大国間の産業間競争とその影響
| 報告者 | 呉 澤林(経済学部 客員研究員/上海社会科学院国際問題研究所東アジア研究室 主任、副研究員) |
|---|---|
| 開催場所 | 京都産業大学 5号館ミーティングルーム1+オンライン(Teams) |
| 開催日時 | 2024年12月4日(水)16:00~17:30 ※経済学部との共催 |
研究会概要
2024年12月4日(水)の定例研究会では、京都産業大学経済学部の客員研究員で上海社会科学院国際問題研究所東アジア研究室主任の呉 澤林氏が「大国間の産業間競争とその影響」と題とする研究報告を行った。
本研究報告は主に米国・EU・中国・日本・韓国を対象とし、半導体・新エネルギー自動車・造船業などを研究事例として、大国間の産業競争の現状と影響を考察している。学界では国家間関係に影響を与える要因について、選挙政治・第三国・経済的相互依存、共通の価値観・歴史問題・領土紛争など多くの議論がなされているが、中でも経済的相互依存が国家間の平和をもたらすか、それとも紛争を引き起こすかという問題が注目されている。そして、自由主義は商業と貿易が平和をもたらすと主張しているのに対し、現実主義は絶対的利益を重視し、国家が相互依存を手段としてより大きな利益を確保すると考えている。このように、現在、国家間の競争が激化する中、相互依存の「武器化」が理論的議論の焦点となりつつある。
そのうえで、ご報告では、大国間の産業競争が国際関係に与える影響として、第1に、産業政策が主要国の共通選択となり、補助金競争が悪性競争を引き起こす可能性があること、第2に、主要国が高技術国や資源豊富な国を争って獲得しようとしていること、第3に、グローバルな産業競争が高度に安全保障化されていること、第4にEU・日本・韓国などが米国への依存度を深めていることが示された。また、中日関係に関しては、米国が中国に対して全面的な競争を開始したことで、日本にとって新興技術分野を発展させる機会がもたらされたが、この機会を捉えるには日本もいくつかの課題に直面していることや、中国の技術と産業の発展に伴い、中日両国の産業競争は激化し、両国の協力モデルは変化していること、石破茂氏が首相に就任して以降、中日関係は緩和傾向にありビザ緩和はその一例であるが、今後もCPTPP・日中韓FTA・第三国市場協力などの協力課題について検討・推進が可能であることなどが示された。
ご報告後は参加者から多数の質問が寄せられ、活発な議論が行われた。