2025.12.26

海外で学びを広げる!~人工島開発を追う学生の挑戦~

シンガポール・チャンギ国際空港での写真

学部の授業以外にも活躍の場を求めて積極的に取り組む学生を紹介する本企画。

今回は、「マレーシア・ペナン州・ペナン島南部における人工島開拓に伴う影響:漁民の現状と人々の意識に着目して」をテーマにマレーシア・ペナン州・ペナン島を訪問し研究を続けている、国際関係学部4年次の山本 悠斗さんにお話を聞きました。

1.「国際関係」に興味を持ったきっかけを教えてください。

私が子供の時に母が英会話教室に通わせてくれていました。当時は全然英語ができず、むしろ苦手でしたが、英会話教室での授業や発表の場を通じて、英語で何かを学ぶこと、何かを行うということに関心を持っていました。そして中学生の時に塾に通っていた際、塾の合格実績掲示欄に「国際関係学部」と書かれてあり、様々な学問がある中から、衝動的に国際関係学を学ぶことが面白そうと感じ、幼い頃に学んでいた英会話教室の経験を活かし、国際関係を日本語と英語の両方を使い学んでみようと思ったことが一番のきっかけです。また中学生当時、パレスチナ問題に関するYoutubeの解説動画を見ていて、それを見た時に国際社会でこういうことが起きているのかと関心を持ち、国際関係について学んでみたいと感じたことも「国際関係」に興味を持った理由です。

高校の修学旅行で沖縄に行った時の写真。今思うと、海が好きなのかもしれません。

2.今、注力している取り組みは何ですか?  

一枝会様からの外部資金のご支援をいただき、マレーシア・ペナン州・ペナン島南部における人工島開発問題に関する調査を現地に行って取り組みました。ペナン島の南部海洋付近で現在進行形で「ペナン・シリコン・アイランド (Penang Silicon Island: PSI)」と呼ばれるスマートシティ構築に向けた人工島開発のための埋め立て作業が行われているのですが、開発に対して、現地の人々がどのように考えているのか、海洋に埋め立てを行うことで悪影響を受ける漁民がどのように感じているのかを関係者に聞き取りを行いながらペナン島を幅広く回って調査を行ないました。

ペナン・シリコン・アイランドについて、NGOの方にインタビュー調査
現地の方へのインタビュー調査
ペナン・シリコン・アイランド埋め立ての様子。インディペンデント・リサーチでずっと気になっていた場所に訪れることができました。
現地の方へのインタビュー調査

3.その取り組みに参加(応募)したきっかけ・動機を教えてください。

3年次生の時に、「国際キャリア開発リサーチB」の授業でペナン島に訪れた際、プログラムの一環として漁民関係者からお話を聞く機会があり、そこでペナン・シリコン・アイランド計画を知りました。お話を聞いてこの計画に対して強く関心を持って帰国後、「インディペンデント・リサーチ」の授業で、ペナン・シリコン・アイランド計画における影響を経済・社会・環境の観点から分析し、現状と現状の課題、今後の展望などについて論文にまとめた経験があります。インディペンデント・リサーチを通じて、ペナン・シリコン・アイランドのことについて多くのことを知ってから、もう一度自分で現地に行ってみてこの問題についてより深く考えてみよう、知識として身につけたことが本当に実社会に反映されているのか自分の目で確かめてみようと思い応募しました。現地では、これまでのバックグラウンドを応用する形で漁民の現状や人々の意識調査、インディペンデント・リサーチで得た知識の検証を行うことで、ペナン島南部で現在進行形で行われている人工島開拓に関する現地の人々や社会の構造・動きから見るペナン・シリコン・アイランドの現状、今後の課題や展望を含め、調査と考察を行いました。

インディペンデント・リサーチ成果発表会にて。ペナン・シリコン・アイランドについて学生に説明している時
インディペンデント・リサーチを通じて完成した論文の表紙

4.参加して、ご自身にとってプラス(成長)につながったこと、気づきは?

「一つの研究テーマに着目しすぎないこと」これを常に感じるような1ヶ月でした。私は渡航前や渡航して少しの間、私が行いたい漁民の現状を知ることや人々の意識の確認ができれば良いと考えていました。しかし、人々と交流しているうちに、現地の人々は、私にペナン・シリコン・アイランド以外のこと、現在ペナン島で起きていることも多く教えてくださいました。例えば、現地の方の一人が「ペナン・シリコン・アイランドはわからないけど、人工島ならペナン島のGurney Bay Parkというところは似たような人工島開発事例だと思う。行ってみたらどう?」と教えていただき、気になって教えていただいたGurbey Bay Parkを行ってみたら、そこは公園として機能しており、整備やルール作りがしっかり行われており、昼・夕方・夜いつでも絶景を見ることができました。また、現地の人は写真を撮ったり、エクササイズをしたり、楽しくお話をしていたり、遊具や自転車で遊ぶなど楽しそうに過ごしている様子が多く見受けられました。人工島の開発事例を直接目で見ることができましたし、人工島開発の良い点を学ぶことができました。そして、Gurney Bay Parkの開発付近で漁業を行っている方とお話をしていると、付近での多くの人工島開発により、魚の捕獲量が減っていること、環境へ影響があることをお聞きしました。お話をしている中で、ペナン・シリコン・アイランド計画とGurney Bay Parkでの人工島開発計画の違いも教えていただき、ペナン社会で今起きていることを学ぶことに加えて、そこから見えてくるペナン・シリコン・アイランドについて多くのことを学ぶことができました。同時に、ペナン・シリコン・アイランドやGurney Bay Parkの人工島開発は、経済発展や人々への幸福につながる一方で漁業を行っている方への社会的影響や環境問題といったTrade-Off関係について難しさを感じさせられました。これまでの学部生活では、毎回与えられたテーマに沿って学習を進めていたため、「一つの研究テーマに着目するのではなく、その社会の様子・構造からその研究テーマを見てみる」ことの大切さを学べたことは私にとって新しい視点を身につけることができて嬉しかったです。

Gurney Bay Parkと呼ばれるペナン島の人工島。いつの時間帯でも絶景を見ることができました。
ペナン島では、LRT (電車/鉄道)が開発されている。LRTは、ペナン・シリコン・アイランドからペナン国際空港を通り、ジョージタウンまで繋がる。
Gurney Bay Parkの上にて
スーパーでの魚の写真。今後、多くの人工島開発により、魚の捕獲量や値段がどのように変化するのか

5.国際問題を考えるうえで、普段から心がけていることはなんですか?

自身の考えだけでなく、周りの人がどのように考えているのかを把握することを意識しています。自分一人だとどうしてもアイデアに限界があります。周りの人の考えを聞くことで、多様な考えを理解し、多角的に国際問題を分析するようにしています。また、積極的に気になったことは質問を行うことで、国際問題に関するまた違った角度からのアイデアが出ることもあるので、積極的に気になったことは質問することも大切だと考えています。

2024年度日本英語模擬国連に参加して、多くの人とOvertourismについて議論しました。
関西万博パラオパビリオンボランティアスタッフとしてパラオの魅力を来場者に紹介しました。
ペナン島を周っている際に出会った漁民コミュニティ

6.今の活動をとおして、今後の抱負、また将来に繋がること・繋げたいことは?

4月から大学院生になります。大学院でもマレーシアの人工島開発について研究する予定です。今回の調査は、まずは大学院での研究に活用していきたいと考えています。今回の調査で学んだ知識やスキルはきっと大学院でも活用できると信じています!将来は、現地の人々と直接関わり、支援を行うような国際NGOや現地NGOのスタッフとして働きたいと考えていますので、今回の調査が大学院での学びだけでなく、国際NGOや現地NGOにも活かせるといいなと考えています!

国際キャリア開発リサーチパラオで見た海の景色
Gurney Bay Parkの上で資料作成!暑かったですが、楽しく資料作成をしていました!
ペナン島での海の景色
シンガポール・チャンギ国際空港にて撮った写真

7.国際関係を学ぶ学生(興味を持っている高校生)のみなさんへ一言

私の国際関係学部での生活を振り返ってみると、国際関係は知識を身につけることも重要ですが、現場を見ることも非常に重要であるということがわかりました。知識を入れても実際に現地に行くと想定していたことと違う!資料だけではわからない現地の事情などを知ることができるなどといった経験ができます。また、その国の現地の人や暮らし方、社会の様子など多くのことも学ぶことができます。それらを踏まえて、現地の人々の視点で物事を考えてみることで、社会の様子がもっと違った角度から理解することができます。国際関係学はすごく難しい内容ですが、学んでいて楽しいです。国際関係に関心を持っている高校生や学生の皆さんは、学内での知識習得だけでなく、どんどん海外に行ってみて現場体験や現場調査、観察をしてみると新しい学びや視点をきっと見つけることができると思います!京都産業大学国際関係学部はそのような学びや視点を見つけることのできる素敵な学部だと思います。ここでの学びを大切にし、活用し、どんどん好奇心を持って主体的に活動を行って自分の中での新しい学びをどんどん見つけて欲しいです!周りの先生方や友人たちと大きく交流しながら、いろんなことにチャレンジしてみてください!

ペナン州とペナン・シリコン・アイランドが示されている模型図
帰国日前日に食べたNasi Kandar。美味しすぎて渡航中たくさん食べていました!
ペナン国際空港にて撮った一枚。LRTが設置されている
調査が終了し、帰国中に航空機内で撮った写真。めっちゃ晴れていて、絶景を楽しみながら帰国しました!