所長挨拶

2023年4月

共同研究プロジェクト「科学技術の発展と人類社会の変化
—既存研究の継承と本研究の発展的推進」

本年度より川合全弘前所長の跡を継いで、世界問題研究所第13代所長に就任しました岩本です。前所長の下で「科学技術の発展と人類社会の変化」と題する共同研究プロジェクトが、「文理融合」という理念の下で2020年度から2022年度までの3年間において実施されました。その研究成果は、『世界問題研究所紀要』や『ニューズレター』等で公開されていますように、短期間ではあったとしても、組織的にも研究内容的にも着実でかつ卓越した足跡を残されました。具体的には、川合前所長によるご論考「プロジェクトを振り返って」(『京都産業大学世界問題研究所紀要』第38巻2023年3月121-131頁)やそれを基に全所員によって本年2月・3月の定例研究会にて実施された総括座談会(前プロジェクトの総括・現プロジェクトの展望について世界問題研究所のホームページや『ニューズレター』Vol.9で公表予定)を見ていただければ、当該プロジェクト研究の実態並びに研究活動の達成度が理解されるかと思います。惜しむらくは、研究テーマに対してプロジェクトが3年間という短期間に限定されていました。

そのような経緯を受けて、2023年度から2025年度までの3年間の共同研究プロジェクトは、「科学技術の発展と人類社会の変化—既存研究の継承と本研究の発展的推進」と題して実施することにしました。題名から明らかなように、本プロジェクトは、前プロジェクトの継承および発展的推進、言わば、第2段階と位置付けています。

というのも、目覚ましく発展し続けている科学技術が人類の未来社会に直接的でかつ多大な影響を及ぼす状況の中で、如何に科学技術の発展を人類の平和と幸福に連動させるのか、科学技術と人類社会の関係はどうあるべきか、どのようにして我々は科学技術と共存・共生するのか。これらの問いは、我々一人一人に突き付けられている深刻かつ喫緊の課題であります。換言すれば、「科学技術の発展と人類社会の変化」という研究課題は、前の3年間で完結し終了するほど簡単なものではなく、今後3年間延長しても完了し得ないほどの、じっくり腰を据えて取り組むべき広遠な研究課題であると考えたからです。

コロナ禍での3年間の生活は一変し、インターネットを使ったテレワークやオンライン学習が定着し、今や、それらが日常風景となりました。人工知能(AI)の発達も目を見張るものがあります。大阪駅では顔認証改札機の実証実験、公道では無人自動運転車(車内外での運転者不要の自動運転レベル4)の実証実験、そして、空域ではドローン(有人地帯を含む飛行経路での補助者なしの目視外飛行のレベル4)による郵便配達の開始が始まりました。2025年の大阪・関西万博では、空飛ぶクルマによる「エアタクシー」が商用運航される予定とのことです。

我々の生活環境は、驚愕するほど科学技術の進歩によって日々急激な変化を遂げています。日本政府が提唱する未来社会「Society 5.0」とはどういう社会なのか、それに最適な社会システムとはどのようなものか。その問題意識は、国内社会だけにとどまらず、国際社会、延いては、世界社会にも及びます。世界問題研究所は、これからの3年間、諸学問の結集を図る文理融合の理念の下で、極めてチャレンジングな本プロジェクトに取り組む所存です。

 

2023年4月6日
世界問題研究所長 岩本 誠吾

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