2025.07.16

社会協働型ワークショップ 2025年度第2回公開授業を開催しました

 現代社会学研究科専門教育科目「社会協働型ワークショップ」では「自然と文化」「身体と社会」「人と組織」をテーマに、社会との協働の架け橋となるための理論と実践を、ゲスト講師とのディスカッションを通して学んでいます。毎回のゲスト講師による講演は、全学の学生と教員に向けた公開授業となっています。


ゲスト講師 森 亮太氏

 6月14日(土)に開催された第2回目の公開授業では、石川県金沢市で地域住民に向けた健康づくりやまちづくりの事業などを行っているNPO法人クラブぽっと(以下、クラブぽっと)のクラブマネージャーである森亮太氏から、「地域のNPOが運営する『ごちゃまぜ』コンセプトの居場所・役割づくり―野菜市・サロン運営の事例より」というタイトルで、「人と組織」をテーマにご講演いただきました。

 森氏は大学院で発育発達論、トレーニング論、プレイ論などを学んだ後、2009年から、杜の里スポーツクラブ(2013年にNPO法人化するとともにクラブ名をクラブぽっとに変更しました)のクラブマネージャーに就任し、クラブの立ち上げからその運営まで、活動の根幹を担っています。 

 今回のご講演では、高齢社会の地域課題として高齢者の居場所が必ずしも充実していないことや買い物難民になりやすいことなどを焦点化し、高齢者が買い物ついでに気軽にお話をしたりお茶を飲んだり、また、運営スタッフとして販売する側に回ったりすることもできる野菜市や、1回200円で参加できる高齢者のサロンの様子等について、それらのコンセプトから実際の参加者の様子、運営方法などを教えていただきました。実際に「ごちゃまぜ野菜市」では軽度認知症の人が地域包括支援センターからの紹介で運営スタッフの一人として販売の仕事をまかされていたり、高齢者サロンでは駄菓子を買いに来た地域の子どもとサロンに来ていた高齢者が一緒にトランプや卓球をして盛り上がっている姿が紹介されたりしました。

 特に重要だとお話されていたのは、役割や目的、参加する世代などを固定しないでごちゃまぜにすること、また、ごちゃまぜを実現するためには、様々な地縁組織や専門職組織と連携していくことが必要なので、そのためにはコーディネーターが必要だということでした。さらに、これらの取り組みを通じて、地域内で緩やかな情報共有や情報交換が可能となり、地域住民による高齢者の見守りができる可能性があることもお話くださいました。

 森氏の講義が終了したあとで、受講生同士でディスカッションを行いました。認知症が進んだ高齢者が参加する場合にはこのしくみでは難しいのではないかという意見や、サロンの参加費が1回200円ではサロンを維持するのが難しいのではないか、という現実的な事柄が問題提起されました。また、これらの問題提起に対して森氏に安易に答えを求めるのではなく、自分たちでどのようにするのがよいのかをディスカッションして導き出すという学びの機会にもなりました。