2026.10.09

「国際キャリア開発リサーチB:マレーシア」実習レポート

私たちが参加した「国際キャリア開発リサーチB:マレーシア」(CDR-B)は、マレーシア北西部の多様な文化が息づく社会に身を置き、地域住民の共生の在り方や環境NGOの活動を現地で体感するためのプログラムです。事前学習として、現地の社会・環境問題やリスク管理、フィールドワークの受け入れ団体について綿密に準備を重ねた上で、8月下旬から9月上旬にかけて現地実習に臨みました。 現地では、ペナン州の世界遺産都市ジョージタウンでの多文化・歴史調査をはじめ、本土の農村部での2泊3日のホームステイ、マレーシア科学大学(USM)の学生との交流、さらにはペラ州などでの環境保全NGOの活動見学や先住民族の村の訪問など、多岐にわたるステージを通じて濃密な学びを得ることができました。

(国際関係学部 2年次 轡田 晏)

ジョージタウンでの文化学習と多文化共生の現実(ペナン州)

渡航後最初のステージとして訪れたペナン島のジョージタウンでは、モスクや仏教寺院、ヒンドゥー教会が隣接して立ち並び、多言語の看板が混ざり合う独特の街並みから、多民族・多宗教が共生する社会の成り立ちを肌で感じました。 現地住民の方々へのインタビューでは、全員が「お互いの宗教や文化を尊重し、平和に共生できている」と口を揃えました。しかし、指導講師であるGareth Richards氏からの「現在のマレーシアの状況は、真の共生(Coexistence)というより、それぞれが一線を引いて平行線をたどる『分離・セパレート(Separation)』に近いのではないか」というクリティカルな指摘に触れ、私の視点は大きく揺さぶられました。単に表面上の衝突がない状態を「共生が成り立っている」と安易に捉えるのではなく、教育制度や居住地域の構造的背景にまで目を向け、真の相互理解や協働の本質を見極めることの重要性を強く認識しました。

多文化が息づく街、ジョージタウンのショップハウス

ホームステイ体験、USMとの交流、およびPIFWAでの環境保全活動

ジョージタウンでの学習に続き、マレーシア本土の農村部では2泊3日のホームステイを経験しました。ホストファミリーと過ごす中では英語が伝わらず言葉の壁にぶつかることもありましたが、ボディランゲージや表情を交えながら心を通わせ、温かな関係を築くことができました。村の暮らしに触れる中で、都市部のような便利な娯楽がなくても人々が笑顔で豊かに暮らしている姿を見て、私たちが日常で「当たり前」だと思っている豊かさや幸福のあり方について深く考えさせられました。

ホームステイ中の朝食風景 手作りのロティ・チャナイ

また、マレーシア科学大学(USM)の学生との文化交流では、民族衣装や伝統舞踊、ボードゲームなどを通じて相互理解を深めました。さらに、マングローブ林の保全活動に取り組むNGO「PIFWA」(および女性グループPIFWANITA)の訪問では、現地での見学やインタビューを通じて、環境保護の重要性を実感したと同時に、活動を継続するための資金不足や受け入れキャパシティの限界といった「NGO運営の難しさ」に直面しました。外部から支援を行う際には、単に人手だけでなく、現地が本当に必要としている資金的・持続的な支援のあり方を考えるべきだと痛感しました。

雷被害を受けたマングローブの再植林に取り組むPIFWAの現場見学

先住民族オラン・アスリの村での学びと全体を通じた考察

実習の後半には、オラン・アスリの村を訪問し、先住民族の人々の生活や自然との関わりについて学びました。 山に自生する植物から薬を得て、病院に頼らずとも健康に暮らしているという生活の知恵に触れ、自然環境が単なる保護の対象にとどまらず、人々の生活や健康そのものを支えている基盤であると実感しました。 今回の現地実習全体を通して、国際協力や異文化理解においては、外部の人間が一方的に「助けてあげる」という視点ではなく、現地の人々が何を大切にし、何を必要としているのかに真摯に耳を傾ける姿勢が不可欠であると学びました。教室の机に向かっているだけでは決して分からない現地のリアルな課題や人々の温かさに触れたこの貴重な経験を、今後の大学での学びや将来の進路へと確実に活かしていきたいと思います。

オラン・アスリの村での森の散策と現地の子どもたちとの交流