2025年12月16日(火)のお昼休みに「News解説ワークショップ」を開催しました。この企画は、国際関係学部の教員がタイムリーなニュースを学生に解説する国際関係学部独自の取り組みです。今回は、「ウルトラ・ファストファッション(SHIEN)とパリ出店をめぐる問題」というテーマのもと、正躰教授、井口准教授、ノハラ准教授の3名に、ウルトラ・ファストファションが抱える環境問題、EUの規制動向・消費者心理について解説していただきました。
(学生ライター 国際関係学部4年次 樋上 智大)

最初に、概要として正躰教授から同年11月5日、パリに世界初となる常設店舗をオープンしたSHIENと現地住民の対立を解説していただきました。これまでオンライン販売を中心にEU圏で販売を行っていましたが、常設店舗の出店は今回が初めてです。オープン当日、長蛇の列を店舗の前に作る消費者と、そのすぐ側で環境破壊や人権侵害について声を上げるデモ隊が対峙する光景がみられました。
次に井口准教授から、今回の争点であるファストファションと環境負荷についての解説がありました。ファッション産業は世界第2位の汚染産業と呼ばれるように、環境面で非常に問題が多い産業であると指摘されました。特に大量生産・大量消費のシステムが問題であり、日本でも衣類の多くが焼却処分されていることや、リユース目的で輸出した衣類がアフリカなどでゴミの山になっていることを話されました。
続いてEU圏内で進む厳しい法規制について紹介がありました。ファッションの廃棄や生産の際に生まれる環境もコストに含む「汚染者負担原則」のもと、フランスでは現在、SHEINのようなウルトラ・ファストファッションを対象に環境ペナルティを課す法案や、プラットフォーム上での広告を禁止する法案が成立するなど、サステナビリティに向けた政策がすすめられております。

再び正躰教授から、フランスおよびEUの政治的な動きについての解説がありました。フランスでは現在、ウルトラ・ファストファッションに対して非常に厳しい規制が進んでいます。驚いたことに、普段は対立することの多い右派から左派まで、ほぼ全ての政党が反SHEINという考えで一致しているということです。そこには環境保護だけでなく、フランスの繊維産業を守るというナショナリズムも強く関わっていると話されていました。

最後にノハラ准教授から、消費者心理と経済の視点での解説がありました。これほど批判されても、なぜSHEINは支持されるのかという点についてです。背景には、フランス国内の深刻なインフレと低賃金が存在すると話されていました。現地の若者や低所得者層にとって、給料が上がらない中でファッションを楽しむには、ウルトラ・ファストファッションの安さは生活の味方として機能しています。また、既存のフランス製ブランドが国民のニーズを満たせていない中、環境に悪いとわかっていても、背に腹は代えられないという消費者の切実な本音は、規制だけでは解決できない根深い問題だと話されていました。

今回のワークショップを通じ、ウルトラ・ファストファッションはEUが長年考えてきた環境規範や、自国の産業を守ろうというナショナリズムの壁を越え、消費者が安く流行の服を着られるという消費者のニーズをつかんでいるのだと実感しました。
今後、規制で一時的に動きを止めることだけではなく、背景にある国の経済状況やニーズに向き合うことが、持続的なファッションの在り方なのではないかと考えました。

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