2023(令和5)年度 過去の研究会詳細

2023年(令和5)年度 第6回研究会

日時 2023(令和5)年12月27日(水)
14:00~16:00
場所 4号館2階総合学術研究所

発表者及びテーマ

井尻 香代子 文化学部 教授
「海外における俳句受容プロセスの深化について(スペイン語圏を中心に)」

俳句は日本の伝統詩歌の中で最も新しいジャンルの一つである。明治開国後、正岡子規と高濱虚子によって確立され、国内では1000 万人の俳句人口を抱えるといわれるが、一方、19 世紀末より海外で受容され、多言語のハイクが実作されてきたことは日本ではあまり知られていない。では、日本の俳句と他言語のハイクは同じジャンルといえるのだろうか。俳句・ハイクの連続性を形式と内容の両面から探ってみたい。

北上 光志 ことばの科学研究センター員・外国語学部 教授
「ロシア語と日本語の文学作品における述語動詞の観点からの発話表現の通時的比較」

世界の歴史が大きく変わる19 世紀後半から20 世紀後半にかけて、ロシアと日本の小説おける表現にどのような変化が見られたかを、今回は会話表現にスポットを当て、計量言語学の観点から明らかにする。文学作品において会話は直接話法構文によって表される。本稿は直接話法構文の会話形式と述語動詞の関係を分析しながら、従来の研究では不十分であったロシア語と日本語の小説における会話表現の特徴を考察する。

2023年(令和5)年度 第5回研究会

日時 2023(令和5)年11月22日(水)
14:00~16:00
場所 4号館2階総合学術研究所

発表者及びテーマ

山取 圭澄 外国語学部 助教
「18世紀ドイツにおける文芸批評の広がり—レッシング『ラオコオン』をめぐって」

18世紀ドイツの作家レッシングの『ラオコオン』は、「詩と絵の境界」という副題が示す通り、古代ギリシャの大理石の彫像ラオコオン群像を手掛かりに、詩と絵画という二大芸術の表現上の特徴をテーマにした著作である。したがって、『ラオコオン』は、主として芸術論や記号論の方面の題材として取り扱われることが多かった。しかし、出版当時の書評や評論からは、この著作の独特の構成が注目されていたことがわかる。思想家ヘルダーなどは、レッシングに匹敵する著述家はいないと述べ、新たな文芸批評のあり方を見出している。本発表では、こうした同時代の評価を参照しながら、批評文学としての『ラオコオン』の形式的な特徴を論じていく。

島 憲男 ことばの科学研究センター員・外国語学部 教授
「ドイツ語訳テキストの中の「オノマトペ」表現:宮沢賢治『銀河鉄道の夜』のドイツ語訳を中心に」

本発表は2021 年に出版された、宮沢賢治による『銀河鉄道の夜』のドイツ語訳作品EineNacht in der Milchstrßenbahn を取り上げ、原典に生起する擬音語・擬態語表現がどのようにドイツ語に翻訳されているかを調査した結果を報告する。合わせて、ドイツ語のオノマトペ表現についての発表者によるこれまでの研究成果を検証していきたい。

2023年(令和5)年度 講演会

日時 2023(令和5)年12月2日(土)
14:00~16:00
場所 京都産業大学 図書館ナレッジコモンズ

講師

横山 恒子 オルガ博士(元ハーバード大学教授、UCLA卓越名誉研究教授)

講演者紹介

1979年にハーバード大学でスラブ言語学の博士号を取得。ハーバード大学教授を務めた後、1995年からカルフォルニア大学ロサンゼルス校で教授としてスラブ語と文学、応用言語学を担当。2013年にロシア連邦教育科学省より名誉博士号を授与。アメリカ合衆国、ロシア連邦、韓国、日本の主要な大学の客員研究員を歴任。専門は言語学・応用言語学、スラブ語学。研究領域は、談話文法・機能文法、スラブ文献学、ロシア語文法、ロシア文化論、翻訳論などの広い範囲におよび、これらの領域で100を超える論文、著作。

2023年(令和5)年度 シンポジウム

日時 2023(令和5)年10月7日(土)
13:30~17:00
場所 京都大学文学部第3講義室(文学部校舎2階)

発表者及びテーマ

総合司会 定延 利之(京都大学大学院文学研究科教授)

第1部

13:30 趣旨説明
西尾哲夫(国立民族学博物館特定教授 名誉教授、グローバル地中海地域研究プロジェクト代表)

13:40 基調講演「印欧語動詞の語幹形成母音の起源ーアナトリア諸語にみられる特徴は古いのか、新しいのか?」
吉田 和彦(京都産業大学外国語学部教授、ことばの科学研究センター長、京都大学名誉教授)

第2部

14:40 講演①「ユダヤ人らしく書き話すとはーユダヤ人における多言語使用のスペクトル」
勝又直也(京都大学大学院人間 ・ 環境学研究科教授)

15:10 講演②「コプト語から古代エジプト語の姿を考えるーエジプト語歴史音韻論による母音の内的再建」
宮川 創(国立国語研究所助教)

15:40 講演③「地中海島嶼ロマンス語の分布と系統ー名詞の有生性にまつわる諸問題から考える」
金澤 雄介(近畿大学国際学部准教授)

16:20 質疑応答を含むディスカッション
ファシリテーター アダム・キャット(京都大学大学院文学研究科 准教授)

2023年(令和5)年度 第4回研究会

日時 2023(令和5)年9月27日(水)
14:00~16:00
場所 4号館2階総合学術研究所

発表者及びテーマ

池田 昌広 外国語学部 教授
「中大兄と周公——漏刻造作の意味」

『日本書紀』斉明 6 年(660)5 月是月条に、中大兄皇子が漏刻(水時計)を造作したという記事がある。本報告はその用途を問う。私見によれば、漏刻は飛鳥地中説の実証のため造られた。周公の故事を援用し、斉明朝を周初になぞらえ、太平の世の到来を演出する一環であった考えられる。

杉山 豐 ことばの科学研究センター員・外国語学部 准教授
「歌曲旋律の傳へる朝鮮語アクセントの一斷面——‘例外’を通した究明への試み——」

朝鮮の傳統聲樂、‘歌曲’の旋律は、歌詞(‘辭説’)のアクセントを反映してをり、その實態は、15~16 世紀の朝鮮語文獻に記された——すなはち、現在傳へられる‘歌曲’の出現以前の——ソウル方言のそれとよく一致する。その一方、無視できない數の‘例外’を存することも、事實である。本發表では、これら例外への檢討を通して、朝鮮語音韻史資料としての‘歌曲’の位置づけを論ずる上での、手がかりのいくつかを紹介する。

2023年(令和5)年度 第3回研究会

日時 2023(令和5)年7月26日(水)
14:00~16:00
場所 4号館2階 総合学術研究所

発表者及びテーマ

盛田 帝子 教授「18世紀後半における古典知の集積と再創造—『十番虫合絵巻』をめぐって」

天明2年(1782)に、隅田川のほとりの木母寺で、経済的に豊かな武家歌人や古典学に精通した国学者・歌人、高い技能を持った江戸職人らが集合して、豪華絢爛な王朝復古的物合 ものあわせが行われた。18世紀後半の江戸の人々が、どのように古典知を抽出し、何を再創造しようとしたのか。古典知を「いま」に応用して活かす才知や機転を、ホノルル美術館所蔵『十番虫合絵巻』のことばと絵から探ってみたい。

吉田 和彦 客員教「歴史言語学研究の礎にある同源形式の比較」

比較方法や内的再建法といった厳密な科学的方法によって、めざましい発展を遂げてきた歴史言語学。しかし、音法則をひとつ提案する場合でも、その背後には綿密な形態論的配慮が要請される。

2023年(令和5)年度 第2回研究会

日時 2023(令和5)年6月28日(水)
14:00~16:00
場所 4号館2階 総合学術研究所

発表者及びテーマ

鈴木 孝明 教授「人の心を読む能力と言語の発達」

言語は思考にどのような影響を及ぼすのだろうか。この問題を個体発生的な観点から捉え、子どもの認知能力の発達における言語の影響を探る。具体的には, 日本語における定形補文の獲得が心の理論 (ToM) の発達にどのように寄与しうるのか行動実験の結果をもとに議論を行う。

中西 佳世子 教授「黒船のミンストレル・ショー」

日本開国が決まるとペリーは艦上晩餐会に日本人を招き、南北戦争前のアメリカで大流行していたミンストレル・ショーを披露しました。黒塗りした白人が面白可笑しく演じる人種差別的なショーを通して構築された「友好」とはどのようなものだったのでしょう。1854年、ペリーは日本遠征の帰路に、作家ナサニエル・ホーソーンを訪ねて遠征記録の編纂を打診しました。これは実現しませんでしたが、ホーソーンは 10 年前のペリーのアフリカ艦隊記録の編纂を行っています。このふたつのペリーの遠征記録にはいずれも海軍のミンストレル・ショーが描かれていますが、今回は、これらのテキストを中心に 19 世紀アメリカ文学と日本人が初めて見たアメリカン・エンターテインメントに共通する「笑い」の質と、それがその後の日米文化交流に及ぼした影響について考えてみたいと思います。

2023年(令和5)年度 第1回研究会

日時 2023(令和5)年5月24日(水)
14:00~16:00
場所 第2研究室棟会議室

発表者及びテーマ

梶 茂樹 客員教授「無⽂字社会のテキスト」

世界にもし7000の⾔語があるとしたら、恐らくその9割は無⽂字⾔語であろうと思われる。無⽂字社会にも⽂学はあり、テキストはある。書かれないだけである。発表者はアフリカで⾔語調査をしながら、たんに語彙や⽂法だけでなくテキストにも興味を寄せ、様々な⼝承⽂学を⽂字化してきた。⺠話、伝承、歌、諺、謎々、⼈名、地名、太⿎メッセージ、タブー表現などである。⾔語学者は、テキストの⾔語表現にまず注⽬するが、それが表す内容も興味深いものである。
本発表では無⽂字社会のテキストの特徴を取り上げ、ウガンダ⻄部のニョロ語社会のタブー表現を中⼼に、その論理とそれが果たす社会的役割について考察する。

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