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今知っておきたい旬なトピックをポイント解説!キャッチアップ・ワールド Catch Up WORLD

経済学部 西村 佳子 教授に教えていただきました!

キャッシュレス決済 Cashless payments
代金の支払いや受け取りのときに現金を用いない「キャッシュレス決済」。キャッシュレス決済は、大きく分けて3つに分類できます。1つは、交通系ICカードなどの先払い決済。2つめは、クレジットカードに代表される後払い決済。そして3つめは、デビットカード・QRコードのような即時決済です。スマホではQRコード決済が多いので、学生の皆さんにとってはもっとも身近かもしれません。これからキャッシュレス決済の主力になっていくともいわれています。しかし、今はさまざまな決済方法が乱立している過渡期。それぞれの事業者の、安全性や使いやすさの評価もまだ定まっていません。将来的には集約されると予測されますが、何が選ばれるかはわからないという状況です。

キャッシュレス決済 Cashless payments

Q
中国ではスマホ決済が急速に進んでいると聞きます。
日本は遅れているのでしょうか?

確かにスマホ決済の普及は遅れていますが、
日本にはすでに優れた金融インフラがあります。

「遅れている」という人もいますが、議論が分かれるところです。スマホでの決済だけに絞ってみると確かに普及は遅れていますが、日本には多様な決済の方法があります。銀行口座での引き落としや振込もそのひとつ。公共料金の支払いをその都度スマホで行うよりも、自動的に口座から引き落とされるほうが便利で確実です。すでに優れた金融インフラがあるからこそ、スマホ決済のような新しい方法ができても急速には移行しないのだといえます。一方中国では、日本ほど銀行口座やクレジットカードの保有率が高くありません。国土が広大なためATMが少なく、都市部以外では現金が使いにくいという背景もあります。しかし、スマホの普及率は90%以上。そのため、ほかの方法よりもスマホ決済が便利なのです。とはいえ、日本でも決済のキャッシュレス化が進んでいくことは間違いありません。乱立する事業者が整理・統合され、安全でどこでも確実に使える決済方法が確立すれば、多くの人が利用するようになるのではないでしょうか。

Q
日本の政府としては、キャッシュレス決済を広めていきたいのでしょうか?

人口が減少していく未来を見据えて、
キャッシュレス決済の普及を推進しています。

経済産業省は、キャッシュレス決済を進めようとしています。その理由はいくつか考えられますが、その最たるものは都市部の慢性的な労働力不足と過疎地での人口減少です。皆さんはATMのお金を補充や回収しているところを見たことがありますか?必ず2人以上で行なっています。それが全国のATMで行われていると思うと、いかにコストがかかるか想像できるはず。また、アルバイト先で、レジの現金管理の大変さを経験した人もいるかもしれません。日本国内のATMを維持するために、年間2兆円かかっているという試算もあります。これまでは、その費用を銀行が支払っていました。しかし、今は銀行もそれほど収益を上げられなくなってきているので、近い将来、ATMの維持管理コストは利用者に転嫁されることになるかもしれません。さらに、さまざまな場所で現金管理の作業を減らすことができれば、労働力不足の緩和にも役立ちます。労働力不足の傾向が続き、今後は銀行・ATMの数自体も減っていくため、キャッシュレス決済の推進は不可欠なのです。

Q
スマホ決済を利用するときには、どんなことに気をつけるべきでしょうか?

4つあります。スマホ決済は手軽で便利ですが、
あくまでお金のやりとりであることをきちんと
認識しましょう。

キャッシュレス決済には、支払いがデジタル上で記録できるという利点があり、お金の流れを1か月・1年といった期間で簡単に管理できる便利さがあります。その上で、まず気をつけてほしいのは、アプリの安全性を過信しないこと。どんなアプリにも脆弱性はあるので、こまめなアップデートが不可欠です。2つめは、フィッシング詐欺に注意すること。3つめは、ポイント還元に釣られないこと。それはサービスを普及させるためのおまけにすぎません。どのような仕組みで支払われるのか、安全性はどのように保たれているのか、常にアプリのアップデートを続けていけそうな会社が運営しているかなど、手軽さの裏側にあるリスクにも注意を払ってください。そして最後は、使いすぎないこと。後払い式のキャッシュレス決済は、どうしてもお金の管理がずさんになりがちです。スマホ決済に限らず管理力が身につくまでは、口座の残高以上にお金を使ってしまわないように即時決済の方式を選ぶのがいいのではないでしょうか。

vol.85 サギタリウス 2019年10月11日発行

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