2026.09.02

文化学部 中野 教授のイタリア・フィレンツェでの対話(1) フィレンツェ市の持続可能な観光戦略と文化都市の価値創造

文化学部 中野 宏幸 教授は、8月27日、イタリアのフィレンツェにおいて、デスティネーション・フローレンス財団(Fondazione Destination Florence)の総局長(General Manager)のカルロッタ・フェラーリ氏と、フィレンツェと京都の観光戦略について意見交換を行いました。中野教授は、フィレンツェで開催された第10回持続可能な観光マネジメント国際学会(ICSTM2026)への参加・研究発表の機会を活用して、訪問したものです。

フィレンツェはイタリア中部トスカーナ州の州都であり、ルネサンス文化発祥の地として知られています。アルノ川の流れに育まれた美しい都市景観の中に、長い歴史のなかで、豊かな芸術と文化が息づく世界文化都市です。歴史地区には歴史的建造物や文化遺産が集積し、その優れた景観と文化的価値は世界からの訪問者を魅了しています。

ICSTM2026において、研究発表セッションの座長を務めたル・アーブル大学のアトゥール・タギプール教授と意見交換する中野教授

フィレンツェ市と京都市は1965年に姉妹都市提携を結んでおり、2025年には提携60周年を記念する式典や交流事業が両市において開催されています。フィレンツェ市と関係機関の連携の下に設立された財団は、市やトスカーナ州、文化・観光関係団体等と協働しながら、市の戦略に基づいてMICE(※)の誘致、観光商品の開発、観光データの分析などに取り組んでいます。また、文化遺産の保全と観光振興との調和を図りながら、持続可能な観光地域づくりを推進しています。今回は、地域の特色、観光政策の推進体制及び文化都市としての魅力発信の取組について意見交換を行いました。

2025年6月に姉妹都市60周年記念式典が行われた市庁舎(パラッツォ・ヴェッキオ(Palazzo Vecchio))と
観光客でにぎわうシニョリーア広場周辺(中野教授撮影)

フィレンツェ市では、都市としての将来像や市民生活のあり方を明確にし、公共空間の質の向上やマナー・ルールの遵守を重視しながら、住民と訪問者の双方にとって魅力ある都市環境の形成を目指しています。また、都市のブランド価値の向上にも取り組み、国際的な文化・観光都市としての発信力の強化を図っています。このため、観光需要の平準化を図るための質の高いイベントの開催、海外大学との連携による国際交流の促進、観光拠点の魅力向上に向けた取組などを進めるとともに、観光と市民生活の調和を重視した持続可能な観光政策を推進しています。

Via Kyoto(京都通り)の銘板と閑静な住宅街(中野教授撮影)

京都紫明ライオンズクラブとフィレンツェライオンズクラブの姉妹クラブ提携50周年を記念してフィレンツェ市に寄贈され、2019年7月にオルトクルトゥーラ公園に設置されたピノッキオ像(中野教授撮影)

2008年4月に友好協定を締結した京都錦市場商店街との交流を紹介するサン・ロレンツォ中央市場のショーウィンドウ(中野教授撮影)

1968年1月、姉妹都市提携を記念してフィレンツェ市近郊の通りが「Via Kyoto(京都通り)」と命名され、京都市から同市へ銘板が贈呈されました。今回、この通りの近隣にお住まいの方々にインタビューを行ったところ、京都を訪れた際の思い出を生き生きと語られる姿に接しました。また、「Via Kyoto」という名称に誇りを持ち、この通りを地域の大切な財産として受け止めておられることが印象に残りました。「Via Kyoto」という名称は、人々の日常に溶け込みながら、半世紀以上にわたって交流の記憶を育み、相互理解と親近感を深めてきています。

今回のフィレンツェ訪問を通じて、市民レベルから政策レベルまで積み重ねられてきた交流が、都市間の信頼と友情を支える礎となり、その絆を未来へと受け継いでいく力となっていると強く感じました。

※)MICE 企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字で、多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントなどの総称。