佐川 英夫

SAGAWA HIDEO
理学部 宇宙物理・気象学科 教授
学位
博士(理学)
専門分野
惑星科学、惑星気象学

研究テーマ

惑星大気・表層環境の観測的研究

高校生に向けた研究内容の紹介

太陽系の惑星や衛星には、量の多い少ないに差こそあれ、大気を持つ天体が多く存在しています。ですが、それらの惑星大気のすがたは、私たちがよく知る地球の大気とは大きく異なります。一体何が惑星ごとの大気の違いを産むのでしょうか? この問いに答えるために、私は、惑星大気がどういった組成で構成されているのか、どういった運動をしているのか、どういった大気化学が生じているのか等々、惑星大気の力学・放射・化学に関する情報を、大型望遠鏡や探査機を利用して観測しています。

詳細観測を通して、惑星大気を解き明かす

地球の大気は1気圧、その成分は窒素78%、酸素21%、アルゴン0.9%で占められています。では、地球の隣にある金星と火星はどうでしょうか。惑星本体が岩石でできていることから「地球型惑星」に分類にされるこれらの惑星は、ほぼ二酸化炭素から構成される、地球大気とは成分の大きく異なる大気を持ちます。そして気圧も金星は地球の約90倍、火星は約1/150となっています。特に金星と地球を比べると、惑星の大きさもほぼ同じであるのになぜここまで大気の環境が異なるのでしょうか。そして、これらの惑星大気に普遍的に共通することは何なのでしょうか。地上望遠鏡や探査機から送られるデータの解析をもとにひもとくのが、この研究室の目標です。
私が研究で大事にしているのは「わからなさ」と徹底的に向き合う姿勢です。例えば、惑星大気が発する赤外線や電波のスペクトルを観測し、大気の微量成分を推定する研究手法があります。ノイズ成分しか見えていないようなデータだったとしても、決して無視できません。なぜなら、大事な情報が紛れているかもしれないからです。隅々まで解析しつくすのが、この研究分野の重要なポイント。モニターに映る観測スペクトルとひたすらにらめっこする、一見すると地味な研究です。しかし、データを丁寧に解析した向こう側には、まだ誰も知らない真実があるかもしれません。
そのロマンを、自然をどこまでも突き詰めて探求する面白さを、学生の皆さんにもぜひ感じてほしいと思います。そして、「わからなさ」と向き合えば、情報を論理的に整理する力も身に付くと考えています。物事をあえて抽象化して考えたり、掘り下げて情報収集を行ったり、あらゆる角度から考察する力を養えば、社会に出てもきっと役立つはずです。

ゼミナール/研究室のテーマ

惑星大気および惑星表層環境の観測的研究

太陽系で大気を持つ惑星は、地球だけではありません。量の多い少ないに差こそあれ、どの惑星も何らかの「大気」を保持しています。研究室では、そうした地球や他の惑星の大気を観測することで新たな知見を獲得することを目的としています。


※特別研究とは、4年間の学びをもとに各自が研究テーマを設定し、教員の指導を受けて研究を深め、卒業研究としてまとめるもので、理学部での4年間の集大成となる重要な授業です。

ゼミ/卒業研究の紹介

4年次の特別研究では、地球や惑星に関する惑星科学的な知見を何かしらの観測データから読み取ることを主眼として、学生自らが研究テーマを設定します。海外の大型望遠鏡や探査機で取得された既存のデータを解析する学生や、神山天文台を利用して自ら新規データを取得する学生、小型の観測装置を自作しようとする学生など、様々です。研究テーマを自ら設定する部分が実はかなり難しく、過去の研究で何が分かっていて、何が分かっていないのか、そして、この先何を分かることが学術的に重要なのかといった、研究活動の本質的な部分と向き合う必要が有ります。

プロフィール

岡山県で生まれ、大学時代は東京で生活し、その後、海外でのポスドク研究員生活などを経て、京都にやってきました。子どもの頃に父親の仕事の関係で南米アルゼンチンで生活をしていました。その時の楽しかった思い出が今も強く残っており、国際学会や共同研究などで海外との接点が多い現在の職業に就けて良かったと思っています。

高校生へのメッセージ

勉強でもスポーツでも趣味でも何でも良いので、何かに没頭すると良いと思います。没頭するということは、そのことを粘り強く続けるということでも有り、その経験や達成感はその後の人生の様々な場面で意味を為すはずです。