2026.05.14

橋本高勝名誉教授の御遺稿が公刊されました

昨年急逝された文化学部初代学部長・橋本 高勝名誉教授の御遺稿「殷墟卜辞字句の整理―時間語月名の合文表記の統計的整理―」が、『懐徳堂研究』第17号に公刊されました。

「殷墟卜辞字句の整理―時間語月名の合文表記の統計的整理―」

橋本名誉教授の御経歴について、小林 武名誉教授の同論考の「解説」に以下のように記されています。

橋本高勝(はしもとたかかつ)先生(一九三五〜二〇二五)は、宮城県出身。京都産業大学教授を経て、同大学名誉教授。大阪大学大学院文学研究科において木村英一・森三樹三郎両先生に師事し、清代の思想家戴震の研究者である。京都産業大学では、国際言語科学研究所長などを歴任の後、文化学部の初代学部長であった。著書には、『天罰から人怨へ』(単著。啓文社)、『朱子学体系の組み替えー戴震の哲学研究』(単著。啓文社)などがある。

また、『懐徳堂研究』に掲載された経緯については、次のとおりです。

この遺稿は先生の急逝(二〇二五年四月)後に発見され、懐徳堂研究センター宛てのレターパックが置かれていた。投稿予定であったと分かる。遺稿の掲載にあたっては、大阪大学名誉教授の湯浅 邦弘先生と懐徳堂研究センターの井垣 俊樹氏のご高配を賜わった。

本論考について、出土資料の専門家であり本学全学共通教育センターの草野友子講師(文化学部卒業生)は、次のように述べておられます。

殷墟(いんきょ)とは中国河南省安陽市で発見された殷代の遺跡で、そこから大量の甲骨が見つかりました。古代中国では、占いのために亀の甲羅や獣の骨に文字を刻みました。その文字を甲骨文字と言い、占いの言葉を「卜辭(ぼくじ)」と言います。古代の文字は、合文と呼ばれる、二字・三字など複数の文字を一つの文字にまとめて書くという手法が用いられることがあります。これは甲骨文字だけでなく、青銅器に刻まれた金文や、竹簡に書かれた文字でも見られる現象です。

また草野講師は、橋本名誉教授のご研究について、合文のうち時間や月に関わる表記を類別し精査したものであると説明したうえで、「橋本先生のこの情報整理は地道な手作業によるものですが、デジタルヒューマニティーズの技法を用いれば、古代文字の解読が次のステップに進む可能性があるかもしれません」と付言されました。

橋本名誉教授は、退職後も日々の研究を欠かさず、亡くなられる直前まで精力的に研究活動を続けておられました。今年度より文化学部は新しく生まれ変わりましたが、文化学部の礎を築かれた先生のご業績に深く敬意を表するとともに、謹んでご冥福をお祈り申し上げます。