2026.07.28

国際協力を「仕事にする」とは何か―海外大学院で学ぶ先輩が語る、国際協力のリアル

「国際協力実務論Ⅰ」(担当:三田貴教授)において、ジュネーブ大学大学院(環境科学)在籍の林貫太郎氏による、「国際協力を『仕事にする』とは何か―現場と進学の選択から考えるキャリア形成―」と題した講演会を開催しました。

(学生ライター 国際関係学部3年次 竹内颯弥)

林氏は本学外国語学部国際関係学科(現国際関係学部)を卒業され、在学中にはオーストラリアでの海外フィールドリサーチ、タイ短期留学などを経験されました。卒業後はJICA海外協力隊としてのチュニジアでの活動や、在コートジボワール日本国大使館での在外公館派遣員としての勤務を経験され、現在はジュネーブ大学大学院(環境科学)に在籍し、国際的な視点から環境問題と持続可能な社会の在り方について研究されています。講演会はスイスに滞在する林氏と教室とをオンラインで繋ぎ、林氏が国際協力をどのようにキャリアとして展開してきたかについてお話を伺いました。

三田貴教授による本講演会の概要説明

国際協力との出会いと学生としての学び

林氏が国際協力分野に関心を持ったきっかけは、本学在学中のタイ留学での出来事にあるといいます。首長族の観光村を訪問した際に同民族が観光資源として消費されている状況に違和感を覚え、自分に何かできることがないか考えを巡らせたそうです。卒業論文ではウイグル民族を事例に、国際社会の「保護する責任」がなぜ機能不全に陥ってしまうのかを多方面から分析されました。また、JICA海外協力隊を軸に就職活動を進め、採用が決まると環境教育という職務領域について理解を深めるため、民間団体による海外渡航支援金を活用しパラオを訪問。サンゴ礁の保護を行うNGOや廃棄物処理施設で働く日本人に取材をされるなど、自主的にフィールドワークに励まれたそうです。

受講する学生の様子

JICA協力隊員・在外公館派遣員としての経験

本学卒業後、JICA海外協力隊員として派遣されたチュニジアでは、現地のごみ処理に関する課題などに取り組むNGOの一員として既存の事業の運営や新規事業の立ち上げに携わられました。しかし、現地の自治体と連帯した事業を企画していた際、現地のあらゆる課題もあり、国際協力の難しさを感じたといいます。また、同国での経験を通して、JICA海外協力隊の役割は課題について考えるきっかけを作ることにあると認識されたそうです。JICA海外協力隊としての活動の後、林氏は在外公館派遣員として在コートジボワール日本国大使館で勤務されました。在外公館派遣員制度とは日本国籍を持つ青年を世界各国の大使館や総領事館などに派遣する制度であり、派遣者は来訪者の出迎えや広報活動などの後方支援業務を行います。中でも、国際会議での座席の順序などの国際儀典(プロトコル)について学んだことは、その後につながる経験となったと振り返ります。このような協力隊員としての現場レベルの活動と派遣員としての外交の最前線での職務を経験し、林氏はこれまで学んできた環境分野の理解を更に深め、キャリアの可能性を広げたいと考え大学院進学を決めたそうです。

チュニジアでの協力隊員時代の林氏(右端)【写真提供:林貫太郎氏】

大学院生としての現在の生活

林氏は、国際機関が集積する都市に位置し、チュニジアやコートジボワールでも使用したフランス語と英語を使用できる環境があり、更には学際的な授業が展開される点に魅力を感じ、ジュネーブ大学大学院へ進学されました。同院では気候変動について国際法や気象・気候学、環境倫理といった様々な分野から分析をされています。その際にも、本学在学中に分野に偏りなく授業を幅広く履修していた経験が、多角的な研究の基礎となっているといいます。また、現在は大学院修了後のキャリアプランについても考えを巡らせているそうです。

林氏が学ぶジュネーブ大学キャンパス【写真提供:林貫太郎氏】
三田貴教授(左)と林貫太郎氏

後輩へのアドバイス

林氏は、これまで受けた印象的なアドバイスとして、「専門性を3つ以上持っておくこと」「目上の人と積極的に話すこと」「国際機関を目指す前に様々な国際協力経験を積むこと」という3つを挙げられました。さらに、言語学習のコツは「耳で聞いて真似をすること」であるというお話も質疑応答の中にありました。また、「国際協力分野の初めのステップはそれほど高いものではなく門戸は広く開かれていることを今回の講演を通して学生に知ってほしい」「第一線で活躍する先生方と関わっていることを再認識し、学生としての特権を最大限活用してほしい」とおっしゃっていました。この科目の担当教員である三田貴教授からは「林さんは、本学在学時代の学びや経験をもとに、その時々の機会へとつなげながら、着実にキャリアを展開されてきています。大変参考になる好事例をご紹介いただきました。一方で、国際協力や国際分野で活躍するためのキャリア構築の順番は一人ひとり異なります。一般企業での実務経験や大学院への進学など、どの経験を先に積むかは人それぞれです。今回の講演を機に、学生の皆さんにも、自分自身のキャリアについて一歩踏み込んで考えてほしいと思います。」とのコメントがありました。学生からは、「国際協力や国際分野で働くことを、漠然とした憧れではなく、具体的なキャリアとして考えられるようになった」「国際協力は『支援する』ものではなく『現地の人と一緒に課題を解決する』ものであると認識するようになった」といった感想が多く寄せられました。

本講演会を通して、本学での学びがその後のキャリア形成と深く関わっていることを学びました。また、私自身も林氏のように小さな気付きから関心を見つけ、それを多くの人との関わりを通して探求していきたいと考えるようになりました。

質疑応答では海外での生活や語学学習・キャリア展開など多様な内容に答えていただきました