2024年度末をもって、本学理学部数理科学科の村瀬 篤 教授が退職されます。
2025年2月12日(水)に村瀬 教授の退職を記念し、「数理科学科 村瀬 篤 教授 最終講義」を開催しました。
「多変数保型形式の生態学」村瀬 教授
村瀬 教授は「多変数保型形式の生態学」という題目で最終講義を行いました。
はじめに村瀬 教授は現在に至るまでに取り組んでこられた共同研究や多くの研究者との関わり、ドイツにおける二度の在外研究の思い出等を回想しました。その後、村瀬 教授は1変数保型形式について説明しました。保型形式は、非常に大きな対称性を持つLie群上の関数のことです。1960年代以降、異なるLie群上の保型形式が相互に関係していることがわかってきており、その関係は「テータリフト」と呼ばれる積分により記述されることがあります。
村瀬 教授は興味の対象である多変数保型形式の「生態」を明らかにする中で以下の大きな3つの問題に関わり、それぞれで成果を挙げました。
1つ目はあるLie群上の保型形式のテータリフトは陽に記述できるか、またそのFourier級数展開は何か、という問題です。この問題に関連して、Kudlaリフトと呼ばれるテータリフトのFourier係数はある種のL関数の言葉により記述することができるという菅野 孝史氏との共同研究について紹介しました。2つ目はテータリフトの核はどのようなものかという問題です。この問題に関連して、直交群上の保型形式の系列であるBorcherdsリフトがある種の対称性をもつというBernhard Heim氏との共同研究について紹介しました。3つ目はテータリフトの像はどのようなものかという問題です。この問題に関連して、荒川リフトの像は保型L関数の特殊値の非零性で特徴付けられるという成田 宏秋氏との共同研究について解説し、再生公式と呼ばれる主張の利用が証明の鍵となることが説明しました。村瀬 教授はこれら3つの研究成果が得られた時期が自身の数学者人生における3つのピークであったと振り返りました。
最後に「自身の大学教員としてのキャリアはこれまでであるが、数学者としてのキャリアはまだまだ続きます」とこれからの意気込みを述べ、最終講義の結びとしました。
最終講義終了後に、これまで本学における教育、研究へ尽力いただいたことに対する感謝の気持ちを込めて、花束を贈呈しました。
当日は多くの学生、教職員が最終講義を聴講し、大盛況のうちに幕を閉じました。村瀬 教授には言葉では言い尽くし難いほど多くの厚情と指導を賜りました。
村瀬 教授の末永いご多幸を心よりお祈りします。