「再生可能エネルギーと水素活用の将来展望」
報告者 | 大森 隆(理学部 物理科学科 教授) |
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開催場所 | 京都産業大学 万有館 B211セミナー室およびオンライン(Teams) |
開催日時 | 2021年7月28日(水)15:00~17:15 |
研究会概要
世界問題研究所は本年度の第5回定例研究会をハイブリッド方式で7月28日に開催した。今回の研究会には本学理学部 物理科学科 教授 大森 隆 先生をお招きし、「再生可能エネルギーと水素活用の将来展望」と題したご報告を行っていただいた。
ご報告ではまず、地球温暖化に関連するニュースを糸口としてIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)の第5次評価報告書、および1.5℃特別報告書の要点が紹介された。報告書によれば、急激な気温上昇に関して人間の活動が支配的な要因であった可能性が極めて高いと推算されることから、いくつかのシナリオ(仮定)に基づいて算出した数値を比較すると、温室効果ガスの排出量を2030年以前に抜本的かつ持続的に削減する必要があると考えられる。こうした事情が再生可能エネルギーの活用に一層注目が集まる背景にあるとの解説が行われた。
つづいて、再生可能エネルギーの現状について、太陽光や風力といった再生エネルギーの利用の伸びが国別にグラフで示された。また、エネルギーの貯蔵方法についても、運動エネルギーとして蓄えるフライホイールや電磁エネルギーとして蓄える超伝導電力貯蔵など、どのような種類があるのかが紹介された。そして、なかでも電気化学エネルギーとして蓄える水素電力貯蔵が出力オーダーも充放電時間もともに高い値を示す、との解説が行われた。
さらに、水素電力貯蔵を活かした水素・燃料電池について、エネファームやFCV(燃料電池自動車)などを例に、近年の動向や今後の展望が詳細に紹介された。同時に、大森先生自身のご研究についても解説が行われた。具体的には、太陽光で水を電解して水素を発生させる際に、太陽光と水のそれぞれのI-V(電流電圧)特性を踏まえてどのように最適なマッチングを図り水素を効率よくとりだすかといった研究や、水素の貯蔵方法としてマグネシウムとニッケルを用いた水素吸蔵合金をどれだけリーズナブルにつくりだすかといった研究である。また、CO2をなるべく低電圧で別の物質に変える電気化学還元の研究や、CO2の存在量を変えた時の温度変化を高度ごとに検討するジオエンジニアリングに関わる研究にも取り組んでいると紹介された。
以上のようなご報告の後、質疑応答に移った。質疑応答では、再生エネルギーの安定供給に関する問題や原子力エネルギーとの関係、水素・燃料電池の技術に関して日本は研究の質ではリードしていても他の技術(太陽光や半導体など)と同様に普及が苦手で政策的な課題になっているといった問題、水素よりも環境負荷が低い代替候補はないのかといった問題などが取り上げられた。