所長挨拶
所長挨拶
世界問題研究所は、京都産業大学の開学の翌年、1966年に最初の附置研究所として、開祖荒木俊馬先生の盟友であった岩畔豪雄先生を初代所長に迎えて開設されました。そのさい当研究所には、先の大戦における我が国の敗戦とその再生復興を遠視しつつ、これを担う社会の在り方と学術研究を世界史的視野から検討し推進するという崇高な使命が与えられました。
以来、歴代所長の先生方のご指導の下、当研究所は着々と実績を積み、世界情勢と真っ向から切り結ぶその伝統は、今日まで連綿と受け継がれてきました * 。2026年には創設60周年を迎えます。
世界問題研究所では、令和8年度より「科学技術の発展と人類社会の変化--既存研究の継承と本研究の発展的推進(その2)」と題して共同研究プロジェクトを実施します。このプロジェクトは、川合全弘所長(令和2年度~4年度)、岩本誠吾所長(令和5年度~7年度)の時代のプロジェクトを受け、それを継続するものです。
川合先生が所長を務められた時期は、ちょうど世界中がコロナ禍に見舞われた時期に重なります。目に見えないウイルスの伝染にわれわれの日常生活が一変する一方、事態に対するさまざまな情報がインターネットを通じて世界中をかけめぐりました。「科学技術の発展と人類社会の変化」という研究テーマは、そのような人類史に刻まれるべき事件の生起した時代に、文理融合の理念に基づいて掲げられたものです。
岩本先生が所長の時代は、これを受けさらに発展させることを試みました。とりわけ、AIの目覚ましい発展は、わたしたちの生活と考え方を大きく変化させました。加えて、日本国内のみならず、政治経済をはじめとする国際秩序の激変も忘れることはできません。しかも、これらの様々な要因は、相互に複雑に絡み合いつつ、私たちの生きる世界を根本から変化させようとしています。
私たちが生きる21世紀の世界は、内外を問わず、混迷の度を増す一方であるように見えます。そこでは、政治や経済、社会の問題を考察するにあたり、科学技術の急速な発展とそのインパクトを考慮することは不可欠です。AIの発展は、その度合いをますます高めることになるでしょう。従来の価値観と枠組みが大きく揺らぎ、答えのない問題を粘り強く考え続ける姿勢は、研究教育を趣旨とする組織においてますます重要なものとなるに違いありません。
「世界問題」の研究という当研究所のミッションは、茫漠とした印象を与えるかもしれません。しかし、現代ほどの大きな変革の時代こそ、このような枠組みで種々の問題を根底から考察する姿勢が求められているとわれわれは考えます。当研究所では、このような課題に応えるため、研究会の開催をはじめとして、多様な事業を展開いたします。皆様のお力添えと御支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
2026年4月1日
世界問題研究所長 耳野 健二
*世界問題研究所のとりわけ初期史ならびに京都産業大学史における意義について、川合全弘先生の労作を参照のこと。川合全弘『京都産業大学世界問題研究所関連資料 京都産業大学史論集』(2024年3月、京都産業大学世界問題研究所)