2025.12.17

経済学部 玉木俊明教授がエストニアで由緒あるタルトゥ大学から招聘され特別講義を行いました

統計局(世界の統計2025世界地図)より

12月11日(木)、経済学部の玉木俊明教授がエストニアのタルトゥ大学から招聘され特別講演を行いました。タルトゥ大学はスウェーデン国王グスタフ2世アドルフによって創設された大学であり、エストニア南東部、人口約10万人の大学都市タルトゥ市に位置しており、現時点で、エストニアで最古かつ最大の大学です。また、北欧・東ヨーロッパ地域で最も古い大学の一つとされています。
この様な由緒ある大学から玉木教授は招聘され、「成長モデルの崩壊と財政危機 - 日本の国家能力を再考する -」と題して、現代日本の問題について特別講義を行いました。

特別講義概要(タルトゥ大学Webサイトより)

「本講義で、国家の能力(国家が歳入を増やし、歳出を管理し、債務を持続させ、制度を適応させる能力と定義される)は、歴史的に日本の近代的財政システムを支えてきた。第二次世界大戦後数10年にわたり、このシステムは、ソロー成長モデルで明確に示されたように、持続的な経済成長と人口増加を前提として効果的に機能してきた。拡大する税収と高い貯蓄率により、国家は社会保障への資金提供と財政の安定を維持することができた。しかし、現在、この基盤は侵食されつつある。急速な高齢化と人口減少が税基盤を弱体化させる一方で、社会保障支出はGDPのほぼ4分の1にまで上昇している。たとえ一人当たり所得が増加したとしても、全体の歳入は減少し続けるだろう。国債を借り換える能力は弱まり、市場の信認喪失を引き起こし、ソフトな形とハードな形の双方の債務不履行(デフォルト)のリスクを高める可能性がある。日本の債券市場の規模と世界的な金融統合を考慮すると、このような財政危機は国内問題に留まらないだろう。人口減少下における国家能力の侵食は、景気循環的な変動ではなく、構造的な変革であり、国内の財政政策と国際金融の安定性の双方に深刻な影響を及ぼす。」

特別講義当日、日本経済は、戦後製造業が中心の時代に急速に発展し、近年になって停滞した理由を、国家の能力(state capacity)という観点から説明され、それに対して多くの議論が交わされました。

エストニア・タルトゥ大学Webサイトより