2026.07.28

法学部新規科目『AI・デジタルと法』について取材しました!

授業担当の法学部 來住南 桃 助教

法学部の専門教育科目「AI・デジタルと法」(担当:來住南 桃 助教)は、AIやデジタル技術の急速な発展が従来の法制度に与える影響を、具体的な事例を通して考える授業です。今回は、第10回「自動運転と法」の授業を取材しました。

(学生ライター 法学部3年次 笹山 美咲)

「AI・デジタルと法」の授業概要

2026年度に新たに開講された本講義では、全14回を通じてテクノロジーと法の関係を扱っています。プライバシーという法概念の成り立ちと現代的な課題、AI技術の仕組みとそこに潜むバイアスの問題、EU・アメリカ・日本のAI規制の比較、検索サービスやSNSといったデジタルプラットフォームへの規制、ロボット、自動運転、刑事司法における科学的捜査やサイバー犯罪、そして生殖補助医療やフェムテックといった医療・健康分野まで、現在わたしたちの社会を急速に変化させているデジタル技術と、それが用いられる場面・領域を幅広く取り上げます。そのうえで、それぞれについてどのような法的課題が生じているのか、そしてどのような法的解決が求められるのかを検討していきます。講義内で取り扱う技術は多岐にわたりますが、いずれも、「自律的な「人間」が判断し、行為し、その結果に責任を負う」という近代法の前提が、AIなどの自動的に判断するシステムにおいてなお通用可能なのか、という共通の問いでつながっています。
各回の冒頭では、ウォームアップとして、実際にAIサービスを使ってみたり、授業に関連するニュースを紹介したりして、AI・デジタル技術を身近に感じてもらいながら、その社会的な影響についても考えるきっかけになるような取り組みがされています。

AI・自動運転の現状とは?

授業は、AIの最新動向の紹介から始まりました。生成AI「Claude」を開発するAnthropic社が、高い性能と安全性を兼ね備えた新モデル「Fable 5」を発表したものの、安全保障上の理由から米国政府の規制を受けて提供が停止されたことが紹介され(授業実施時点。その後、規制解除を受けて7月に提供が再開されました)、高度なAI技術の扱いをめぐる問題が大きな注目を集めていることが説明されました。
続いて自動運転に関する世界の動向について学びました。代表的な例である無人タクシー「ロボタクシー」は、アメリカでWaymoやZooxなどの企業が実証を進めており、中国でも商用運行に向けた展開が進んでいます。欧州では法規制や道路事情の影響から導入が遅れていましたが、2026年度に入り進展が見られるようになりました。一方、日本はまだ実証実験の段階にあります。2026年3月にはWaymoがタクシー配車サービス「GO」や日本交通と連携した実証を発表しましたが、現在はバスや地域公共交通での活用が中心です。国は、まず商用車で技術の高度化を進め、その後、自家用車へ段階的に展開していく方針を示しています。

自動運転に期待されること

自動運転には大きく2つの期待があります。
1つは交通事故の削減です。交通事故の多くは、わき見運転や確認不足などの人的要因によって発生しており、人間のように疲労しない自動運転車によって、こうしたヒューマンエラーの軽減が期待されています。もう1つは人手不足への対応です。2030年にはトラックドライバー不足が深刻化することが見込まれているほか、過疎地では運転手不足により公共交通の維持が困難な地域もあります。そのため、自動運転は物流や地域交通を支える技術として期待されています。
一方で、すでに自動運転車による人身事故も発生しているように、自動運転車においては事故を完全に防ぐことは困難です。そのため、事故発生時の責任の所在や被害者救済のあり方、さらには事故防止の仕組みをどのように構築するかが重要な課題となっています。

図を用いながら解説する授業の様子

自動運転の分類と規制

自動運転は、レベル0からレベル5までの6段階に分類されます。大きな分岐点はレベル2とレベル3の間にあり、レベル2までは人間による監視が前提ですが、レベル3以降はシステムが主体となって運転を担います。
特にレベル4は、ODD(運行設計領域)と呼ばれる特定条件下において人の介入が不要となる高度な自動運転であり、Waymoなどが実用化を進めています。
日本では法改正によりレベル4までの運行が可能となりましたが、実際の運用には道路運送車両法や道路交通法などに基づく複数の許可や車両ごとの個別検査が必要です。そのため、実装には時間とコストがかかるという課題があることが説明されました。

自動運転と関係者

自動運転には、開発者、運行事業者、保険会社、国や自治体、そして事故が発生した場合の被害者・遺族など、多様な関係者(ステークホルダー)が関わります。それぞれが異なる役割と責任を持つため、制度設計は極めて複雑になります。
現在、交通事故が発生した場合には、民事・刑事・行政の各側面から主に運転者の責任が問われます。しかし、自動運転では運転者が不在となるケースも想定されるため、従来の枠組みでは対応しきれない可能性があります。そのため、既存の制度を応用するのか、それとも新たな制度を構築するのかが重要な論点となっていることが説明されました。


今回の授業を通じて、自動運転は単なる技術の問題ではなく、多くの関係者が関わる複雑な問題であることがわかりました。特に、事故が発生した際に「誰がどのように責任を負うべきなのか」という問題は簡単には答えが出せるものではないと感じました。これまでの法制度をどこまで応用できるのか、あるいは新しい制度が必要になるのか検討していくことが、これからの社会が向き合うべき課題だと感じました。


「AI・デジタルと法」を担当している來住南助教は、2026年4月に本学法学部に着任し、新領域法学を専門としています。この授業では、ほかにもプライバシーやAI、ロボット、医療技術など幅広いテーマを扱い、AIやデジタル技術の発展に伴って生じる法的課題について学びます。
興味のある方は、ぜひ受講してみてはいかがでしょうか。