生態系サービス研究センターではミツバチがもたらす多様な「生態系サービス」に着目し、持続可能な社会の実現と地域社会への貢献を目指しています。梅もまた、ミツバチと深いかかわりがあり、古くから日本の農業・文化・景観に深く根ざした農作物です。
和歌山県みなべ・田辺地域の「梅システム*」は、2015年に世界農業遺産(GIAHS)として認定されました。この地域では、梅林と薪炭林、畑、ため池、石垣などが連携した伝統的農業が長年にわたって継承されており、多様な生き物と人の暮らしが共生する里山生態系が維持されています。
2026年6月6日に、生態系サービス研究センターが中心になり、たかだ果園様、ならびに、みなべ町のご協力のもと、生命科学部の高橋研究室、西田研究室、川上研究室、三瓶研究室の学生ら17名の学生らが、梅の収穫について学びました。
6月6日の「梅の日」は、1545年に後奈良天皇が賀茂社(上賀茂神社・下鴨神社)で梅を奉納し、恵みの雨が降ったという故事に由来する記念日です。この由緒にちなみ、和歌山県みなべ町を中心とする「紀州梅の会」が、例年、上賀茂神社・下鴨神社へ梅を奉納しているなど、みなべ町にとっては、とても大切な日になります。。
今回、学生の学びにご協力頂いた、たかだ果園様は、南高梅発祥の農園であり、南高梅の母樹を守りながら有機栽培に力をいれ、環境に配慮した農業を実践しています。
収穫に先立ち、高田社長から、みなべ町の梅栽培の現状についてお話しいただき、早期開花や雹被害など、農家の皆様が肌身で感じておられる環境の変化による影響についてもご説明頂きました。
収穫では、青梅取りと“うめひらい”(梅拾い)を行いました。現地では、収穫の手順や収穫した梅を傷つけないように扱う注意点のほか、使用する道具についてもお話を伺いました。
青梅は、梅の樹から軽く引いたら取れるものを、やさしくもぎとり、腰につけたかごに丁寧に入れながら集めました。青梅取りが終わった後は、完熟梅を拾いました。それらの梅は完熟して、梅の樹から自然に落ちたものになります。体験させて頂いた梅畑は斜面に広がっており、畑全体に青いネットを敷かれ、落ちた梅が傷つかないように保護されていました。多くの梅が、斜面の下まで転がって集まるよう工夫されていますが、一部はまだ梅の樹の下に残っており、学生たちは梅に傷がつかないよう、丁寧に優しく扱いながら、斜面に残った梅を拾い集めました。
参加した学生のうち、4年生の藤井奏さんは「ウメの実の収穫は初めてでしたが、近所のスーパーでは見たことのない大きい実が採れたり、有機栽培の畑のウメの実の香の強さを体感できました。山の斜面のウメ畑での収穫作業は想像以上に大変で、作業の効率化や新しい技術開発についても考えを巡らせました。」とコメントしました。
現地を実際に訪れ、実際の梅栽培の様子を体感し、梅の収穫について丁寧にご指導頂くことで、学生らは多くの学びと気づきを得て、農業や環境問題を身近な社会課題としてより深く考える契機となりました。

梅園にて収穫や梅栽培についてご説明頂いている様子

収穫体験後の記念写真
参考:
<みなべ田辺の梅システム>
和歌山県みなべ・田辺地域は、日本一の梅生産地として知られ、400年にわたり独自の農業システムを維持してきました。養分の少ない斜面には薪炭林を残しながら梅林を配置し、土壌の流出を防ぐとともに、高品質な梅の生産を持続しています。梅の受粉にはニホンミツバチが活用され、生態系を守る役割を果たしています。この農業システムは自然環境を守りながら、地域の伝統的な食文化や祭事など人々の暮らしと結びついています。
<世界農業遺産>
世界農業遺産は、社会や環境に適応しながら何世代にもわたり継承されてきた独自性のある伝統的な農林水産業と,それに密接に関わって育まれた文化,ランドスケープ及びシースケープ,農業生物多様性などが相互に関連して一体となった,世界的に重要な農林水産業システムを、国連食糧農業機関(FAO)が認定する仕組みです。