2026.08.03

講談で学ぶ!三井高利と江戸商人の挑戦

講談を通して江戸時代の商業について語る玉田 玉秀斎 氏

経済学部「日本経済史A」(担当教員:井奥 成彦 非常勤講師)は、日本経済の源流の1つとされる江戸時代に着目し、当時の経済や商業の発展を通して現代社会や今後の日本経済について考えます。今回の授業では上方講談師の玉田 玉秀斎 氏をお招きした特別授業が行われました。授業では、近代的な商法の礎を築いた三井高利の生涯を題材にした講談が披露され、学生たちは迫力ある語りを通して江戸時代の商業や経済の発展について理解を深めました。

(学生ライター 法学部4年次 山川 諒大)

講師を務めた玉田 玉秀斎 氏は、幕末の京都を拠点に活動した講釈師・玉田 永教の流れをくむ玉田家の四代目として活躍されています。講談は落語と混同されることもありますが、異なるものです。講談では演者が高座に置かれた釈台という小さな机の前に座り、張り扇でそれをたたいて修羅場(しゅらば)の名調子を見せながら、歴史にちなんだ物語を語る日本の伝統芸能です。講談はところどころに創作要素も組み込まれており、聴衆を飽きさせません。「講談」という言葉から出版社の講談社を連想する人もいるかもしれません。講談社の社名は、1911年に創刊された雑誌『講談倶楽部』に由来しています。
授業が始まると、玉田氏は張り扇を打ち鳴らしながら軽快な語りで学生たちを講談の世界へ引き込みました。今回取り上げられたのは、「現金安値掛け値なし」の商法を生み出し、現在の定価販売の原型を築いたとされる三井 高利の生涯です。

講談内容

講談では、江戸時代、伊勢国松坂(現在の三重県松阪市)の商家に生まれた三井 高利の半生が描かれました。三井家の末子であった高利は、若い頃から商いに触れながら育ち、「商いは仏と一緒」という教えを胸に刻みます。この教えは、人々の役に立つことこそが商売の本質であるという考え方を示していました。
18歳で江戸へ渡った高利は商才を発揮しますが、独立を望んでも兄から認められず、その志を果たすことはできませんでした。しかし、52歳になった高利は自らの理想を実現する機会を得ます。そして江戸に店を構え、従来の商習慣を大きく変える新たな商法を始めました。

手ぬぐいで反物を表現する玉田氏

それまで呉服商の主な顧客は武士階級でしたが、高利は農民や町人など幅広い庶民を対象に商売を行います。また、武家屋敷に出向いて販売する従来の方法ではなく、店に来た客に欲しい分だけ販売する方式を採用しました。さらに掛け売りではなく現金決済とすることで「現金安値掛け値なし」という画期的な商法を確立しました。これは現在の小売業にも通じる販売方法として知られています。


物語の中では、新しい商売を快く思わない同業者による妨害や、それを救う「新さん」の登場など、講談ならではの創作的な演出も盛り込まれました。そして最後には、その新さんの正体が明かされ、会場は大いに盛り上がりました。
玉田氏は、張り扇の音や表情豊かな語り口を用いて、三井 高利の人生を臨場感たっぷりに表現しました。学生たちは歴史上の人物をより身近に感じながら、日本経済史への理解を深めていました。

今回の講談授業を通して、教科書では数行で語られることの多い三井 高利の人生や、その背景にある商業の発展について深く学ぶことができました。