「町家 学びテラス・西陣」では、大学生から社会人まで幅広い世代がともに学び、地域とつながり、地域との関わりや事業づくり、多様な生き方や暮らし方、働き方の選択肢を増やすことを目的とした学びの場「町家オープンカレッジ(略:MOC)」を定期的に開催しています。
今回の町家オープンカレッジは「デザインやツーリズムによる地域へのアプローチ」をテーマに、これからの地域づくりや地域と関わるうえで何が大切なのかという問いを考える時間となりました。
まずはゲストによるトークから始まりました。京都と和歌山県すさみ町の二拠点で活動されている、すみ かずき氏に自己紹介をしていただきました。ローカルをローカルたらしめる「らしさ」を大切にし、「らしく、生きる。」というコンセプトのもと「合同会社シェアローカル」を起業され、デザインを軸にブランディングやコンテンツ制作など、プロジェクト全体に携わっておられます。フリーランスになって働く中で「デザインで嘘をつきたくない」と気づき、本質を追求し源流から関わるあり方へと転換されたそうです。すさみ町ブランド化計画では、水産加工の現場を訪れるところから始め、捨てられていた魚や漁師が自家用に作っていたものを商品化し、ブランディングまで展開されています。
続いてお話しされたのは、亀岡生まれ・亀岡育ちで、現在も亀岡を拠点に活動されている並河 杏奈氏です。大学4年生のときにイギリスへ留学されたことをきっかけに、日本への新たな視点が生まれ、観光地でのアルバイトや地域創生への関心を持たれるようになったとのこと。卒業後はまちづくり会社で商店街の活性化やライターをしながら、地元亀岡の映画「かめじん」の制作と主演を務められました。その後、株式会社ツナグムで「京都移住計画」に関わる一方、個人ではコミュニティ・ベースド・ツーリズムを掲げて「一般社団法人Fogin」を設立され、代表理事として芸術祭のコーディネーターや亀岡駅前のゲストハウス「リバー!リバー!リバー! souvenirs & BnB」の企画・運営も手がけておられます。地形や地質から地域を捉え、さらに時間軸を動かして未来を見ていくという価値観をご紹介いただきました。

トークセッションでは、「地域との関わり方や関係性づくり」と「これからの地域づくりとは?」という問いについてお話しいただきました。
地域との関わりについては、ローカルツーリズムなど多様な観光の形が生まれる中で、魅力ある地域を知ってもらい、ストーリーや文脈を伝えるためにデザインの力が必要であること、また地域の面白い方との出会いが移住につながることもあるというお話がありました。
お二人に共通していたのは、現場へ足を運ぶこと、そして地域の方や他地域から訪れる方を含め、相手が何を大切にされているのかをじっくり聞くという姿勢です。デザインやツーリズムという大きなテーマであっても、結局は人と人との関係性であるという点が印象的でした。
これからの地域づくりについて、並河氏は海外での自身の旅の経験と、逆に亀岡で海外の方をご案内した経験から、「今後は地方と都市という関係ではなく、ローカルtoローカルのつながり、海外の地方に移住された方と日本の地域とのつながりも生まれてくる」とお話しくださいました。一方、すみ氏は「終焉を迎える地域もあるが、面白い地域はどんどん個性を出していく。全国各地にそういう地域が生まれたら」と語っておられました。

当日、会場からは「企画して実現しなかったもの、継続しなかったものはあるか」という質問があり、「たとえ数人でもやってみる。自分が楽しめるかどうかで続けるかを判断する」「アイデアは自分の中にあるので、タイミングが来るまで寝かせることもある」とお話しされました。
また「地域で関わる人たちと意見が異なる場合はどうすればよいか」という質問には、「とにかく対話をすること」「自分がまずやってみて同じ景色を見ることで動きが生まれることもある」とお話しくださり、小さくてもまずやってみることの大切さを感じました。

その後の交流タイムでは、各所で活発な交流が生まれていました。最後には参加者から「将来地元に帰ろうと思っているので参考になった」「人と人とのつながりを大事にしたい」という声が寄せられました。今回の町家オープンカレッジを通して、皆さん良いヒントを得られたようです。
ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。