際関係を学ぶ学生(興味を持っている高校生)のみなさんへ一言

私自身、大学に入る前から国際問題に強い関心があったわけではありません。しかし、大学で学び、実際に海外へ行って現地の人々と関わることで、授業やニュースで知っていた世界の出来事を、より身近なものとして捉えられるようになりました。教室で学んだ知識が、実際の人々の暮らしや経験と結びついたことで、それまで見えていなかった問題や、新たな関心に気づくことができました。
今回のフィリピンでの経験も、最初から明確な目標があったわけではなく、子どもたちにもう一度会いたいという気持ちからその気持ちを行動に移したことで、70日間の現地調査につながり、自分がこれから何を学び、何をしていきたいのかを考えるきっかけになりました。
海外へ行くことや、新しいことに挑戦することには、不安もあると思います。私自身も、大学生活や将来のことを考えながら、長期間海外へ行くことを迷わなかったわけではありません。それでも、実際に一歩踏み出したことで、行く前には想像していなかった出会いや学びがありました。
最初から大きな目標や明確な夢がなくても、少しでも気になることがあれば、その気持ちを大切にして、まずは行動してみてほしいです。実際に経験することで、自分の価値観が広がり、これまで当たり前だと思っていたことを見つめ直すきっかけにもなると思います。

日本に帰ってくるまでに子どもたちやスタッフからもらったすべてのギフト