高谷 康太郎

TAKAYA KOTARO
理学部 宇宙物理・気象学科 教授
学位
博士(理学)
専門分野
地球流体力学

研究テーマ

気象力学

高校生に向けた研究内容の紹介

昨今、世界中で異常気象が多発し、しかも激烈化していることが報じられています。異常気象は我々の社会生活にも重大な影響を及ぼします。その異常気象はどのように発生するのでしょうか?私は、その発生メカニズムについての研究を行っています。日本のような中緯度の上層には、1年を通じて偏西風と呼ばれる西風が吹いています。異常気象の発生には、その偏西風の南北蛇行が極めて重要であることがわかってきました。現在は、その南北蛇行のメカニズムについて詳細に調査しているところです。

「冬の研究」をしています。

私が研究しているのは、“日本の冬”です。よく「今年の冬は暖かい(あるいは寒い)」という話がありますが、そのメカニズムを解明したいと考えたのです。
解明の手掛かりとなるのが「テレコネクション」。遠い(=テレ) ところが、つながって(=コネクション)いる。「エルニーニョ現象が起こると日本は暖冬になる」「ヨーロッパや北米で大雪になると数日後には日本にも寒波が来る」。
こんな現象もテレコネクションの一種です。ではなぜ遠いところの天気が影響し合うのでしょう?それには「偏西風」が大きく関わっています。世界のどこを探しても、日本の上空ほど強い偏西風はありません。真冬は特に強くて秒速70~80mにもなる。面白いのは、この偏西風が気温の境目になることです。大まかにいえば、偏西風の南側は暖かく北側は寒くなる。

偏西風の吹き方の図。
地球規模で日本の冬を考える。

そして、この偏西風がテレコネクションによって流れを大きく変えるのです。例えば、エルニーニョ現象が発生することで日本の南にある赤道付近の海面温度が上がると、偏西風が北側に押し上げられます。すると偏西風の南側にある暖かい気温に浴する地域が増える。これが「エルニーニョ現象が起こると日本は暖冬になる」仕組みです。
このように気象の研究を行うことは、地球規模のつながりを考えることでもあります。それだけに何に注目して研究に取り組むかの発想も重要です。学生が卒業研究で扱うテーマはそれこそエルニーニョ現象や、台風の発生件数の違いと理由、京都盆地の空気の流れなど。時々、固くなった頭ではとても思いつかないようなテーマを持ってくる学生がいて、すごく面白いですね。

ゼミナール/研究室のテーマ

気象力学

私たちの生活に大きな影響を及ぼしうる異常気象や気候変動のメカニズムは、いまだ解明されていません。研究室では、それらの力学的なメカニズムを解明するための研究を行っています。


※特別研究とは、4年間の学びをもとに各自が研究テーマを設定し、教員の指導を受けて研究を深め、卒業研究としてまとめるもので、理学部での4年間の集大成となる重要な授業です。

ゼミ/卒業研究の紹介

特別研究では、気象学の基礎をまず学びます。気象現象も物理現象の1つですから、物理学、そして数学の知識が重要となります。教科書や論文を読み込み、気象学の考え方を学びます。必要があれば、英語文献を読むこともあります。その後、実際の気象観測データなどを用いて、それぞれ興味ある気象現象の本質を明らかにするための解析を行います。テーマと努力によっては、そのまま、学会で発表できるかもしれないような結果を得ることもできます。

プロフィール

異常気象とまで行かなくても、天気・天候は常に変化しているものです。その変化の幅が極端になった現象が「異常気象」である、とも言えるでしょう。私は幼少の頃から、自然現象一般が好きだったのですが、そのような天気・天候の変化が特に好きでした。今でも、雲を眺めるのが好きです。

高校生へのメッセージ

よく「常識を疑え」みたいな言葉を耳にします。これは自然相手の研究者でも同様です。ただ、実際の研究を行なってみると、その「常識」はやはり良く出来ていて、本当に「常識」が間違っているような事例は100に1つもないかもしれません。それでも、その1つの事例を発見し、新しい説を提示して研究を発展させることが、研究者の醍醐味です。特に気象学に関しては、天気があまりに身近なせいか、研究者ですら思い込みで気象現象をあまり正しく理解していない事例が多いような気もします。常識にとらわれない目で見れば、気象学は新しい発見の宝の山かもしれませんよ。