岸本 真

KISHIMOTO MAKOTO
理学部 宇宙物理・気象学科 教授
学位
博士(理学)京都大学
専門分野
観測宇宙物理学

研究テーマ

超高空間分解能観測による巨大ブラックホール系の構造探査

高校生に向けた研究内容の紹介

宇宙はとてつもなく多くの銀河で構成されています。そのそれぞれの銀河の中心に、どうやら巨大なブラックホールがあるらしい。それだけでなく、その巨大ブラックホールの形成・進化は、その母銀河の形成・進化と密接に関わっているらしい...この関係の解明は現代宇宙物理学の大きなテーマ。これを、超高空間分解能観測で巨大ブラックホール系の様子を直接探ることにより、行おうとしています。現在思い描いている様子は、図のような爆発的な系なのですが、果たして...?

観測装置の限界を超え、謎多きブラックホールに迫る

さまざまな銀河の中心に、明るく光る巨大ブラックホール系があると言われ始めたのが今から50年ほど前。そして、ここ10-20年の研究で、ほぼすべての銀河の中心に巨大ブラックホールがあることもわかってきました。しかし、ブラックホールの研究はまだまだ発展途上。こうした系は中心部に円盤構造を持つと言われ、可視光や赤外線で明るく光っていますが、やはり遠いので、地上最大の光赤外望遠鏡をもってしても、その構造を直接捉えることができません。

つまり、「空間分解能」が絶対的に足りない。空間分解能とは接近した2つの点をそれぞれ独立し た点として見分ける能力です。ブラックホールの観測においては、地球から月面にいる2人の人間を見分けるほどの緻密な精度が必要になります。

そこで、私の研究室ではこの空間分解能を飛躍的に高める観測を目指しています。その1つが、複数の望遠鏡を組み合わせて、より遠くの天体の大きさや構造を測定できる干渉計として使用すること。観測された干渉縞から、天体の画像を逆算する方法です。こうした赤外線干渉計での観測が、遠くて暗い巨大ブラックホール系でも十分可能であることを、2009年あたりから積極的に示してきました。また、最近では2021年に、カリフォルニアにある干渉計を用いて、巨大ブラックホール系の赤外線観測で世界最高の空間分解能を達成しました。

今ある観測装置の限界を超えるためには観測の本質を理解し、さまざまなアイデアを常に巡らせておくことが大切。観測技術が向上すれば、宇宙物理学が前進する大きな一歩になります。

ゼミナール/研究室のテーマ

さまざまな銀河の中心に潜む巨大なブラックホールの観測

私たちの住む天の川銀河をはじめ、ほとんどすべての銀河の中心に、巨大なブラックホールが潜んでいるらしい…、 一体そこで何が起きているのか。干渉計によるこうしたブラックホール周辺の直接探査を中心として、超高空間分解能観測による宇宙物理学の新展開を、学部生・大学院生とともに目指しています。


※特別研究とは、4年間の学びをもとに各自が研究テーマを設定し、教員の指導を受けて研究を深め、卒業研究としてまとめるもので、理学部での4年間の集大成となる重要な授業です。

ゼミ/卒業研究の紹介

こうした様子をとらえるには、可視光や赤外線による観測が必要なのですが、近傍の銀河であっても、一つの望遠鏡による観測では空間分解能が足りず、複数の望遠鏡を用いる、図のような「干渉計」と呼ばれる装置を用います。こうした赤外干渉計による観測データの解析が、特別研究のテーマの一つです。さらには、ハッブル / ジェームスウェブ宇宙望遠鏡による高空間分解能観測データの解析も行います。こうした解析の中で、コンピュータを扱う力、プログラミングの能力も自然に身につけていきます。

プロフィール

中学1年生のときにポケットコンピュータに出会い、それ以来なんだかずっとプログラミングをやってきた気がします。でも、これを宇宙の天体に使って、観測データから宇宙の姿が見えてくるのが、何といっても面白いです。こうしたことを、アメリカ、イギリス、ドイツにこれもなんだか随分長いこと住んで、続けてきました。振り返って思うのは、日本を含めて、それぞれの国にいいところと悪いところがあり、行ってみて初めてよくわかります。海外に興味がある人、ぜひ行ってみて、できれば住んでみてください。

高校生へのメッセージ

京産大理学部の宇宙物理・気象学科では、地球スケールから惑星、恒星、銀河、宇宙全体に渡る多様なスケールの物理を系統的に学び、かつ計算機を扱う力を身につけることができます。こうした学び・スキルを土台に、卒業生たちは、科学館、IT企業、気象庁などに飛び出して行っています。宇宙・地球に興味のある皆さん、ぜひ、こんな学びを追求しながら、自分の本当に好きなこと・やりたいことを見つけてみませんか。宇宙物理学を通して、一緒に将来を考えていきましょう。